閉塞感の払拭法から金融理論の最前線(フロンティア)までを通観する
日本経済が長期停滞の閉塞感からなかなか脱却できないうちに、実体経済はDX、デジタル通貨、ブロックチェーンなど金融技術の発達とともに一段先へと進んでいる。どのような方法でわが国の経済的安定を取り戻すか? 金融分析の精鋭たちが理論・実証両面から、中央銀行デジタル通貨、ESG投資、保険市場、法人税改革など多角的視点から現状を概観・展望する、切れ味鋭い論考集。
本書は、2021年2月に逝去された池尾和人慶應義塾大学名誉教授への追悼の意を込めて、慶應義塾大学経済学部の金融研究者有志によって編まれた、現代金融の幅広いテーマを議論した論考集。池尾教授が生前強調されていた、経済学の理論と実証の両輪を踏まえつつ、それを実務と政策に活用し、より望ましい経済社会を実現していくという方向性に沿ったかたちをとる。
第T部ではDXとフィンテック、中央銀行デジタル通貨、ブロックチェーンへの脅威など「金融とデジタル化」の最前線の模様を取り上げて分析・解説する。
第U部ではESG投資、保険市場、ファンドマネジャーの報酬体系と資産価格バブルなど、金融システムのインセンティブ構造が実体経済に与える影響の解明を試みる。
第V部では不良債権問題、過剰貯蓄・低金利・金融市場改革、法人税改革など、金融経済の諸相と実体経済とのリンケージを多角的視点から捉えて検討する。
巻頭言 中村慎助
第T部 金融とデジタル化 第1章 デジタル・トランスフォーメーション(DX)の現状と課題 嘉治佐保子・中妻照雄 第2章 中央銀行デジタル通貨と金融システム 白塚重典 第3章 ブロックチェーンへの脅威――Polkadotを例に 中妻照雄・陳宇鴻
第U部 金融システムのインセンティブ構造 第4章 ファンドマネジャーの報酬体系と資産価格バブル 佐藤祐己 第5章 行動が将来事象に影響を与える場合の保険市場 塩澤修平 第6章 ESG投資による資産選択の ……
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【編者】 中妻照雄(なかつま・てるお) 慶應義塾大学経済学部教授、同大大学院経済学研究科委員長。 1991年筑波大学第三学群(現・理工学群)社会工学類卒業。98年ラトガーズ大学Ph.D.(経済学)。一橋大学経済研究所専任講師、慶應義塾大学経済学部准教授等を経て現職。慶應義塾大学経済研究所長、同研究所FinTecセンター長を兼務。 主な業績: 『実践ベイズ統計学』朝倉書店、2013年。『Pythonによるファイナンス入門』朝倉書店、2018年。 『Pythonによるベイズ統計学入門』朝倉書店、2019年。『フィンテックの経済学』共編、慶應義塾大学出版会、2019年。
白塚重典(しらつか・しげのり) 慶應義塾大学経済学部教授。 1987年慶應義塾大学経済学部卒業、日本銀行入行。金融研究所経済ファイナンス研究課長、松山支店長、金沢支店長、企画局審議役、金融研究所長を歴任。2019年9月より現職。2000年、慶應義塾大学博士(経済学)。 主な業績: 『物価の経済分析』東京大学出版会、1998年。 『ポスト・バブルの金融政策』共編、ダイヤモンド社、2001年。
【執筆者】(五十音順) 嘉治佐保子(かじ・さほこ) 慶應義塾大学経済学部教授。
小林慶一郎(こばやし・けいいちろう) 慶應義塾大学経済学部教授。
櫻川昌哉(さくらがわ・まさや) 慶應義塾大学経済学部教授。
佐藤祐己(さとう・ゆうき) 慶應義塾大学経済学部教授。
塩澤修平(しおざわ・しゅうへい) 慶應義塾大学名誉教授、東京国際大学経済学部教授。
ファラハード・タギザーデ ヘサーリ 東海大学国際学部准教授。
陳宇鴻(ちん・うこう) 慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了後、外資系IT企業勤務。
土居丈朗(どい・たけろう) 慶應義塾大学経済学部教授。
湯山智教(ゆやま・とものり) 金融庁金融研究センター研究官。
吉野直行(よしの・なおゆき) 慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター長。
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