一 出会い――初回調査
「最高に幸せです」
馬場さん(女性)から届けられた読書カードには、こう書いてあった。
私も十二月で五十歳になりますが、農協(JA)で二十年働き、三年前からフリーしてます。夫の給料と私のバイト料で家計eは丁度! 蓄え備えも何とかなってます。私も太田さん(隠居研究会の本の著者)に大賛成。みんな納得です。くらし≠フこと、とくに食と高齢社会の問題で、しゃべったり書いたり、実践したりして、います。最高に幸せです。田舎の自然とたわむれて野菜もつくってます。(馬場さんの漢字・仮名遣いのママ。以下同じ)
「最高に幸せです」――馬場さんにそう言わしめるものはなんなのか。私はそれをきいてみたかった。
インタビュー依頼の手紙にOKの返信をいただいたのち、あらためて馬場さんにインタビューのお願いの電話をしたときの様子は、こうなふうだった。
(馬場)ご苦労さまです。それで、どういう感じで?
――お会いしてお話をおうかがいできればと思っているんですけれど。僕はどこにでも出向きますから。
(馬場)あら、ここまで来てくださるの?
――えぇ、おうかがいいたしますよ。
(馬場)あら、ご苦労さんだわねぇ。でも、どんなこと話せばいいかしら? お役に立てるかしら?
――いやもう、「お役に立てる」だなんてとんでもないです。たとえば、「隠居」という生き方にどういう関心を持たれたのかとか、それと関連して、馬場さんがこれまでどういうふうに生きてこられて、これからどういうふうに生きていかれたいかとか、おうかがいできればなと思ってるんですけど。
(馬場)しゃべらせてもらっていいのかしら?
――えぇ。もうざっくばらんに、井戸端会議みたいな感じで、自由に。杓子定規にやっても味気ないですし。
こんな調子で、馬場さんは快くインタビューを承諾してくださった。馬場さんの声はとても明るく、歯切れのよいしゃべり方であった。電話をかける前はかなり緊張していた私であったが、電話が終わるころには馬場さんの快い対応にすっかり元気づけられていた。 ・・・・・
[本書157頁から159頁途中まで抜粋]
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