第二次世界大戦が終わり、焼け跡となった神戸の駅前には、民族や年齢、性別の異なる多様な民衆が生きる手段を求めて集まり、やがて「大闇市」を形成していった。 本書は、戦災復興の原点となった闇市の発生から衰退までの軌跡を辿り、そこから新たな商業空間が根付き、また展開していく過程を描き出す。 戦災復興期はGHQ占領期(1945‐1952年)と重なる。瀬戸内海に面した陸海交通の要衝として栄えた神戸には、戦後も変わらず人・物の流れが集中した。 「何でも揃う」神戸の闇市を舞台に、民衆はGHQや地方自治体の政策と激しく衝突し、折衝を繰り返しながら、新たな組織を結成し、新興市場を築き、商店街を復興させていった。さらに、目を見張る速度で国際港都として復興に向かう姿と神戸で売られる物資の魅力は、戦後の観光復興の資源としても大いに注目を集めていく。 新聞の悉皆調査をはじめ、日米の公文書、豊富で多彩な図像資料、インタビュー調査といった多角的な資料分析にもとづき、これまで忘却されていた占領下神戸のせめぎあいを民衆の視点から生き生きと再現する!
『週刊現代』(2022年10月3日発売) 著者が取材協力された記事が掲載されました。
『建築史学』 第74号(2020年3月)(p.215〜p.227)に書評が掲載されました。評者は青井哲人氏(明治大学理工学部教授)です。
地域開発 2019年春号vol.629(p.77)に書評が掲載されました。評者は成田イクコ氏です。
序章 海港都市・神戸をめぐるせめぎあい 一 闇市と占領――研究対象の定義 二 占領下神戸の解し方――研究方法 三 本書の構成
第一部 戦災と占領――近代都市の戦後
第一章 海港都市の近代化 一 近代三宮における都市空間形成 二 近代湊川新開地における都市空間形成 三 一九三〇年代日本の観光事業機構 四 観光資源としての娯楽・慰楽機関
第二章 戦災と復興の初動 一 神戸市の空襲被害と都市復興の初動 二 一九四五年秋の食糧難 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
村上 しほり(MURAKAMI Shihori) 都市史・建築史。神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究員。
1987年生まれ、神戸育ち。2014年、神戸大学大学院人間発達環境学研究科人間表現専攻博士後期課程修了。博士(学術)。
2012–2014年、日本学術振興会特別研究員(DC2)、2014年より現職、2014–2016年、阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター 震災資料専門員、2017年より(株)スペースビジョン研究所研究員。
著書に『盛り場はヤミ市から生まれた・増補版』(共著、青弓社、2016年)、『神戸スタディーズ #4 "KOBE" を解す』(デザインクリエイティブセンター神戸、2016年)、『神戸スタディーズ #6 "KOBE" を語る』(同前、2018年)ほか。2012年、本書の元となる修士論文「神戸市の戦災復興過程における都市環境の変容に関する研究」で日本建築学会優秀修士論文賞受賞。
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