このキャンパスは戦場とつながっていた――。 目映い光に溢れる「理想的新学園」はやがて、アジア・太平洋戦争へと巻き込まれていく。青春を謳歌していた慶應義塾大学の予科生たちが学ぶモダンな校舎はいかにして兵士たちが行き交う空間となったのか。連合艦隊司令部地下壕で知られる日吉キャンパスの誕生より米軍からの返還までを描く「戦争とキャンパス」の昭和史。
慶應予科生たちは「戦争の時代」をどう生きたのか? 日吉台地下壕保存の会会長でもある、慶應義塾高校校長の著者が、戦争に翻弄された日吉開設から米軍による占領からの返還まで15年間の日吉キャンパスの校舎の記憶を掘り下げ、現在とのつながりを解き明かしていく。アジア・太平洋戦争と大学キャンパスの関係を辿る、大学史のみならず、戦争の時代に興味を持つ方必読の書。
「銀杏並木のゆるやかな坂道をのぼり、キャンパスを地上と地下の合わせ鏡で見つめると、思いもよらない風景が見えてくるだろう。これほど激しく戦争の時代に翻弄され、これほど大きく本格的な戦争の遺跡をもつキャンパスは他にあるだろうか。」(本書「はじめに」より)
『北海道新聞』 2022年12月24日〈今年の3冊〉に選んでいただきました。選者は、根井雅弘氏(京都大学教授)です。 本文はこちら
『横浜日吉新聞』 夏号(2023年7月1日発行)にて本書が紹介されました。
『進学レーダー』(日能研の機関誌、みくに出版) 2023年8月号(p. 69)にて本書が紹介されました。
はじめに
第一章 理想的学園の建設―1923-1934 一 はじまりの日/二 日吉開設まで/三 「理想的新学園」の建設 /四 「田園家塾」の理想/五 設計者 網戸武夫/六 鉄筋コンクリート打放し/七 古典主義とモダニズム/八 列柱のクラシシズム 第二章 クラシックとモダン―日吉第一校舎の肖像 一『君たちはどう生きるか』の時代/二 アール・デコの意匠/三 幾何学的なデザイン/四 正面玄関の鷲/五 世界地図のカップ/六 西暦と皇紀
第三章 予科の教育(前編 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
阿久澤武史(あくざわ たけし) 1988年慶應義塾大学文学部国文学専攻卒業。90年同大学院文学研究科修士課程修了。同年慶應義塾高等学校国語科教諭として赴任。96年慶應義塾ニューヨーク学院教諭。2002年〜現在 慶應義塾高等学校教諭。慶應義塾大学教養研究センター所員(大学で「日吉学」を担当)。福澤諭吉記念慶應義塾史展示館所員。日吉台地下壕保存の会会長。日吉台地下壕をはじめ慶應義塾日吉キャンパス内の戦争遺跡ならびにその時代の塾史研究に携わる。2022年10月慶應義塾高等学校長に就任。専門は古代国文学、戦争遺跡研究、慶應義塾史。 主な論文に「太安萬侶論―その家職と古事記撰録―」(『藝文研究』第59号、1991年3月)、「『歌儛所』の時代―大歌所前史の研究―」(『三田国文』第22号、1995年12月)、「静かな生活―戦後の折口信夫論―」(『三田文学』第68号、2002年3月)などがある。
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