カントの法哲学は「批判的」か。
カントの最晩年の著作である『法論』、すなわち『法論の形而上学的基礎論』は、従来カント哲学研究によって『純粋理性批判』や『実践理性批判』において樹立された超越論的哲学ないし批判哲学とは矛盾するもの、またカントの老衰の作であると否定的に評価されていた。
しかし、果してそれは真に正しい評価なのか? 最新のドイツ・カント哲学研究を精査し無窮の問いに挑む。カントの『法論』、法哲学の現代的意義を解明する大作が遂に刊行。
本書での課題はカントの批判的法哲学の解明である。
カント法哲学は、その体系的位置づけに関して言えば、従来カント哲学研究によって『純粋理性批判』や『実践理性批判』において樹立された超越論的哲学ないし批判哲学とは矛盾するものであると否定的に評価され、また、注目される機会もきわめて少なかった。カント法哲学は批判哲学体系の中で周辺的な役割しか与えられなかったのである。
しかし、その評価は正当なものであろうか。 新カント学派によって構想された批判的法哲学ないし純粋法学ではなく、カント自身の「批判的法哲学」を解明しその現代的意義を構築するとともに、その復権を試みる。 過去のものとなったとされる新カント学派の法哲学の欠陥およびその積極的意義をあらためて問い直し、今日の法哲学研究に対する示唆を提示する大作。

『法哲学年報2020』 2021年10月30日(p.122〜p.131)に書評が掲載されました。評者は高橋洋城氏(駒澤大学教授)です。

はしがき
序 論
はじめに 一 カント法哲学研究の現状 1 生成論的方向性 2 体系内在的方向性 3 道徳哲学と法哲学との関連をめぐる方向性 二 カント法哲学研究の3つの方向性 三 カント法哲学の批判哲学における体系的位置
第一部 カント法哲学の継受史、影響史、解釈史 および批判哲学における法論の体系的位置づけ
T 新カント学派の解釈 はじめに 一 新カント学派における法論の ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
松本 和彦(まつもと かずひこ) 1960年生まれ。北陸大学経済経営学部教授。 専門:法哲学、法思想史。 慶應義塾大学法学部卒業、同大学院法学研究科博士課程単位取得退学。北陸大学法学部専任講師、助教授、教授等を経て現職。北陸大学学生部長、学生総合サービスセンター副センター長、未来創造学部学部長、副学長、図書館長等を歴任。 本書収録論文のほか、著作に「ドイツにおける社会法概念の展開―その法思想的意義」研究労働法・経済法(別冊3)(慶應義塾大学産業研究所、1991年)、「カント法哲学の超越論的性格―所有権論を中心として」法哲学年報1993(日本法哲学学会、1994年)、クラウス・ウィルヘルム・カナリス『法律学における体系思考と体系概念』(共訳、慶應義塾大学法学研究会、1996年)ほか。
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