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The Cambrige Gazette


グローバル時代における知的武者修行を目指す若人に贈る
栗原航海(後悔)日誌@Harvard

『ケンブリッジ・ガゼット:Lessons Learned』

第3号(2006年8月)
 

 

■ 目次 ■

 

IT時代の「ヒトの和と輪」

 たとえ「ヒトの和と輪」が確立していても、残念ながら良質な情報は必ずしもスムーズに流れません。それは、情報が的確に伝達されるには次の諸条件が整わないと難しいからだと思います。すなわち、外的条件として、@物理的環境(電話、インターネット等)、次いで、情報の発信者と受信者、双方の条件として、Aタイミング(遅過ぎても早過ぎても意味が無い)、B情報の量(多過ぎても少な過ぎても情報としても評価されない)、C受信者と発信者の理解能力と伝達能力、D互いの注意力・目的意識(関心が無ければ目や耳に情報が入らない)、E情報の質(難し過ぎても易し過ぎても評価されない)、F嗜好・価値観(好き嫌いという先入観があると冷静に情報の価値を判断出来ない)、以上7つの条件、どれ一つ欠けても情報は伝わりません。しかし、インターネットに代表される情報通信技術(IT/ICT)の進歩、更には運輸交通手段の発達により、上記の条件のうち、@、A、Bといった物理的制約条件は大幅に改善されました。すなわち、大量の情報が安価でそれも瞬時に世界を駆け巡るIT時代には、情報の受信者と発信者が「ヒトの和と輪」を意識しつつ、高い知能を持ち(先のC)、情報の流れに神経を尖らせ(D)、良質な情報を求め(E)、虚心坦懐に情報を受けとめる(F)ならば、情報伝達の効率は飛躍的に上昇するようになりました。

 フランス語に「遠くから来た者は平気で嘘をつく(A beau mentir qui vient de loin.)」という表現があります。皆様がマルコ・ポーロの『東方見聞録(Le divisament dou monde/The Travels of Marco Polo)』を読まれますと、大層誇張した表現を容易に見つけられるでしょう。昔は、「米国では…」や「中国では…」という「出羽守(でわのかみ)」が跋扈しておりましたが、今ではその気になれば簡単に彼等の話の真偽が明白になります。IT時代を迎え、高い「志」を懐きつつ情報受発信能力を高めてゆけば、以前に比べて容易にグローバルな「ヒトの和と輪」が形成可能となり、「出羽守」に惑わされることなく、質の高い国際的な知的対話が実現可能となりました。そうした意味で優秀な皆様の毎日のご努力に期待しております。

 

 

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著者プロフィール:栗原潤 (くりはら・じゅん)
ハーバード大学ケネディスクール[行政大学院]シニア・フェロー[上席研究員]
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