チョーサー『カンタベリー物語』
ジャンルをめぐる冒険

序 『カンタベリー物語』の中世的な面白さ
T 『カンタベリー物語』の誕生 1 チョーサーの生涯と文学観 チョーサーの生涯――公的記録から チョーサーの創作活動――作品と制作年代 ヨーロッパ文学という文脈 2 『カンタベリー物語』の写本と構造 未完の『カンタベリー物語』 『カンタベリー物語』の写本と出版 配列順序へのこだわりと中世の作品観 3 巡礼という枠組と「総序の詩」 一四世紀のカンタベリー巡礼 語り手の巡礼たち ジャンルをめぐる冒険
U 話の饗宴――『カンタベリー物語』のダイナミズム 1 ヨーロッパ中世と古代 ボッカッチョとの相違点 「騎士の話」におけるジャンルの変容 チョーサーと古代 2 ファブリオ的な笑いの変容 ファブリオというジャンル 「粉屋の話」と笑いの昇華 「荘園領管理人の話」の意趣返し 「料理人の話」の行きつくところ 「貿易商人の話」の暑苦しさ 「船長の話」における打算と慎重 商人たちの行動規範を求めて 3 賢妻と女性の声 バースの女房の類型をめぐって 「バースの女房の話」におけるゆらぎ 忍耐強いグリゼルダと「学僧の話」 ボッカッチョが語る驚異のグリゼルダ ペトラルカによるキリスト教化 チョーサーのペーソス グリゼルダの話の変容 「メリベウスの話」の助言と沈黙 思慮を欠いた夫たち 4 うっとうしい教会関係者と誤読 免償と免償説教家 「諸悪の根源は金銭欲にあり」 死に至る誤読 托鉢修道士と召喚吏 「托鉢修道士の話」と誓言のレトリック 「召喚吏の話」と風の贈り物 5 奇蹟、驚異、魔術とオリエント 奇蹟と驚異 奇蹟譚としての「弁護士の話」 その向こうのアジア――「騎士の従者の話」 「騎士の従者の話」における新奇 「騎士の話」と中世的ファンタジー文学 愛の誓いと契約 6 不条理な死と勝利 「女子修道院長の話」と聖母マリア崇敬 ユダヤ人表象のアンビバレンス 女子修道院長の歴史感覚 「第二の修道女の話」と意志の勝利 「医者の話」――主従関係の犠牲としての死 「修道士の話」と運命の不条理 7 ジャンルの解体とメタナラティヴ 「修道女付き司祭の話」の解釈学的パロディ 「賄い方の話」と例話の解体 「サー・トパスの話」における究極のバーレスク ペルソナにこめられた作者の詩人観 「聖堂参事会員の従者の話」における自己投影
V 物語の終焉――『カンタベリー物語』のその後 1 『カンタベリー物語』の終わりの感覚 「教区司祭の話」と実践的読書 チョーサーによる「取り消し文」 コルプス・ミスティクムとしての巡礼 2 『カンタベリー物語』のその後と現代 一五世紀の『カンタベリー物語』 近代における受容 『カンタベリー物語』の視覚化――挿絵と絵画 グローバル・チョーサー
注 参考文献 あとがき 図版出典一覧
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