オーウェル『一九八四年』
ディストピアを生き抜くために

序
T 『一九八四年』はどのようにして書かれたのか
1 ジュラ島のオーウェル 2 『ヨーロッパで最後の人間」(仮題)の構想と執筆 BBC勤務 『動物農場』執筆と『トリビューン』紙の編集 創作ノート「ヨーロッパで最後の人間」 『一九八四年』の執筆と病気 3 『一九八四年』の刊行と出版直後の評価 米国版の修正要求への拒否 出版直後の評価――冷戦初期の受容 日本における『一九八四年』の初期の受容
U 何を書いたのか
1 「窮乏の時代」とオセアニア国の表象 「近接性」――「しょぼい」ロンドン 「異質性」――時計の「一三時」と「一メートル」のポスター パブで「半リットル」のビール 「アメリカ化」したロンドン 三つの超大国 オセアニア国の「階層」 ウィンストン・スミスのロンドン彷徨 「汚れた風景」にそびえる巨大ピラミッド 2 「ライター」、そして「X」と「Y」――ウィンストンとジュリアの愛、同志オブライエンの奇 妙な愛情 オセアニア国で「愛する」ということ――ジュリアの場合 オブライエンとの「親密」な関係 女性の表象、セクシュアリティの問題 3 春と独裁 「ゆるい」エッセイ群 ウィンストン・スミスの春 〈黄金郷〉 「愛にふさわしい場所」 隠れ家とガラスのぺーパーウェイト 4 「ニュースピーク」の効用 新聞記事の改竄・捏造 「ニュースピークの諸原理」 「ニュースピーク」と「ベイシック英語」 「政治と英語」(一九四六年) 5 ユダヤ人表象の問題 「英国における反ユダヤ主義」(一九四五年) 難民船の原像 難民船のユダヤ人母子 愛情省と絶滅収容所 水底の母子 6 プロールに希望はあるか プロールは蔑称か プロールの「意識のなさ」 レイモンド・ウィリアムズのオーウェル批判 プロールへの希望
V 人の生をいかに捉えたのか
1 「権力の司祭」の信仰 オブライエンの「疲労」 「ナショナリズム覚え書き」(一九四五年) 「個人の不滅への信仰」の衰退 〈党〉への没入と自己滅却 2 「人間らしさ」と「人間性」(そして「動物性」) 「人間」の種族の絶滅 動物の比喩形象 人権擁護の国際連携の試み 「人間性」のあやうさ、そして「人間らしさ」への信 3 「嘘」の暴露と美的経験 コロナ禍のなかの「オーウェル」 「オーウェル」の汎用性の問題 「政治的著作」と「芸術」の融合 一九三六年の植樹
注 あとがき
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