ヴィクトリア朝の福澤諭吉と岩倉使節団
幕末維新期における〈知〉をめぐる旅
序章 1 ヴィクトリア朝社会と階級 ガラスの天井と三つの視点/持てる者と持たざる者/19世紀半ばに訪れた転機/中流階級の細分化とヴィクトリア朝時代の倫理観 2 ヴィクトリア朝社会の教育概観 階級と教育/自助の精神と公教育の遅れ 3 本書の構成と構想
第I部 福澤諭吉と世界地理 幕末維新期の異文化接触と海外情報 第1章 海外関連の情報収集と伝播の変容 1 徳川時代における海外情報の収集――変容過程の概観 2 「居ながらにして知る」時代と福澤諭吉
第2章 日本における地理への関心――福澤諭吉の依拠した西洋地理教科書 1 地理への関心――地理教育の広まる土壌 2 福澤諭吉と海外の地理教科書 アメリカの地理教科書/イギリスの地理教科書
第3章 19 世紀イギリスにおける初等教育カリキュラムと地理教育 1 「学びの場」の風景――初等教育への道 2 イギリス地理教科書の特徴と地理教育の位置づけ 3 ウィルダースピンと地理教育
第4章 福澤諭吉の『世界国尽』 1 福澤諭吉の眼目と『世界国尽』の形式・構成 執筆の動機と眼目/『世界国尽』の構成/韻を踏む形式とGeography in Rhyme 2 『世界国尽』の内容とその意図 凡例と序文――「翻訳書」の真実とは/亜細亜洲と阿非利加洲/欧羅巴洲と北亜米利加洲/南亜米利加洲と大洋洲/「天文の地学」「自然の地学」「人間の地学」――『世界国尽』の枠組み
第5章 福澤の残したもの、残せなかったもの 1 幕末明治初期の初等教育とその変容 2 第T部のまとめとして
補章 19 世紀前半イギリスの地理教科書とゴールドスミスの功績 ゴールドスミスの地理教科書 1 ゴールドスミス地理教科書の誕生 2 Reverend John Goldsmith とは 3 ゴールドスミス地理教科書――テクスト分析 ゴールドスミス編の教科書/他の編者によるゴールドスミス地理教科書の改訂版
第U部 岩倉使節団とイギリス 使節団の概要と教育視察先選定の謎
Part 1 岩倉使節団別働隊とイギリスの教育視察――田中不二麿と新島襄
第1章 新島襄と岩倉使節団 新島の動機――任用から見えるもの
第2章 イギリスにおける別働隊の教育視察――その特徴と位置づけ 1 新島襄・田中不二麿の足取り 2 新島・田中の行動パターンと着目点の特徴 重要人物のネットワーク開拓と活用/視察プログラムの計画性とバランスへの配慮/学校運営に対する関心と教育システムの理解 3 Part 1の小括として
Part 2 岩倉使節団本隊のイギリス教育視察 使節団本隊の目的とイギリス側の思惑
第3章 岩倉使節団本隊と教育視察関連の日程 1 教育視察関連の日程 ロンドンの小学校を参観/クライスツ・ホスピタル校訪問/ロンドンからイギリス各地の産業視察の旅へ/学校以外の教育文化施設 2 視察した教育現場の特徴と位置づけ 19世紀イギリスと公教育/ソルテア訪問の意義/訓練船の視察
第4章 イギリス側の意図とパークスの果たした役割――教育機関選択の背景 1 日程策定とイギリス側の思惑 2 パークスたちの経歴 3 パークスの権限と意図――教育機関選定の背景
第5章 岩倉使節団本隊がヴィクトリア朝社会から観て取ったもの 1 富強の原動力を探る 2 先進国の裏の顔を垣間見る――ヴィクトリア朝社会の裏面探索 3 視察した教育機関に対する評価 4 上流階級との交流とパークスについての「発見」 5 イギリスの階級社会に対する理解と望ましい社会像 6 Part 2の小括として
終章 異文化接触の旅から知へ/福澤諭吉の旅/新島襄の旅/岩倉使節団本隊と久米邦武の旅――「駆け引き」の旅から「知の論評」へ
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