▼フランス革命はジェレミー・ベンサムの社会認識と人間観を大きく揺るがした。ウィリアム・ブラックストンへの批判から始められた思索がたどりついた「立法の科学」と「自由な国家」構想。革命の動乱を契機に、ベンサムは、構想が前提とする合理的な人間――適切に功利計算ができる人間――の存立を阻む様々な外的要因に関心を広げてゆく。人民による世論が決定的な意味を持つ民主政治において、アナーキーに陥ることのない「自由な国家」はいかにして可能なのか。 本書は、ベンサムの思想が、フランス革命の衝撃を経てイングランド国制批判として展開していく過程を同時代の知的文脈と関連づけて考察する。イングランド国教会批判と議会改革論を経て『憲法典』に結実する、ベンサムの「自由な国家」の具体的構想が明らかにされる。 一貫した哲学を持つ功利主義者像を相対化し、ベンサムの生涯にわたる思想的格闘を追究する画期的な研究成果。

ピューリタニズム研究 第9号(2015年3月)に書評が掲載されました。評者は坂井広明氏(東京交通短期大学)です。

はじめに
第一章 ブラックストンのイングランド国制論 第一節 イングランド法の基礎原理 (一) 自然法と神法 (二) 所有権の起源と基礎 第二節 イングランド法の歴史と古来の国制 第三節 イングランド国制の均衡と調和 (一) 主権の基礎と諸形態 (二) 「権力均衡」 の政治学
第二章 ベンサムにおける 「立法の科学」 と 「自由な国家」 第一節 「立法の科学」 の再構築 (一) 神学と法学 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
小畑 俊太郎(おばた しゅんたろう) 1975年生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。 博士(政治学)。現在、首都大学東京都市教養学部法学系助教。
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