アルテ・ポーヴェラ
戦後イタリアにおける芸術・生・政治
|
戦後イタリアの芸術運動「アルテ・ポーヴェラ」とはいったい何だったのか? その政治性、前衛性、今日的意義を問いなおす。
▼「貧しい芸術」を意味する「アルテ・ポーヴェラ(Arte povera)」は、1960年代末イタリアに興った芸術運動であり、一群の芸術家たちのゆるやかな結びつきを指す。 かれらは、新聞紙や布きれ、木材、鉄、石、果物など、日常的で粗末な素材を好んで用い、完成されたオブジェとしての作品以上に、しばしば作品のコンセプトや制作プロセスを重視した。 ▼美術史において、コンセプチュアル・アートやランド・アートと並ぶ、ポスト・ミニマリズムの一潮流として認識されるアルテ・ポーヴェラは、近年、歴史的位置づけがおこなわれるなかで、20世紀の進歩と消費の神話に対抗する、理念的かつ革命的力を持った、清貧主義の運動だと再評価されることも多い。 ▼本書では、ミケランジェロ・ピストレット、ジュリオ・パオリーニ、ヤニス・クネリス、アリギエロ・ボエッティ、ピーノ・パスカーリ、ジュゼッペ・ペネーノなどの作品をとりあげ、アルテ・ポーヴェラの歴史を辿りつつ、この芸術運動の意義を再検討することを試みる。個々の芸術家の作品を、地理的・政治的観点から捉えなおし、ゆるいつながりであった一連の活動の輪郭を浮かび上がらせる力作。
著者 トークセッションのご案内
「アルテ・ポーヴェラ――戦後から現在に至る美術を考える」 池野絢子(『アルテ・ポーヴェラ』著者)×沢山遼(美術批評)
4/30 15時〜NADiff a/p/a/r/t1Fで開催! 詳細はこちら
ディアファネース:芸術と思想 京都大学大学院人間・環境学研究科岡田温司研究室紀要、第4号 に書評が掲載されました。評者は金井直氏(信州大学教授)です。 【本文はこちら】
日伊文化研究 日伊協会、55号に掲載されました。評者は上村清雄氏(千葉大学教授)です。
表象 11号(2017年3月)。テーマは「貧しさについて」。評者は松浦寿夫氏(東京外国語大大学大学院総合国際学研究院教授)です。
序 論 第一章 否定の力 ―― 芸術、テクノロジー、マスメディア 1 アルテ・ポーヴェラの誕生 2 ジェルマーノ・チェラントの批評戦略 3 マスメディアとイメージ 4 「あべこべの反映」 ―― ミケランジェロ・ピストレット「鏡絵画」におけるスペクタクルの両義性 第二章 トリノの地政学 1 ブリコラージュ ―― 素材と行為 2 居住空間と都市空間 3 デポジト・ダルテ・プレゼンテ 4 「同逸名」 ―― アリギエロ・ボエッティによる地図製作の方法 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
池野 絢子(いけの あやこ) 1981年生まれ。京都造形芸術大学アートプロデュース学科専任講師。 京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て現職。分担執筆に岡田温司編『ジョルジョ・モランディの手紙』(みすず書房、2011年)など。
|