国際法における賠償と責任の関係を問う。
国際法においては国際責任論が横断的な分野として成立しているとの見解がある。例えば、海洋法、航空法、宇宙法、戦争法といった国際法の各分野において適用可能な法原則として、国際責任に関する規則が理解される。また、国際法の規定について、権利を付与し、義務を課す規定と、そのような義務に違反した場合に責任を課す規定とを区別する必要性が主張された。他方、国際法における責任論の取扱について、これを独自のものとする考え方に批判的な見解がある。 義務違反から賠償の義務が生ずるとする場合と、義務違反から責任が発生し、それを履行するために賠償を行うとすることの差異はどのような点にあるのだろうか。賠償と呼ばれるものが国際法においていかなる内容と種類とを有しており、その位置付けはいかなるものであるのだろうか。 本書は、第一部でこれまでの国際責任法に関する発展を様々な活動や著作、また、責任について特徴を有すると考えられるいくつかの分野での展開を通じて概観し、第二部においては賠償に関してなされた法典化作業の分析と国際判例、国際的事例を取り上げ、第三部では現在の国際法における賠償の機能について考察をしてゆく。

はしがき
問題の所在
第一部 国際責任法の発展
第一章 国際責任法の法典化作業 第一節 責任法に関する法典化作業の種類 1 国際機構による法典化作業 2 国際責任規則をめぐる学会活動 3 個人の責任規則についての私案 第二節 国際連盟における法典編纂 1 一九二九年の法典化会議 (1) 国際連盟における準備作業 (2) 経済委員会の法典草案 a 条約の目的/b 外国国民と国際貿易/c ……
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大森 正仁(おおもり まさひと) 慶應義塾常任理事、慶應義塾大学法学部教授。博士(法学)。 1955年生まれ。1978年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、1980年大学院法学研究科修士課程修了、1983年同博士課程単位取得退学。1987年慶應義塾大学法学部専任講師、同助教授を経て、1996年同教授。世界法学会理事、国際法学会評議員・理事を歴任。 著書に、国際法事例研究会『日本の国際法事例研究2 国交再開・政府承認』(共著、慶應義塾大学出版会、1988年)、同『日本の国際法事例研究3 領土』(共著、慶應義塾大学出版会、1990年)、同『日本の国際法事例研究4 外交・領事関係』(共著、慶應義塾大学出版会、1996年)、同『日本の国際法事例研究5条約法』(共著、慶應義塾大学出版会、2001年)、中村洸編『前原光雄 国際法論集(慶應義塾大学法学研究会叢書82)』(補訂、慶應義塾大学法学研究会、2011年)、国際法事例研究会『日本の国際法事例研究6 戦後賠償』(共著、ミネルヴァ書房、2016年)ほか。
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