丘の上には、「真理に到達した者」が住んでいる――
明治期の催眠術ブームの仕掛け人にして超常現象の研究家、長く私塾を営み成田中学校校長も務めた教育家、ユニテリアン思想に傾倒した宗教家――。いくつもの顔を有した稀代の啓蒙家・竹内楠三(1867-1921)がドイツ語で著しドイツで出版された幻の思想小説。「真理に到達した者」=森田老人を信奉する人々の対話や省察を通じて、彼の思想がいま鮮やかに蘇る。
・知られざる啓蒙家・竹内楠三がドイツで出版した幻の思想小説の邦訳。 ・宗教や日本主義、催眠術等を遍歴した果てにたどりついた「真理への道」とは。 ・政治思想史研究者 片山杜秀による解説を収録。


序(ヴィルヘルム・ゾルフ)
真理探究者たち──ある日本人の対話と省察
監訳者あとがき(岩下眞好)
解説(片山杜秀)
付記(橘 宏亮)
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竹内楠三(たけうち なんぞう/くすぞう、1867-1921)[著] 明治〜大正期の啓蒙家。1867年三重県生まれ。青山学院中退後、東京自由神学校入学。多元的宗教論にたつキリスト教の教派「ユニテリアン」運動に携わる。1891年頃からはドイツ語、フランス語の私塾を開き、その後催眠術、千里眼、動物磁気学など、今日では「オカルト」と目される分野で数多くの書を著す。1903年出版の『学理応用 催眠術自在』は、その後33版を重ねる大ヒット作となった。他にも『人生達観 厭世哲学』『ショーペンハウエル恋愛哲学』などドイツ哲学に関する著作も多い。1899年から旧制成田中学校の校長を務める。1920年に一切の教育活動から手を引き、本書=小説『真理探究者たち』の執筆にとりかかるが、翌21年に病没。小説は未完だったが、1923年にドイツの出版社から刊行された。
岩下眞好(いわした まさよし)[監訳] 慶應義塾大学名誉教授。ドイツ文学者、音楽評論家。 1950年生まれ。1979年慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。慶應義塾大学法学部専任講師、助教授を経て1999年より2016年まで慶應義塾大学法学部教授。2016年歿。著書に『ウィーン国立歌劇場』(音楽之友社)、『マーラー その交響的宇宙』(同)。訳書に『破滅者』(みすず書房)ほか多数。
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