No.1241(2020年2月号)
特集
No.1241(2020年2月号)
特集
三田評論
2020年2月号表紙
雑誌での対談、談話、インタビューという習慣は、おそらく世界でも日本だけの「知の技法」である。情報を親しみやすく伝えられるからだろう。本号はとりわけ座談が多い。塾長の「年頭の挨拶」もその変種であるし、「話題の人」(名執雅子)もそう。「慶應建築の系譜」で建築家の槇文彦氏と谷口吉生氏が語り合う特別企画が素晴らしい。写真を交えたどこまでも具体的な建築物をめぐる回想であり、エピソードだから、実に分かりやすい。「武サ ムライ士とは?」(三人閑談)も眞田家当主まで交えて、鎌倉時代から明治維新までの「サムライ」の実態と「イデオロギー」を実に明解に浮き彫りにしている。唯一歯が立たなかった座談が「特集 ポピュリズムをどう捉えるか」。左か右かではなく、反エリートとカリスマリーダーぐらいが最大公約数。あとは百花繚乱。発言者、論者の数だけ紹介と解釈が繰り延べられる。後続の論文も含め、何度読み返しても分からない。
鷲見洋一
2010年代以降、「ポピュリズム」が世界中を覆っているかのようです。トランプ大統領の登場、ヨーロッパの排他主義の台頭、そしてブレグジットなどが話題になるたびに「ポピュリズム」の語が使われましたが、それが何を表すのか、必ずしも明確ではありません。本特集では、第一線の専門家に「ポピュリズムをどう捉えるか」を語っていただきました。そして日本にポピュリズムの芽はあるのか?民主主義の未来を考える特集です。
現在の慶應義塾の建築は多様な姿を見せていますが、谷口吉郎氏と子息の谷口吉生氏、槇文彦氏の設計による各キャンパスの建築は、塾の歴史と現在にとって欠かせないものです。慶應建築の系譜のど真ん中にいる二人による、和やかな雰囲気の対談は、そのまま慶應義塾史の1ページと言ってもよいかもしれません。
名執雅子さん
前法務省矯正局長・塾員
インタビュアー:太田達也(慶應義塾大学法学部教授)
法務省矯正局がどのようなことをするところか、ご存知の方はそれほど多くないのではないかと思います。全国の刑務所、拘置所、少年院等の矯正施設を管理する矯正局の局長に女性として初めて就いた名執さん。受刑者を社会に戻すための様々なプログラムを立案、運営していった名執さんの、静かな中に情熱を秘めた語り口に、少数者への配慮の重要性を感じます。
現代でもアニメやドラマなどでヒーローとして描かれることが多い武士(サムライ)。外国でもとても人気があるそうですが、1000年近い武士の歴史を見渡すと、現在、思い描かれている武士道や武士像とはずいぶん違った姿が見えてくるようです。あの有名大名家の現当主も参加したこの閑談。武士道に「何を見つけたり」となるでしょうか?
母校を思う塾員と篤志家の皆様により、義塾の教育研究活動を財政支援する目的で設立された1世紀余の歴史を有する組織です。
会員の皆様にはご加入期間『三田評論』を贈呈いたします。