小津映画の起源とは何か?
本書は小津安二郎のサイレント作品を、ハリウッド映画の影響およびサイレント映画美学という観点から検証する。小津は、『晩春』や『東京物語』に代表される戦後作品を中心に、家族の悲哀を繰り返し描いた日本映画の巨匠として名高い。しかし、戦間期にはハリウッド映画の強い影響のもと、『東京の合唱』、『生れてはみたけれど』、『東京の女』、『非常線の女』、『出来ごころ』など、サイレント映画の傑作を多数生みだしている。これらの初期作品における小津の実践とはいかなるものだったのか。
小津はエルンスト・ルビッチやジョセフ・フォン・スタンバーグといった映画監督の作品を編集や演出の水準で模倣しながら、〈明るさ〉を表現するハリウッド映画の〈動き〉を再現しようとした。ハリウッド映画の美学に忠実であることで、自身の映画スタイルを練り上げたのである。 本書では、小津が模倣したハリウッド映画作品との比較、さらには同時代のヨーロッパ前衛映画論(ジャン・エプスタイン、ジークフリート・クラカウアー、ジガ・ヴェルトフなど)への参照をとおして、初期小津の映画的達成を明らかにする。
『キネマ旬報』 2019年12月上旬号に書評が掲載されました。評者は佐藤忠男氏(映画評論家)です。
図書新聞 第3425号(2019年11月30日号)5面に書評が掲載されました。評者は仁井田千絵氏(立教大学現代心理学部助教)です。
序論 小津とサイレント映画の地平 1 小津のサイレント作品を辿ること 2 グローバルな規模で共有されたサイレント映画の地平 3 本書の構成
第一部 ローカルな文脈
第一章 小津映画の起源―― 一九二〇年代後半日本のハリウッド映画受容 1 「ソフィスティケーション」の意味 2 小津によるハリウッド映画の模倣 3 ノエル・バーチとデヴィッド・ボードウェルによる小津論
第二章 近代による征服――松竹蒲田撮影所と監督たち 1 「蒲田調」の発生 ……
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滝浪 佑紀(たきなみ ゆうき) 1977年生まれ。城西国際大学メディア学部准教授。 東京大学教養学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了、シカゴ大学大学院映画メディア研究科博士課程修了。専門はサイレント映画研究、メディア論。 主な論文に、「TWICEの身振り――デジタルメディア時代におけるミュージックヴィデオ」(『城西国際大学紀要』第27巻5号、2019年)、翻訳に、ミリアム・ブラトゥ・ハンセン『映画と経験――クラカウアー、ベンヤミン、アドルノ』(共訳、法政大学出版局、2017年)などがある。
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