戦前と戦後は連続しているのか、それとも断絶しているのか? 戦後日本史の起点ともなる占領期。この極めて混乱した権力・政治状況下における法制改革の実態と占領管理の構造を解明する。 GHQ側・日本側双方の史料の掘り起こし、在アメリカの貴重史料に基づいた歴史的実証、また理論的論証において他の追随を許さない精緻な議論を展開し、日本近現代法史の新しい局面を開く。 占領期前後の日本の法制度・法文化の跛行した歩みをまさに連続性をもって描く、学界未到の領域への挑戦的著作。
▼戦前と戦後は連続しているのか、それとも断絶しているのか?
本書においては、第二次世界大戦後の占領期(1945〜52年)の日本で行われた法制改革と当該時期の法的構造について、刑事司法をめぐる動向を主な素材として検討が行われる。第一部では「戦後法制改革」が、第二部では「占領管理体制」が取り扱われる。
第一部においては、日本国憲法の規定を踏まえて全面改正されることになった刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)の制定過程について、隣接する法領域における改革の過程との関係を踏まえながら分析が行われ、第二部においては、連合国による軍事占領を法的に担保した、「「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件」(昭和20年勅令第542号)に基づく委任法令群である所謂「ポツダム命令」、及び、その一つとして発出された「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令」(昭和21年勅令第311号)について、新旧の憲法秩序との衝突という観点から分析が行われる。
本書の試みは、戦後法制改革を法の継受の観点から分析することにより、戦前との「断絶」のみならず「連続」の側面についても視野に入れた歴史像を提示しながら、これまであまり分析の俎上に載せられて来なかった占領管理体制の複雑な法的構造についても、重層化された委任法令のあり方を中心として描き出すものである。
『日本歴史』 2018年8月号(第843号)(p.106〜p.108)に書評が掲載されました。評者は小野博司氏(神戸大学大学院法学研究科准教授)です。
『法制史研究』 第68号に書評が掲載されました。評者は伊藤孝夫氏(京都大学法学部・法学研究科教授)です。
『法社会学』 84号,2018年に掲載されました。評者は林真貴子氏(近畿大学教授)です。
序 論――本書の分析視角 一 本書の概要 二 戦後法制改革――戦前・戦後の「断絶」と比較法的自覚 三 占領管理体制――日本占領の軍事的側面と憲法秩序 四 本書の構成
第一部 戦後法制改革の過程――刑事司法を中心に
第一章 戦後法制改革研究の現況 一 序 二 日本占領の法的構造 (一) 「占領管理」の実際 (二) 「管理法令」の性質 三 戦後法制改革研究の現況 (一) 日本国 ……
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出口 雄一(でぐち ゆういち) 桐蔭横浜大学法学部教授。1972年生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法学研究科公法学専攻後期博士課程単位取得退学。 専攻領域:日本近現代法史、法文化論。 著書に、『戦時体制と法学者 1931〜1952』(共編著、国際書院、2016年)、『憲法判例からみる日本――法×政治×歴史×文化』(共編著、日本評論社、2016年)、『戦後システムの転形(年報日本現代史20号)』(共著、現代史料出版、2015年)ほか。
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