「芸術とは、眼にみえるものを再現するのではなく、 眼にみえるようにすることだ」
▼パウル・クレー(1879-1940年)は、抽象的フォルムと現実のイメージにまたがる領域を自由自在に横断し、すべての近代画家の追随を許さない豊かで不可思議な作品群を生みだした。 ▼光と物質、形態と記号、あるいは生命的運動と幾何学的思考など、そもそも矛盾しかねない造形がなぜ可能になったのか。また、繊細かつ魅力あふれる色彩絵画は、いったい造形理論とどのように関連するのか。 ゲーテ、オストヴァルト、アルプ、ヘルツェルを参照し、クレー芸術の核心に迫る。
T 形態 Gestaltung クレーにおける「分節」概念の成立 「自然研究の道」 画家クレーにおけるゲーテ エネルゲイアとしての造形 ゲーテの植物学と二十世紀美術 結晶としての造形 クレーとモデルネ コンステレーションとしての造形 一九三〇年のクレーとアルプ
U 色彩 Farbe クレーにおけるオーバーラップ もうひとつの制作論とガラス絵 クレーと色彩論 クレーとオストヴァルト ……
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前田 富士男(まえだ ふじお) 中部大学人文学部教授。慶應義塾大学名誉教授。 1944年生まれ。66年、慶應義塾大学工学部卒業、68年、同文学部卒業。 71年、同大学院修士課程修了。74年に同博士課程単位取得退学。神奈川県立近代美術館鎌倉館に勤務。ドイツ・ボン大学美術史研究所留学(DAAD)。北里大学教養学部勤務後、慶應義塾大学文学部助教授、教授を経て、現在に至る。 著訳書に、ゲーテ『色彩論・完訳版』(共訳、工作舎、1999年)、『伝統と象徴―美術史のマトリックス』(編著、沖積舎、2003年)、『パウル・クレー―絵画のたくらみ』(共著、新潮社、2007年)、『福澤諭吉と近代美術』(編著、慶應義塾大学アート・センター・ブックレット17号、2009年)など。
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