欲望と誤解の舞踏
フランスが熱狂した日本のアヴァンギャルド
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戦後日本の前衛芸術「舞踏」はどのように受容され、発展したのか?
1970年代の終わり、フランスの人々は、日本の前衛芸術「舞踏」を大きな衝撃をもって迎え入れた。大野一雄、カルロッタ池田、山海塾、室伏鴻、笠井叡、そして土方巽……多くの日本人ダンサーがフランスで〈発見〉された。本書は、舞踏がその上陸から今日まで、この地の人々を魅了しつづけている歴史を跡付けている。舞踏の伝播は、あらゆる「誤解」とともに、ここではないどこかへ、日本への欲望を引き起こしながら、コンテンポラリーダンスの領域に途方もない影響を与えたのである。 フランスのジャーナリズムと〈身振り〉の分析を駆使して、美学と文化史の観点から舞踏を論じることは、現代の舞踊史を読み直すことを意味する。「ジャポニスム」の歴史、ドイツ表現主義とのつながり、舞踏に関係づけられるヒロシマの記憶……舞踏をめぐるダイナミズムを明らかにし、身振りを介した日欧の歴史を亡霊のごとく浮かび上がらせる、革新的な日本文化受容論。
貴重な写真資料を多数掲載。
舞踊學 40号(2017年)に書評が掲載されました(p.54)。評者は國吉和子氏です。
観客発信メディア WL(ダブル) 2017年11月26日に書評が掲載されました。評者は竹重 伸一氏(舞踊批評家)です。 本文はこちら
artissue 2017年11月23日に書評が掲載されました。評者は原田広美氏(舞踊批評家)です。 本文はこちら
日本語版によせて 序論 身振りのグローバル化のなかに舞踏をよむ 邂逅、そして創造/ねつ造の歴史をひもとく 誤解をめぐる物語/歴史 舞踊史の中心をずらす 「日本ブーム」 舞踊史と文化史の交差 第一部 「新発見」から聖別/公認まで第一章 瞬く間に成功した歴史 一九七八――決定的な年 長く続く熱狂 ダンス分野からの聖別/公認 第二章 啞然とした批評家たち 衝撃が新たな文体をつくりあげた
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
【著者】 シルヴィアーヌ・パジェス(Sylviane Pagès) パリ第8大学舞踊学科准教授。パリ政治学院卒業後、パリ第8大学舞踊学科で博士号を取得。国立舞踊センターのデータベース「Artists and Works」管理担当。舞踊研究者協会(aCD)発行のWeb学術雑誌「Recherches en danse」の編集委員も務める。2009年、慶應義塾大学アート・センター、国際舞踏連絡協議会主催「国際舞踏カンファレンス」にゲストスピーカーとして招聘される。共編著に、Les Carnets Bagouet : La passe d'une œuvre (Les Solitaires Intempestifs, 2007), Mémoires et histoire en danse, Histoires de gestes (Actes Sud Edition, 2012)など。
【監訳者】 パトリック・ドゥヴォス(Patrick De Vos) 1955年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授。 専門は、日本の舞台芸術、フランス演劇。1991年野間文学翻訳賞受賞。
【訳者】 北原 まり子(きたはら まりこ) [日本語版によせて、第1章、第2章、第6章、第7章] 1983年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程(演劇映像コース)修了。現在、同大学院博士後期課程在籍中、パリ第8大学舞踊学科留学中。論文に、「《牧神の午後》(1912)以前のバレエ・リュスにおける絵画的舞台表象」(『舞踊學』2013年)、「戦前日本における『春の祭典』を踊る三つの試み」(『早稲田大学文学研究科紀要』2015年)など。
宮川 麻理子(みやがわ まりこ) [序論、第3章、第4章、第5章、結論] 1985年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修士課程(表象文化論コース)修了。同大学院博士課程単位取得満期退学。開智国際大学非常勤講師。論文に、「お膳の上で――大野一雄における胎児と母の表象に関する一考察」(『表象文化論研究』2013年)、「動き/身体の哲学――大野一雄における技法の革新性」(『舞踊学』2016年)など。
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