学識と矜持に溢れた、一行政官僚の実像。
明治期の監獄行政官である小河滋次郎(1864〜1925)の伝記的研究。日欧の文化接触における諸問題や、統治の思想史的系譜にも目を配りつつ、一人の行政官僚の軌跡を、近代国家による統治と社会における自治とのせめぎ合いの中に描き出す。
日本の刑事施設に画期的な改良をもたらした「監獄法」(明治41年)制定への尽力や、救貧・感化・慈善を行う社会事業と行政との共働構想などを論じ、歴史的事実を越えた小河滋次郎の思想・行動の意義を雄弁に物語る好著。

日本歴史 2013年6月号にて姫嶋瑞穂氏(北海道医療大学大学教育開発センター・薬学部人間基礎科学講座(法学)講師)に書評いただきました(120-122頁)。

序
第一章 若き日の小河滋次郎 一、はじめに―慶應義塾医学所、東京専門学校、東京大学 二、出郷まで 三、東京での勉学 四、おわりに―創刊当時の『上田郷友会月報』
第二章 言論の人 小河滋次郎 一、はじめに―新聞熱 二、「富岡製絲場ヲ論ズ」 三、「非外教諭」 四、おわりに―道理ニ拠テ決定スル
第三章 監獄事務官 小河滋次郎 一、はじめに―理論ト実際トノ修養 二、『看守必携獄務提要』(明治二五年) 三、『獄務要書』( ……
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小野 修三(おの しゅうぞう) 慶應義塾大学商学部教授、博士(法学)。 1948年生まれ。1976年、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。 主要業績に、『公私協働の発端―大正期社会行政史研究―』(時潮社、1994年)、「明治・大正期における岡山孤児院と大阪汎愛扶植会」(『慶應義塾大学商学部創立五十周年記念日吉論文集』2007年)、「E・ハワードと西村伊作―田園都市の誕生と日本における受容をめぐって―」(『慶應義塾大学日吉紀要社会科学』第20号、2009年度)などがある。
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