農場と森林のプロイセン史
一六〜一九世紀の御領地・御領林経営
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▼近世ドイツ・プロイセンの農場領主制(グーツヘルシャフト)の歴史を、森林の役割にも注目しながら、数多くの原史料により濃密に描き出す。 ▼ヨーロッパ経済史の伝統あるテーマに新たな光を当てる国際水準の研究。
近世ドイツ・プロイセンでは、領主の直営農場を農民の賦役労働を用いて経営する農場領主制(グーツヘルシャフト)が普及していたことが知られている。一方で、賦役に従事する農民は御領林の木材を安価(または無料)で得る権利をもっていた。 グーツヘルシャフトの経営はこの義務と権利のあり方と密接に関わっており、19世紀の農民解放への道もその中にあったことを、16〜19世紀にかけての御領林経営に関する緻密な史料分析によって明らかにする。
『日本史研究』 738号(2024年2月)に「顔の見える安心感のある比較史へ―飯田 恭著『農場と森林のプロイセン史』の書評を通して―」という書評を通した「研究展望」論文(p.31-40)が掲載されました。評者は木下光生氏(奈良大学教授)です。
『歴史と経済』 260号(2023年7月)に書評が掲載されました。評者は山崎彰氏(山形大学教授)です。
『林業経済』 vol.75 no.8(No.889 2022年11月)に書評(p.17-23)が掲載されました。評者は堀靖人氏(森林総合研究所)です。 本文はこちら
序章 農場と森林の支配としてのグーツヘルシャフト 1 「普魯士(プロイス)国」の森――明治の留学生たちの眼差し 2 「調整令」に見るグーツヘルシャフトの構造――農場と森林の支配 3 研究史と本書の課題――グーツヘルシャフト研究の弁証法的発展の中で 4 対象地域の概要と史料
第1章 農場領主制の成立と森林条令(一六世紀) はじめに 1 東方植民による農地開発と中世後期の農地荒廃 2 農場領主制の成立と人口増加 3 森林資源の逼迫と森林条令の制定 小 括 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
飯田 恭(いいだ たかし) 現職は、慶應義塾大学経済学部教授。 専門は、ヨーロッパ社会経済史(近世・近代ドイツ農村・林野史)。 1990年東京大学経済学部卒、1993〜95年ベルリン・フンボルト大学第T哲学部歴史学科留学(DAAD奨学生)、1999年東京大学より博士(経済学)の学位取得。1996〜98年東京大学経済学研究科助手、1998〜2001年成城大学経済学部専任講師、2001〜2008年慶應義塾大学経済学部助(准)教授、2008年より現職。 主要業績に、単著として、Ruppiner Bauernleben 1648-1806 (Berlin: Lukas Verlag, 2010)、‘The practice of timber granting from lords to peasants’ Agricultural History 87(2013)、‘Peasants’ labour obligations for the lords’ forests’, Agricultural History Review 67(2019)などがある。共著としては、C. Duhamelle & J. Schlumbohm (eds.), Eheschließungen im Europa des 18. und 19. Jahrhunderts (Göttingen: Vandenhoeck & Ruprecht, 2003)、M. Tanimoto & R. Bin Wong (eds.), Public Goods Provision in the Early Modern Economy (California: University of California Press, 2019)、大島真理夫編著『土地希少化と勤勉革命の比較史』(ミネルヴァ書房、2009年)、松沢裕作編『森林と権力の比較史』(勉誠出版、2019年)などがある。
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