なぜ、生きている人間から臓器を摘出してもいいのか?
脳死下移植・心停止下移植の件数と比べて圧倒的多数でありながら、いまだ十分な議論がなされていない生体臓器移植。その包括的な倫理的要件を提示する力作。
日本最多の臓器移植医療は一貫して生体臓器移植であり、今後さらに拡大する見込みである。 しかしながら、脳死下・心停止下からの移植は臓器移植法で法制化されているのに対し、生体臓器移植に関する法律はなく、また生命倫理学からの成果も限定的なものに留まっている。
本書は、哲学・倫理学分野の視座から分析を加えることで、「ドナーに危害を加える行為」である生体臓器移植における課題を解き明かし、その倫理的要件を提示する。切迫する医療現場に寄り添い、逡巡と規範を丁寧に析出する力作。
図書新聞 第3500号(2021年6月19日)に掲載されました(2面)。評者は山本史華氏(東京都市大学教授)、有馬斉氏(横浜市立大学国際教養学部准教授)です(同時に2本の書評を掲載いただきました)。
はじめに
第一章 生体臓器移植はどのように研究されてきたか 第一節 本書の目的 第二節 先行研究と本書の進め方 (一)生体臓器移植が脳死臓器移植ほど取り上げられないできた理由 (二)先行研究の紹介 (三) 本書の論点
第二章 倫理はどのように語られるべきなのか 第一節 日常生活に根差した倫理 第二節 身体の倫理性 (一)自律的人間観と身体 (二)身体主体と共応主体 第三節 尊厳感覚と無危害原則 第四節 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
田村 京子(たむら きょうこ) 1954年生まれ。1987年、慶應義塾大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程単位取得退学。 博士(哲学)。現在、帝京平成大学薬学部教授。共編著に『現代医療論』(メヂカルフレンド社、2012年)、著作に「マザー・マシン」(菅沼信彦・盛永審一郎編『シリーズ生命倫理学第6巻 生殖医療』丸善出版、2012年)などがある。
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