日本の格差拡大現象をダイナミックに分析!
「一億総中流」時代が去り、日本でも所得、資産はもとより就業機会、教育から時間貧困、健康に至るまで、格差が拡がっている。 新たなパネルデータを使ってこの主因を解明し、不平等の拡大と固定化をストップさせるための方策を「雇用モデルの変容」「最低賃金や能力開発支援等の積極的雇用政策」「教育の機会均等」「税や社会保険・社会保障給付」などの労働経済学の視点から分析する本格的研究。
▼所得格差、資産格差のみならず、就業格差、、教育格差、健康(病気になったとき病院へいけるかどうか)に至るまで、持てる者と持たざる者、勝ち組と負け組みの格差はますます大きくなる一方である。このギクシャクした社会になった主因はどこにあるかを、新たなパネルデータを使って解明する。 ▼不平等のさらなる拡大と固定化をストップさせるための方策を考察し、各章末に分析の結果得られた見解を「結論」として示す。
家計の所得の変動、労働市場の変容、就業形態と家族形態との関係、非正規労働者の賃金引き上げ、マクロの景気変動が家計に与えるショック、医療サービスへの接近可能度合い、「時間貧困」が家庭内に与える影響、格差が将来の教育にどう作用するか、格差と健康との関係など、労働経済学からの多面的なアプローチによって今日のわが国の現状をつぶさに解説。
人口学研究 第55号(2019年9月)「書評・新刊短評」(p.82〜p.83)に短評が掲載されました。評者は四方理人氏(関西学院大学)です。 本文はこちら
序
第1章 日本の所得格差は拡大したのか ――固定化が進んでいるのか
第2章 労働市場はどう変わったか ――各国における雇用・就業率・失業率・生産性・賃金格差の変化とわが国の特徴
第3章 非正規労働者の増加は所得格差を拡大させたのか
第4章 非正規労働者の賃金引き上げに何が有効か ――最低賃金、同一労働・同一賃金、無期転換、能力開発支援 第5章 リーマン・ショックは所得格差にどのような影響を与えたか ――景気変動と有配偶世帯の所得格差
第6章 所得格 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
樋口美雄(ひぐち・よしお) 慶應義塾大学商学部教授。1952年生まれ。80年、慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了。博士(商学)。 82年、同大商学部助教授。85−87年、米国コロンビア大学客員研究員。91年、慶應義塾大学商学部教授。 95−96年、 米国スタンフォード大学客員研究員、オハイオ州立大学招聘客員教授。2005−08年、国民生活金融公庫総合政策研究所所長を兼務。09−13年、慶應義塾大学商学部長、09−14年、内閣府統計委員会委員長。12年、日本経済学会会長。16年、紫綬褒章受章。慶応義塾・福澤賞受賞。厚生労働省、内閣府、文部科学省等において多くの公職(労働政策審議会会長、働き方改革実現会議有識者議員、一億総活躍国民会議民間議員など)を歴任。 主著 『日本経済と就業行動』東洋経済新報社、1991年、日経・経済図書文化賞受賞 『雇用と失業の経済学』日本経済新聞社、2001年、エコノミスト賞受賞 『人事経済学』生産性出版、2001年 ほか多数
石井加代子(いしい・かよこ) 慶應義塾大学経済学部特任講師。1978年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、London School of Economics and Political Science修了(MSc 取得)、慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。医療経済研究機構を経て現職。 主な業績 「介護労働者の賃金決定要因と離職意向―他産業・他職種からみた介護労働者の特徴―」 『季刊社会保障研究』2009年(共著)
佐藤一磨(さとう・かずま) 拓殖大学政経学部准教授。1982年生まれ。2010年、 慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。プライス・ウォーターハウス・クーパース株式会社アソシエイト、明海大学経済学部専任講師等を経て現職。 主な業績 『日本における労働移動に関する実証分析』三菱経済研究所、2015年 「危険回避的な人ほど早く結婚するのか、それとも遅く結婚するのか」内閣府経済社会総合 研究所『経済分析』190号、27―44ページ、2016年 など
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