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 ▼基本法の基本法たる所以は何か? ▼隆盛期を迎えたドイツ憲法学の重要基本問題を読み解く研究書。
 ▼その発展の変遷と根本原理・原則を解明する。
 
 前書『憲法の優位』では収録できなかったヴァール教授の基本権解釈論を含めて,前書とは別の観点から,教授の著作を精選して収集。
 本書の縦軸となるのは,ドイツ基本法(Grundgesetz)という憲法がたどった「発展の道(Entwicklungspfad)」である。
 
 憲法典は制定当初は様々な発展の可能性に開かれているが,憲法を実現する制度の充実度やそれを担保する機関の力の強さ,ひいては国民意識といった法外的要因により,徐々にその可能性が縮減され,現在の憲法の姿へと形づくられる。
 
 基本法は,規範性と実効性の高い憲法として知られるが,それがどのようにしてその地位を獲得したのかについては,ドイツ憲法研究が盛んな日本においても意外と知られていない。
 
 現在の基本法は一日にして成るものではなかった。その過程にはさまざまな困難があり,広く妥当する強い基本法のための判例法の展開があった。本書を読むと,「強い」憲法を育てるための特効薬はなく,法制度はもちろん,各アクターの憲法への意思と取り組みが重要であることが分かるだろう。
 
 その道のりには,日本で憲法裁判権を有する裁判所やその裁判官,政治を担う政治家,主権を持つ市民,憲法政治を監視するメディア,憲法解釈を論じる研究者に是非知っていてほしい出来事や理論が詰め込まれている。
 
序 言凡 例
 
 T 序 論
 第1章 立憲国家の諸要素
 第2章 公法の二つの段階
 
 U ドイツにおける憲法裁判権の発展
 第1章 偉大な判決
 ――マーベリー対マディソン事件,リュート事件,コスタ対エネル事件
 第2章 創設期の連邦憲法裁判所
 ――制度と判例の発展史
 
 V ドイツにおける基本権解釈の発展
 第1章 国際比較の中の基本権の客観法的次元
 A. ドイツ公法の土台としての客観法的次元
 B. 比較法――他国の法秩序 ……
  著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
【著者】ライナー・ヴァール(Rainer Wahl)
 1941年生まれ。1969年にハイデルベルク大学より法学博士号を、1976年にビーレフェルト大学より教授資格を授与される。ボン大学教授を経て、1978年より2006年までフライブルク大学公法学講座教授。1998年より99年までベルリン高等研究所(Wissenschaftskolleg zu Berlin)研究員を兼務。1998年以降、日独憲法学シンポジウムをドイツ側代表者として定期的に主催。
 
 ※[ ]内は担当箇所。
 【監訳者】
 小山 剛(こやま ごう) [序言・V第1章A]
 1960年生まれ。慶應義塾大学法学部教授。法学博士。
 著書に『基本権保護の法理』(成文堂、1998年)、『基本権の内容形成―立法による憲法価値の実現』(尚学社、2004年)、『「憲法上の権利」の作法(第3版)』(尚学社、2016年)、『憲法学説に聞く』(共編著、日本評論社、2004年)、『プロセス演習 憲法(第4版)』(共編著、信山社、2011年)、『論点探究 憲法(第2版)』(共編著、弘文堂、2013年)、『市民生活の自由と安全』(共編著、成文堂、2006年)、『論点 日本国憲法(第2版)』(共編著、東京法令出版、2014年)他。
 
 石塚 壮太郎(いしづか そうたろう) [W第1章・X第2章]
 日本大学法学部准教授。博士(法学)。
 1987年生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業、同大学院法学研究科公法学専攻博士後期単位取得退学。フライブルク大学法学部、ザールラント大学法経学部留学。北九州市立大学専任講師、同准教授を経て、2021年より現職。
 著書に、鈴木秀美・三宅雄彦編『〈ガイドブック〉ドイツの憲法判例』(共著、信山社、2021)、斎藤 一久・堀口 悟郎編『図録 日本国憲法(第2版)』(共著、弘文堂、2021年)他。
 
 【訳者】(掲載順)
 上村 都(新潟大学法学部教授) [T第1章]
 玉蟲由樹(日本大学法学部教授) [T第2章]
 鈴木秀美(慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授) [U第1章]
 武市周作(東洋大学法学部教授) [U第2章]
 新井貴大 (新潟県立大学国際地域学部助教) [V第1章B・C]
 栗島智明(埼玉大学大学院人文社会科学研究科准教授) [V第2章]
 上代庸平(武蔵野大学法学部教授) [W第2章]
 畑尻 剛(日本比較法研究所客員研究所員) [W第3章]
 宮地 基(明治学院大学法学部教授) [X第1章]
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