台湾で日本人を祀る
鬼(クイ)から神(シン)への現代人類学
|
記憶の媒体としての「日本神」を読み解く
台湾には、かつての支配者を信仰対象とする廟や祠が多数存在する。本書では、これを「日本神」と名付け、民間信仰に埋め込まれた植民地経験・戦争経験と民衆の歴史認識や、新しいメディアを通した観光化の中で生成する「日本神」像を探る。
▼「台湾で日本人を神として祀る」という行為はなぜ成立しているのか。 ▼台湾に現存するうちの49か所の祭祀施設(廟)の調査結果をもとに、その問いに迫る。 ▼台湾の日本人祭祀を日本統治の肯定と結びつける風潮に対しても、歴史人類学の立場から論考を行う。
台湾では日本人を祀る祭祀施設(廟)が相当数ある。 日本統治時代の記憶と台湾の民間信仰の関係から、民衆の歴史認識がどのようにかたちづくられていくのかを探る。
『アジア研究』(2023年1月、Vol.69(1), pp. 80-84)に書評が掲載されました。評者は中生勝美先生(桜美林大学 リベラルアーツ学群 教授)です。
『Al-Madaniyya』(2023年、Vol.2., pp. 87-100)に書評が掲載されました。評者は魏郁欣先生(慶應義塾大学准訪問研究員)です。
『宗教研究』 第97巻第1輯406号(2023年6月)に書評が掲載されました。評者は上水流久彦氏(広島大学教授)です。
まえがき
序章 台湾の民間信仰と日本神 三尾裕子 はじめに 第一節 日本神とは何か 第二節 台湾漢人の民間信仰 第三節 民間信仰に埋め込まれた日本神 第四節 日本神の霊験の顕現 第五節 陰神から正神へ? おわりに
第1部 メディアと観光の中の日本神 第一章 英霊と好兄弟のあいだ――メディア言説、現地の実践、新たなコミュニケーショ ン 藤野陽平 はじめに 第一節 日本のメデ ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
※2022年3月現在 【編著者】 三尾 裕子(みお ゆうこ) 慶應義塾大学文学部教授。博士(学術)。専門は文化人類学。 慶應義塾大学東アジア研究所所長。 東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。東京大学教養学部、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所などを経て現職。 主著:『王爺信仰的歴史民族誌――台湾漢人的民間信仰動態』(2018年、台北:中央研究院民族学研究所)、Memories of the Japanese Empire: Comparison of the Colonial and Decolonisation Experiences in Taiwan and Nan’yo-gunto. (2021) ed. by Yuko Mio. Routledge. 『帝国日本の記憶』(共編著、2016年、慶應義塾大学出版会)など。
【著者】(執筆順) 藤野 陽平(ふじの ようへい) 北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。博士(社会学)。専門は文化人類学。 1978年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究機関研究員などを経て現職。 主著『台湾における民衆キリスト教の人類学』(2013年、風響社)、『モノとメディアの人類学』(共編著、2021年、ナカニシヤ出版)、『ポストコロナ時代の東アジア』(共編著、2020年、勉誠出版)など。
原 英子(はら えいこ) 岩手県立大学盛岡短期大学部教授。博士(文学)。専門は文化人類学・宗教人類学。 九州大学大学院博士後期課程修了。東北大学非常勤講師、宮城学院女子大学非常勤講師、岐阜市立女子短期大学講師などを経て現職。 主著『台湾アミ族の宗教世界』(2000年、九州大学出版会)、『台湾原住民研究の射程』(共著、2014年、風響社)、『もっと知りたい台湾 第2版』(共著、1998年、弘文堂)など。
林 美容(りん びよう Lin Mei-rong) 中央研究院民族学研究所兼任研究員。社会科学博士。専門は文化人類学、民俗学。 University California, Irvine 校博士課程修了。台湾大学考古人類学系助教、中央研究民族所助理研究員・副研究員・研究員、慈済大学宗教與人文研究所教授などを経て現職。 主著『台灣民俗的人類学視野』(2014年、台湾:翰蘆図書出版)、『魔神仔的人類學想像』(共著、2014年。台北:五南図書出版)など。
劉 智豪(りゅう ちごう Liu Zhi-hao) 泉州師範学院文学伝播学部歴史学科准教授。博士(哲学)。専門は宗教学。 北京大学大学院哲学研究科博士課程修了。中国社会科学院民族学與人類学研究所、泉州師範学院シルクロード言語文化センターなどを経て現職。 主著『日本鹿兒島林家媽祖研究』(『世界宗教文化』第1期、2021年、北京:中国社科院世界宗教研究所)、「地方傳統民俗文化中的两岸連接:以閩台東石元宵燈俗為核心的考察」(『地域文化研究』(第5期、2020年、吉林:吉林省社会科学院)、「東正教在台灣的現狀及其適應」(『世界宗教文化』第3期、2014年、北京:中国社会科院世界宗教研究所)など。
山田 明広(やまだ あきひろ) 奈良学園大学人間教育学部准教授。博士(文学)。専門は中国宗教、道教。 1976年生まれ。関西大学大学院文学研究科中国文学専攻博士課程後期課程修了。台湾中央研究院歴史語言研究所訪問学員、関西大学アジア文化交流研究センターPD、慶應義塾大学東アジア研究所研究員(非常勤)等を経て現職。 主著『台湾道教における斎儀』(2015年、大河書房)、『怪異学講義』(共著、2021年、勉誠出版)、『東アジア海域文化の生成と展開』(共著、2015年、風響社)など。
陳 梅卿(ちん ばいきょう Chen Mei-Ching) 国立成功大学歴史系兼任教授。博士(文学)。専門は東洋史。 1952年生まれ。立教大学文学研究科(東洋史専攻)博士後期課程修了。成功大学歴史系專任副教授、專任教授を経て2017年退職、現在に至る。 主著『走在五條港:五條港的傳統產業與宗教信仰』(2011年、台南市台湾五條港發展協會)、『府城大街工作日誌2003-2007』(2011年、台南市五條港發展協會)、『宜蘭縣基督教傳教史宜蘭縣基督教傳教史』(2000年、宜蘭縣政府)、『說聖王・道信仰:透視台灣廣澤尊王』(2000年、台南:台灣建築與文化資產出版社)など。
遠藤 協(えんどう かのう) 記録映像作家。ドキュメンタリー映画や民俗映像の制作・配給・配信に携わりながら、映像民俗学を実践。 1980年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了。大学院修了後、映画美術学校にてドキュメンタリー制作を学ぶ。上位世代の監督・スタッフのもとで記録映画の制作に従事し、現在に至る。初の劇場公開作『廻り神楽』が2018年毎日映画コンクールのドキュメンタリー映画賞を受賞。 主な映像作品『廻り神楽』(共同監督・プロデューサー、2017年、ヴィジュアルフォークロア)、『むらのしばいごや 加子母明治座耐震改修工事の一年』(演出ほか、2016年、加子母風起こし実行委員会)、『落合西光寺双盤念仏』(ディレクター、2016年、埼玉県飯能市)、『西久保観世音の鉦はり』(ディレクター、2014年、埼玉県飯能市)など。
【訳者】 五十嵐 真子(いがらし まさこ) 博士(人間文化学)。専門は文化人類学。 1965年生まれ。南山大学大学院博士後期課程満期退学。野外民族博物館リトルワールド研究員を経て、神戸学院大学人文学部教授(2015年3月まで)。 主著『現代台湾宗教の諸相』(2006年、人文書院)、『アジアの社会参加仏教』(共著、2015年、北海道大学出版会)、『台湾における〈植民地〉経験』(共著、2011年、風響社)など。
|