ワルラス経済学の思想的統一性を解明する野心的研究。 ワルラスはいったい何を言いたかったのか? 時に彼の社会的・政治的ビジョンを、時にカント、マルクス、エッジワースらとの対比を手がかりに、「交換」「収穫不変」「均衡」「資本蓄積」「貨幣」「利子率」などの諸概念を繋ぐ失われた統一性を探り出す。
今日の新古典派理論のほぼ絶対的な基準、一般均衡モデルは19世紀の偉大な革命的産物の1つである。事実、レオン・ワルラスは、彼の政治哲学における苦悩への適切な回答として、一般均衡理論の数学的定式化を着想した。ワルラスの静学的分配理論と動学的資本理論に触れてみれば、イギリス古典派経済学とワルラス経済学との関連がわかる。 ワルラス経済学が提示する経済思想史への関心は尽きないが、ワルラスの経済思想を詳細に検討してみると、これまで誤って理解され、あるいは歪められてきたワルラスの理論の特徴が浮かび上がってくる。 さらに本書は、今日展開されているワルラス理論に対し、さまざまな疑問を提示する。例えば、ワルラス的模索過程や価格形成過程の正確な射程とは何か? ワルラスの貨幣理論と価値理論との統合は可能なのか、また両者の統合の目的は何か? 本書は、経済思想史を学ぶ者だけでなく、経済理論に関心を持つ者、さらに経済学と政治哲学との関係に目を向ける者すべてに贈られるものである。

序論 第1章 経済学、道徳科学、および社会主義 1 科学、技術、および道徳学 2 ワルラスの社会概念
第2章 ロビンソン・クルーソーの生産、あるいは自然との交換 1 生産と交換 2 効用と行動記述 3 規模に関する収穫についての論争
第3章 商品交換 1 ワルラスの説明 2 競争の理論と行為者の数の問題 3 価値論と商品数の問題
第4 ……
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著者 アントワーヌ・ルベイロ(Antoine Rebeyrol) パリ第8大学経済学部教授. 英国古典派経済学者の経済思想史やマクロ経済動学による労働研究に関する論文多数。ジャン=フランソワ・ジャック教授との共著に『成長と循環―マクロ経済成長分析』(2001)がある。
訳者 石橋春男(いしばし はるお) 大東文化大学環境創造学部教授。 1967年早稲田大学第一政治経済学部卒業。1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。 訳書に『貨幣数量説の黄金時代』(共著、同文舘出版)、『レオン・ワルラス:段階的発展論者の経済学』『レオン・ワルラスの経済学』(文化書房博文社)など
渡部 茂(わたべ しげる) 大東文化大学経済学部教授。 1976年早稲田大学大学院経済学研究科博士課程修了。ローザンヌ大学、ウェストミンスター大学客員研究員を経て、現職。 訳書にF.A.ハイエク『自由人の政治的秩序』(春秋社、1998年)、G.R.スティール『ハイエクの経済学』(学文社、2001年)、『オーストリア経済学:アメリカにおけるその発展』(共訳、学文社)など。
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本書は、理論的な分析から規範的な分析に至るまでさまざまな要素を織り込んだワルラスの研究が実は驚くべき思想的統一性をもち、彼の主要著作である『純粋経済学要論』に見事に結実していることを明らかにしようとするもので、著者が「序論」でジャッフェ的な、ある意味で控えめな方法論を採用しているといっているにもかか ……
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