演劇場裏の詩人 森鴎外
若き日の演劇・劇場論を読む
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美を追究した「文豪」の演劇論を読む――。
1884〜88年のドイツ留学中、若き森鷗外は、ライプツィヒ、ドレースデン、ベルリン、ミュンヒェンといった都市の劇場に足しげく通い、観劇体験を重ねた。「劇場は唯準に高尚なる官能にのみ委ねたる場」とゲーテの言葉を訳出・紹介し、舞台上演を人の感性に働きかける「詩情の発揮の場」と高く評価していたのである。 帰国後発表された演劇をめぐる鷗外の文章は、当時のヨーロッパの新聞・雑誌・著作と対話を交わした結果であり、独自の視座から日本の演劇状況に改良を求める野心的なものであった。
本書は、日独のオリジナル資料を文献学的アプローチのうえ詳細に分析し、日本の演劇の近代化をめざした若き文豪の演劇・劇場論を再構成する画期的な試みである。
文芸評論家・加藤弘一の書評ブログ 2013年11月28日にご紹介いただきました。 本文はこちら
序
第一章 一八八〇年代のドイツと鷗外の観劇体験――劇場と制度 一 『独逸日記』を読む――「営業の自由」と劇場の展開 二 『舞姫』のなかのベルリン・ヴィクトリア劇場 第二章 都市と劇場――安全な劇場をめぐる言説 一 刷新された『歌舞伎新報』 二 鷗外の劇場史―「欧州劇場の事」 三 「劇場の雛形」を読む 四 「劇場の大さ」を読む
第三章 演劇の近代――欧化主義と国粋主義の対立を超えて 一 日本で最初のドイツ語雑誌『東漸新誌 ……
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井戸田 総一郎(いとだ そういちろう) 1950年生まれ。明治大学大学院文学研究科・文学部ドイツ文学専攻教授。元慶應義塾大学経済学部教授。73年、慶應義塾大学経済学部卒業。75年、同大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻修士課程修了。78年、同大学大学院博士課程満期退学。88年、アーヘン工科大学大学院文学研究科においてDr. phil. の学位取得。著書に、Berin & Tokyo – Theater und Hauptstadt (München, iudicium Verlag, 2008)、「劇場と都市―1870・80年代のベルリン劇場事情」(寺尾誠編『都市と文明』 ミネルヴァ書房、1996年)ほか。
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