総合研究 日本のタクシー産業
現状と変革に向けての分析
序 章 タクシー産業:低迷と混乱、そして変革 1 何が欠けているのか 2 本書の構成 3 読者へのメッセージ
第T部 実態把握編
第1章 わが国のタクシー産業の現状と背景 1 わが国のタクシー事業の現状 (1) 移動需要の動向と背景 (2) タクシーサービスの供給の推移 2 わが国のタクシー事業の特徴 3 タクシー分野への新規参入に向けた動き (1) 戦後の新免増車 (2) 白タク行為をめぐる動き (3) 軽貨物車タクシーの登場 (4) 運転代行業との競合 4 規制緩和に向けた動き 5 「適正化・活性化特別措置法」の施行
第2章 東京のタクシーの現状と背景 1 東京のタクシー事業の現状 (1) 移動需要の動向と背景 (2) タクシーサービスの供給の推移 2 東京のタクシーの特徴 3 歴史的経緯の概要
第3章 都市部のタクシーの現状と背景 1 都市部のタクシー事業の現状 (1) 移動需要の動向と背景 (2) タクシーサービスの供給の推移 2 都市部のタクシーの特徴 (1) 大阪地域の事例 (2) 仙台市の事例
第4章 地方部・過疎地のタクシーの現状と背景 1 地方部のタクシー事業の現状 (1) 移動需要の動向と背景 (2) タクシーサービスの供給の推移 2 地方部のタクシーの特徴 3 自家用車の公共的利用 (1) 1951年の道路運送法 (2) 乗合バスの状況と2006年の道路運送法改正 (3) 自家用有償旅客運送制度の概説 (4) 自家用自動車の活用拡大(国家戦略特区法) 4 地域公共交通活性化のための支援策や制度の概要 (1) 地域公共交通活性化・再生法 (2) 交通政策基本法 (3) 改正地域公共交通活性化再生法 5 タクシー業界・行政等の対応 (1) 地域公共交通活性化事例導入の状況 (2) 地域公共交通活性化事例の交通モードの導入状況 (3) 交通政策の変遷に伴う交通モードの導入状況の変化 (4) 人口の少ない地域における交通モードの導入状況
第5章 諸外国のタクシー市場と政策 1 ニューヨーク (1) アメリカの規制の概史 (2) ニューヨーク市のタクシー市場の現状 (3) 新規参入とその影響 (4) アプリがもたらした変化 2 スウェーデンのタクシー政策 (1) スウェーデンの政治と規制改革 (2) スウェーデン固有の事情 (3) タクシー事業の自由化とその成果 3 タイのタクシー政策 (1) タイの経済発展とモータリゼーション (2) バンコクのタクシー 4 テクノロジーの進展が規制のあり方を変える 第U部 現状分析編
第6章 タクシーの需要はなぜ減っているのか 1 タクシーの営業形態 2 タクシー需要に影響を与える要因からみたタクシー需要の減少理由 (1) タクシー運賃が需要に与える影響 (2) 家計支出と企業活動 (3)その他の外部要因 3 タクシー需要拡大に向けた施策 (1) 利用者ニーズに応える運賃体系・水準の見直し (2) タクシーサービスの質の向上
第7章 タクシー事業の供給構造 1 タクシー事業における「供給」 (1) タクシー事業で提供されるもの (2) 供給量 (3) 供給量に関する規制 2 収支の構造からみた事業者の供給戦略 (1) タクシー事業の収入と支出 (2) タクシーの供給における事業者の競争力 (3) 事業者のタクシー車両数戦略 (4) 事業者の参入と退出 3 経営規模からみた事業者の供給戦略 (1) 経営規模による事業収入 (2) 参入・増車の一形態:企業買収 (3) 分社化 (4) “適正”な経営規模 4 事業者間の連携 (1) 事業者間の連携のねらい (2) タクシー協会 (3) 無線グループ (4) 交通共済
第8章 タクシー労働をめぐる問題 1 規制緩和政策でタクシー運転者の賃金・労働条件はどうなったか (1) 交通労働の特徴 (2) 高齢化、非正規雇用化の進むタクシー運転者 (3) 歩合制賃金と低迷する賃金水準 (4) 働き方と健康をめぐる問題 2 労働政策・労働規制の現状と課題 (1) 規制緩和政策で社会的規制はどう論じられてきたか (2) 求められる労働規制の強化
第9章 個人タクシーと法人タクシーの共存 1 個人タクシー誕生の経緯 2 個人タクシー台数の推移 3 個人タクシーの意義と課題 (1) モチベーション確保と高齢化問題 (2) サービス品質の維持と個人タクシー (3) 安定供給と個人タクシー
第V部 政策分析編
第10章 タクシー事業はどのような法律によって規制されているか 1 道路運送法改正による規制緩和 (1) 新規参入、増車などに対する規制の緩和 (2) 運賃に対する規制の緩和 2 供給過剰対策を中心とする規制強化の動き (1) 通達に基づく減車勧奨・増車抑制策 (2) タクシー業務適正化特別措置法 3 特別措置法に基づく再規制の動き (1) 交通政策審議会答申(2008年) (2) タクシー適正化活性化特別措置法(2009年) (3) 改正タクシー適正化活性化特別措置法(2013年) 4 規制緩和から再規制に至る規制枠組みの全体像 5 タクシー事業の再規制をめぐる近年の裁判例 (1) 乗務距離規制をめぐる裁判例 (2) 公定幅運賃をめぐる裁判例 6 タクシー事業と独占禁止政策 (1) 新潟交通圏タクシー価格カルテル事件 (2) タクシー事業関連法と独禁法
第11章 タクシーの機能と役割 1 公共交通機関としてのタクシー (1) 公共交通機関の定義とタクシー (2) タクシー事業における公共性の是非 (3) タクシーにかかわる規制 2 タクシーの役割と新サービス (1) 禁煙タクシーをめぐる議論からみる新規サービスの課題 (2) 乗合タクシー (3) 介護タクシー、福祉タクシーなど福祉目的のサービス (4) 観光タクシー (5) その他のサービス 3 公共交通輸送におけるタクシーの役割
第12章 タクシーの台数はどう適正化されるのか 1 規制の変化はタクシー台数をどう変えたのか (1) データからみるタクシー市場の規制の効果 (2) 実証分析からみるタクシー市場の規制の効果 2 需要調整規制の経済学的意義 (1) なぜ政府がタクシー台数を決めるのか (2) 過当競争とは何か (3) 運転手の賃金を守るべきか (4) 道路や駅前広場の混雑 (5) 競争と安全性 (6) 運賃と競争 (7) 政府はタクシーの台数を規制するべきか 3 政府は適切にタクシーの台数を決められるのか (1) 適正車両数の算定式 (2) タクシーの台数規制の問題 (3) タクシーの参入規制の問題 (4) 最低車両数の問題 4 退出を促す事後規制
第13章 タクシー運賃の攻防 1 多様で複雑なタクシー運賃・料金 2 なぜタクシー運賃は規制されるのか 3 法律は運賃をどのように規定しているのか (1) 道路運送法はどのようにタクシー運賃を規定しているか (2) 運賃規制はどのように行われてきたか 4 東京の運賃はどう変わってきたか 5 タクシー運賃は不当に高いのか (1) 運賃の高低の判断基準:高いとも安いとも簡単には言えない (2) 総括原価の算定と実際の運用:査定は厳しくなされる (3) 2007年の運賃改定の含意:運転手の待遇は改善されない (4) 2007年の運賃改定をめぐる論争:事業者・自動車局 vs. 規制緩和派 (5) 上限運賃制の政策的含意:なぜ同じサービスなのに値引くのか 6 初乗距離短縮による運賃引下げのインパクト ――400円タクシーの政治経済学 (1) 初乗り運賃・ターミナルチャージはどのように正当化されるのか (2) 高すぎるタクシーの初乗り運賃 (3) なぜ東京ではいち早く初乗り運賃組替えが実現できたのか
第14章 タクシー事業と安全の確保 1 タクシーサービスと安全 2 タクシー事故の現状と特徴 (1) タクシー事故の現状 (2) タクシー事故の特徴 3 規制緩和とタクシーの安全 4 タクシー事業における安全確保の方向性
第15章 ICTで変わるタクシーサービスの供給のかたち 1 ICTの進展がタクシー産業に与える変化と影響 (1) ICTで変わるサービス生産のかたち (2) ICTで変わるタクシーサービス生産のかたち (3) ICTの進展とマッチングサービス 2 生産の形態が変わることによって変化する規制の枠組み (1) 統合から分離への対応 (2) ICT進展による規制根拠の変化 (3) 新しいサービス生産形態への政策対応 3 ICTの進展によって安心安全の担保はどのように変化するか (1) ICTで変わる旅客運送サービスの情報の非対称性 (2) ICTの進展で流通する情報 (3) サービス品質の差異と競争 (4) ICTで変わる安心安全の担保 4 ICT進展によるさまざまな変化
第15章補論 ライドシェアとタクシーは何がちがうのか 1 ライドシェアをめぐって何を議論すべきなのか (1) ライドシェアの魅力:なぜ盛り上がっているのか (2) ライドシェアの問題点:安全性に議論が集中している (3) 新経連の課題克服策:安全なライドシェアを強調する (4) 重大であるが議論されない「公共交通」としての機能 2 自動運転が実現する陸上公共交通システムの完成
第W部 政策提言編
第16章 日本のタクシー政策はなぜ歪むのか 1 タクシー政策は誰がどのように決めているのか (1) なぜ「国」が所掌するのか (2) 横槍を入れることができるのは誰か (3) そもそも法律はどう立案されているのか 2 2007年の東京地区の運賃改定はなぜ迷走したか 3 東京地区はなぜ改正特措法下の特定地域から外されたのか (1) 指定基準を設定する前にも多くの手続きが必要 (2) 改正タクシー特措法には多くの附帯決議がなされた (3) 規制改革会議はどのように関与したのか (4) 採用された指定基準の適用結果は何を意味するのか 4 タクシー政策の本質的な問題とは (1) 手段と目的の取り違え:目的は意識されない (2) 当事者意識の欠落:現場は遠い (3) 現場は多様だが、政策は一律にしておきたい
第17章 「一律政策」をやめよ 1 二つのモデル:競争は有効か否か (1) 競争は十分に機能するはず (2) 現実は多様であり、単純ではない 2 「場」の整理――どの「場」で競争させるか (1) 輸送サービス市場 (2) 設備市場 (3) 労働市場 (4) 資本市場 (5) 政策立案 3 分野分割の提案:こちらでは競争、あちらでは規制
第18章 政策決定は地域主導でなければならない 1 国による一元的タクシー政策の限界 2 中途半端な意思決定の分権化 (1) タクシーの特定地域協議会 (2) 地域公共交通活性化再生法による取組み 3 地方が担う地域公共政策によってタクシーの活性化を (1) タクシー政策は誰が決定するべきか (2) 政策目的を確立することから始める 4 具体的な政策提言――東京地区を例として (1) タクシー独立行政委員会の設置 (2) 確固たるタクシー政策の目的設定 (3) タクシーとハイヤーの分野分割
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