失踪の社会学
親密性と責任をめぐる試論

はじめに
I いま、失踪を問う意味
第1章 なぜ私たちは「親密な関係」から離脱しないのか 1 自殺について 2 「無縁」のイメージの変容 3 「純粋な関係」の出現と、親密性の変容 4 「親密な関係」からの離脱に対する抵抗感の根拠(リスク・愛・外的基準) 5 失踪の社会学へ
第2章 失踪の実態はどこまで把握可能か 1 諸概念の整理(失踪・家出・蒸発・行方不明) 2 失踪の件数と内訳 3 失踪発生後の一般的な流れ 4 「現代的な問題」としての失踪?
U 失踪の言説史
第3章 失踪言説の歴史社会学――戦後から現在までの雑誌記事分析 1 失踪言説の分析は何を語るのか 2 失踪言説の戦後史――「家出娘」と「蒸発妻」 3 失踪言説の背後にあるもの@――家族の戦後体制 4 失踪言説の現代史 5 失踪言説の背後にあるものA――個人化 6 雑誌記事における失踪批判の論点
V 当事者の語る失踪
第4章 失踪者の家族社会学 1 失踪の当事者の研究へ 2 「社会的死」と「曖昧な喪失」 3 研究の方法――失踪者の家族へのインタビュー 4 さまざまな失踪のかたち 5 失踪者の家族たちの特殊な経験 6 失踪者はなぜ失踪してはいけなかったのか
第5章 失踪者の家族をいかにして支援すべきか――MPSの取り組みから 1 「曖昧な喪失」理論の問題点 2 研究の方法――支援団体に対するケーススタディ 3 MPSのプロフィール 4 情報提供者としてのMPSスタッフの語り 5 情報提供者がなしうるケアとは何か 6 共に物語を作るという可能性 7 失踪に対する筆者の立場
第6章 失踪者のライフストーリー 1 失踪者本人への問い 2 先行研究の検討(家出・蒸発・runaway・ホームレス) 3 研究の方法――失踪者のライフストーリーを聞く 4 〈失踪〉経験者のライフストーリー@――家族からの離脱と応答の拒否 5 〈失踪〉経験者のライフストーリーA――自殺未遂から失踪へ 補論 〈失踪〉経験者のライフストーリーB――職場からの〈失踪〉
W 「親密な関係」に繋ぎとめるもの
第7章 親密なる者への責任 1 責任という問いへ 2 本書における責任の定義 3 責任の「行為−因果モデル」 4 責任の「傷つきやすさを避けるモデル」 5 「親密な関係」と責任の倫理
第8章 現代社会と責任の倫理 1 「親密なる者への責任」の重要性の高まり 2 「神隠し」と〈逃がし〉の論理 3 自己責任論と親密圏の過負荷
終 章 行為としての〈失踪〉の可能性 1 〈失踪〉を実行させたもの 2 〈失踪〉は自殺の代わりになるのか 3 第三者からの承認であることの効用
註 参考文献 あとがき 初出一覧 索引
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