自由な精神による翻訳が創造した、近代日本の民主主義
明治の言論界にあって〈東洋のルソー〉と称された中江兆民。その鋭い筆鋒と衰えぬ批判精神は、ルソーとの時空を越えた対話によって形づくられた。本書は、ルソー『社会契約論』と、兆民によるその翻訳書、特に彼の主著ともいわれる『民約訳解』とを詳細に比較検討した成果である。未知の統治制度=民主主義に向き合った兆民の思想的格闘を活写し、彼が手探りで制度の本質を理解していったことを明らかにする。
本書は、日本図書館協会選定図書です。

出版ニュース 2010年1月下旬号「ブックガイド」欄(35頁)で紹介されました。

序
第一章 『民約訳解』の全体構想 第一節 翻訳の思想──『訳解』の「叙」「民約訳解緒言」「訳者緒言」「著者緒言」 第二節 作品としての『訳解』 第三節 『訳解』を一貫する主題 第四節 『訳解』の原初的着想──巻之一第一章「本巻の旨趣」
第二章 『民約訳解』の基本的視座 ──「力」「自由権」「約」── 第一節 家父長権説批判の論理──巻之一第二章「家族」 第二節 「力」と「義」をめぐって──巻之一第三章「強者の権」 第三節 「力」批判論の構 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
山田博雄(やまだ ひろお) 中央大学法学部兼任講師、博士(政治学)。 新潟県に生まれる。1995年、中央大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得満期退学。 主要業績に、『体制擁護と変革の思想』 (共著、中央大学出版部、2001年)、『兆民をひらく―明治近代の〈夢〉を求めて―』(共著、光芒社、2001年)、『福沢諭吉の思想と近代化構想』(共著、慶應義塾大学出版会、2008年)など。
|