▼ポスト世阿弥時代に「天下第一の上手」と称えられた能作者、金春禅竹(1405〜70前後)。〈芭蕉・杜若・定家〉など、独特の深みを持つ能作品を生み出した一方、質・量ともに世阿弥に匹敵する、難解な能楽論を残したことで知られる。本書は、禅竹の身体論や世界観を、荒ぶる神と仏が織りなす宗教思想のダイナミズムの中から明らかにし、円や釼のイメージで示される能楽論を精緻に読み解く。能楽研究・思想史研究に新たな地平を切り拓く一書。 ▼禅竹自筆伝書など貴重な資料をカラー口絵16頁にわたり掲載。
能と狂言 13(2015年5月15日発行)に書評が掲載されました。評者は樹下文隆氏です。
凡例
はじめに――金春禅竹研究の現在 1、 禅竹の能 2、 禅竹伝書の発見と紹介 3、 五音系伝書・六輪一露説 4、 『明宿集』、その他 5、 本書の内容
T 猿楽の芸能神としての翁と荒神
第一章 猿楽と翁 / 荒神信仰 1、 翁信仰と摩多羅神 2、 『明宿集』にみえる宿神と荒神 3、 障碍神としての荒神と鬼面 4、 荒神と結界儀礼 5、 おわりに
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著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
高橋 悠介(たかはし ゆうすけ) 神奈川県立金沢文庫学芸員、法政大学能楽研究所兼任所員。博士(学術)。日本中世文学・思想史研究。 1978年生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業、同大学院文学研究科国文学専攻修士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士課程単位取得退学。 主な研究業績に、「比叡山の巡礼記と記家――根本中堂前の竹台をめぐって」(『巡礼記研究』第2集、2005年9月)、「『明宿集』注釈稿(一)」(『 ZEAMI 』 4、2007年6月)、「称名寺聖教中の春日関係資料と『春日権現験記絵』(『説話文学研究』 46、2011年7月)、「荒神の図像について――如来荒神を中心に」(『仏教美術論集第2巻 図像学T―― イメージの成立と伝承』竹林舎、2012年5月)など。担当した特別展図録に、『愛染明王――愛と怒りのほとけ』(神奈川県立金沢文庫、2011年)など。
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