アジア都市の成長戦略
――「国の経済発展」の概念を変えるダイナミズム
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第6回 岡倉天心記念賞(国際アジア共同体学会)を受賞
「都市」の競争が「国の発展」を牽引する
いまや世界の大都市圏トップ10のうち8つまでをアジアの大都市が占めるようになった。本書は都市発展の基本である「農村から都市への人口流入」「段階的工業化」「経済特区(SEZ)効果」に加え、後発国の不利を逆に後発者利得に転化するフロッグリープ成長の現実や、ITスタートアップ企業がグローバル企業に飛躍する深圳の都市エコシステムなどを考察する。“都市地経学(ジオ・アーバノミクス)”の視点からアジアを捉え、アジアのこれからを読むユニークな都市経済論。
・ 経済成長・発展は、これまで一国単位の成果として把握・認識されてきたが、本書は 発展のコア(中心)がもはや国ではなく都市レベルとなってきているという事実を踏ま え、それを新しいメルクマール(指標)として提示する、画期的な一冊。アジアをこの 「都市」というアングルから捉え分析することで、アジア論に新しい一石を投じる。
・ 今や世界の大都市圏のトップ10のうち8つまでをアジア地域が占めるようになった。 21世紀は「アジアの世紀」といわれるが、アジアはどれほど強く成長しているの だろうか。 バーナンキ・ショックのあと、しばらく成長が足踏みしていたアジア地域だが、 昨今では成長環境が厳しくなっているヨーロッパ、南米、アフリカと比較して 成長力が回復してきており、日本も再び対アジア・ビジネスに乗り出そうと 動き始めている。 いま、世界の中で最も前途が明るいのは、やはりアジアである。
・ 本書はアジア各国の首都のみならず、主要都市が軒並み拡張を続け、 「国単位」のメルクマールに代わる「都市(地域)単位」の成長・発展モデルが アジアで育成されたことを解説する興味深い一冊。
・ 本書では、都市発展の基本パターンである ◆農村から都市への人口流入、 ◆段階的工業化、 ◆郊外へのスプロール(地域拡張)化――などに加え、 ◆後発国だった不利から逆に「後発者利得」に便乗して発展段階をスキップし、 一気にステージを上げる“フロッグリープ(蛙跳び)”成長の実現、 ◆先進国企業の対アジア投資が「世界の工場」化の促進のみならず 内需型工業とサービス産業の成長を促したメカニズム、 ◆デジタル時代の新しいビジネス拠点として、ITベンチャーが勃興する 「メガシティ型」経済発展モデルを提示する、など、 著者独自の視点をふんだんに踏まえる。
・ 上記のような動きは各都市が類似した行動をとるため、都市間競争が激化し、 新しい成長分野の開拓、都市の再開発やインフラ整備など、 経済にダイナミズムをもたらす効果が生まれる。 これらの状況を掘り下げて解説するとともに、アジアの今後の発展の方向も 示していく。
・ 本書で想定する「アジア」の範囲は、中国、ASEAN、南アジア(インド、 バングラデシュ、パキスタン)であり、それ以西の中近東は含まない。 また、日韓は各都市との比較対象としてのみ扱う。
週刊金融財政事情 2019年3月11日号「一人一冊」に書評が掲載されました。評者は植村信保氏(キャピタスコンサルティングマネージングディレクター)です。
西日本新聞 2018年12月15日読書面(10面)「郷土の本」欄にて紹介されました。
ウェブマガジン『フォーサイト』(新潮社) 紹介されました。 本文はこちら
第1章 アジアの大都市の現況 1 アジアのメガシティの形成 2 アジアの都市力 3 都市と農村――人口移動のモメンタム
第2章 人口移動と大都市圏の形成 1 人口移動と経済発展 2 タイ、ベトナムの人口移動 3 中国の人口移動 4 国境を越えた人口移動
第3章 中国にみるアジア大都市の成長メカニズム 1 アジアの都市の成長モデル分析 2 内需牽引型成長への転換 3 イノベーション型成長の模索 4 都市を支える産業、産業を支える都市
第 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学都市創造学部教授 1958年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、豪ボンド大学経営大学院修了(MBA取得)。1984年、 日本経済新聞社入社。社会部、アラビア語研修(カイロ)を経て国際部、バーレーン支局・欧州総局(ロンドン)駐在、東京本社産業部、中国総局(北京)駐在。その後東京本社で編集委員、論説委員、編集局アジア部長等を歴任。2016年、同社を退社し、現職に就任。
主著 『強い工場』(2003年)『勝つ工場』(2005年)『アジア力』(2010年)『資源・食糧・エネルギーが変える世界』(2011年)『ネクスト・アジア』(2014年)いずれも日本経済新聞出版社刊。
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