宗教改革と農奴制
― スイスと西南ドイツの人格的支配
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身分制社会秩序の根拠に迫る実証的研究。
▼1517年、ルターの『九五箇条の提題』を契機として始まった宗教改革運動は、腐敗した教会に厳しい批判を投げかけるとともに、聖書そのものに立ち戻ることを訴え、またたくまにヨーロッパ全土に広がった。この運動は、人々を良心の自由、宗教上の内面的自由に目覚めさせ、近代への扉を開く重要な契機になったと位置づけられている。しかし、この運動の影響下に闘わされた農民戦争にも拘らず、農奴たちの解放は「啓蒙の18世紀」を俟たねばならなかった。それはなぜなのか。本書は、神学と農奴解放思想とのかかわりを思想史的に検討し、国制史、社会史研究の観点から農奴制の実態を実証的に明らかにすることで、近代ヨーロッパ成立の根幹に位置するこの問題に答える、重厚な研究書である。

歴史学研究 No. 928(2015年2月号)に書評が掲載されました(評者:森田安一氏)
史學雑誌 第123編第10号(2014年10月20日発行)に書評が掲載されました(評者:前間良爾氏)
西洋史学 No.251、日本西洋史学会刊行に書評が掲載されました(評者:京都府立大学教授 渡邊伸氏)

序論
第1編 農奴制をめぐる思想史的研究
第1章 宗教改革期における平民の農奴制観とその思想的背景 はじめに 第1節 近世におけるスイスと西南ドイツの農村の一般的状況と農奴制の役割 第2節 「古き法」に基づく抗議 (1)農奴制全般に関わる訴え (2)農奴制に由来する個別的な問題に関わる訴え 第3節 「神の法」に基づく抗議 (1)農奴制全般に関わる訴え (2)農奴制に由来する個別的な問題に関わる訴え ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
野々瀬 浩司(ののせ こうじ) 防衛大学校人間文化学科教授。 1964年生まれ。1988年、一橋大学社会学部卒。1992−94年、スイス連邦政府給費奨学生としてベルン大学留学。1995年、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得満期退学。1998年、慶應義塾大学大学院文学研究科にて博士号(史学)取得。 著書に、『ドイツ農民戦争と宗教改革――スイス史の一断面』(慶應義塾大学出版会、2000年)、論文に、「近世スイスにおける領邦国家の形成――農民戦争期のシャフハウゼン」(踊共二・岩井隆夫編『スイス史研究の新地平――都市・農村・国家』昭和堂、2011年)、「ゾーロトゥルンの宗教改革とその挫折」(『史学』第70巻3−4号、2001年)などがある。
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