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パラフィクションの誕生
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円城塔、伊藤計劃、筒井康隆、辻原登、舞城王太郎、ジョン・バース、コルタサル、ジーン・ウルフ―― メタフィクションの臨界点を突破する、2010年代のための衝撃のフィクション論。
わたしは本書に刺戟を得て創作意欲を触発させられた。今度、雑誌「新潮」に書いた短篇「メタパラの七・五人」はまさにメタフィクションからパラフィクションへの移行を小説仕立てにしたものに他ならない。わたしは作家にこんな示唆をする批評こそが真の批評だと思う。(筒井康隆)――オビ文にいただきました。
「フィクション」の「虚構性」を意識的に描き出そうとする「メタフィクション」は、ゼロ年代に入り、ゲームとアニメ、インターネットの進化と連動しながら、あらゆるジャンルで著しい勃興を遂げた。しかし、世に氾濫する過剰な「メタ」は、或る重大な問題をはらんでいたのである。すなわち、フィクションが複雑化・階層化されるにつれ、物語の外部で操作する「作者」の絶対性は強化される、というパラドックスである。
ところがゼロ年代後半から、「メタ」の限界を乗り越えるべく構想された作品群が登場しはじめる。それらのテクストには、「読者」に「読む」という能動的行為を要求するプログラムが内包されていた。 本書では、そのプログラムを「近傍の/両側の/以外の/準じる/寄生する」という意味をもつ「パラ」を冠するフィクションとして名づけ、提言する。「読者」つまり「あなた」が読むたびに新たに生成されるフィクション、それが「パラフィクション」である。
みすず no.634(2015年1・2月号 )の 「2014年読書アンケート」で郷原佳以(フランス文学)氏にご紹介いただきました。
週刊読書人 第3065号(2014年11月14日)(4面)に書評が掲載されました。評者は池田雄一氏(文芸評論家)です。
SFマガジン 2014年12月号「SFブックスコープ」(121頁)に書評が掲載されました。評者は長山靖生 氏です。
プロローグ パラフィクションとは何か? 「道化師の蝶」の選評をめぐって メタフィクションの「問題」 メタリアル・フィクション再考
第1部 メタフィクションを超えて? 1 「メタフィクション」とは何か? メタフィクションの定義いろいろ 自意識のフィクションと、その外部 メタフィクションの左旋回 由良君美のメタフィクション論 2 『虚人たち』再読 虚構内存在とは誰か? 平岡正明の『虚人たち』論 渡部 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
佐々木 敦(SASAKI Atsushi) 1964年名古屋市生まれ。批評家、早稲田大学文学学術院教授、音楽レーベルHEADZ主宰。20年以上にわたり、音楽、文学、映画、演劇などの批評活動を行なう。著書に『即興の解体/懐胎』(青土社、2011年)、『未知との遭遇』(筑摩書房、2011年)、『批評時空間』(新潮社、2012年)、『シチュエーションズ』(文藝春秋、2013年)、『「4分33秒」論』(Pヴァイン、2014年)、『ex-music〈L〉ポスト・ロックの系譜』、『ex-music〈R〉テクノロジーと音楽』(共にアルテス、2014年)など多数。
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