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人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか
四六判/仮フランス装/336頁
初版年月日:2017/04/20
ISBN:
978-4-7664-2407-2
 
(4-7664-2407-7)
Cコード:C0033
税込価格:2,200円
人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか

目次

     
         
 基本データ 人手不足と賃金停滞   玄田有史・深井太洋

 序  問いの背景   玄田有史

第1章 人手不足なのに賃金が上がらない三つの理由   近藤絢子
 ポイント 【規制】 【需給】 【行動】
  1 求人増加の異なる背景
  2 医療・福祉:介護報酬制度による介護職の賃金抑制
  3 「人手不足イコール労働力に対する超過需要」ではない可能性
  4 名目賃金の下方硬直性の裏返し
  5 複合的な要因解明が必要

第2章 賃上げについての経営側の考えとその背景   小倉一哉
 ポイント 【制度】
  1 賃上げ率と賞与・一時金の動向
  2 経団連の主張と主な特徴
  3 成果主義の普及
  4 経営環境の変化
  5 今後も不透明は漂う

第3章 規制を緩和しても賃金は上がらない
――バス運転手の事例から   阿部正浩
 ポイント 【規制】 【制度】
  1 バス需要の増加と深刻な運転手の人手不足問題
  2 バス運転手の仕事と労働市場の特徴
  3 バス運転手の賃金構造の変化
  4 なぜ賃金水準は下がったのか
  5 バス運転手の労働市場の問題か

第4章 今も続いている就職氷河期の影響   黒田啓太
 ポイント 【年齢】 【正規】 【能開】
  1 「就職氷河期世代」への注目
  2 同一年齢で見る世代間賃金格差
  (1) 学歴別・性別によるちがい
  (2) 雇用形態別の給与額
  (3) 給与額増減の要因分解
  (4) 「就職氷河期世代」の労働者数に占める割合について
  3 「就職氷河期世代」の賃金が低い理由
  4 氷河期世代の悲劇

第5章 給与の下方硬直性がもたらす上方硬直性   山本 勲・黒田祥子
 ポイント 【行動】
  1 下方硬直性によって生じ得る名目賃金の上方硬直性
  2 名目賃金の下方硬直性が生じる理由とエビデンス
  3 企業のパネルデータを用いた検証
  (1) 利用するデータと検証方法
  (2) 過去の賃金カットと賃上げの状況
  (3) 名目賃金の下方硬直性と上方硬直性の関係
  4 日本の賃金変動の特徴と政策的な含意

第6章 人材育成力の低下による「分厚い中間層」の崩壊   梅崎 修
 ポイント 【制度】 【能開】
  1 「欲しい人材」と「働きたい人材」のズレ
  2 「分厚い中間層」の崩壊
  3 New Deal at Workのジレンマ
  4 企業内OJTの衰退
  (1) 長期競争よりも短期競争
  (2) 経験の場の消失
  5 解決策は実現可能な希望なのか

第7章 人手不足と賃金停滞の並存は経済理論で説明できる   川口大司・原ひろみ
 ポイント 【正規】 【需給】 【能開】
  1 問題意識――パズルは存在するか
  2 企業の賃金改定の状況とその理由
  3 労働者の構成変化が平均賃金に与える影響
  4 女性・高齢者による弾力的な労働供給
  5 労働供給構造の転換点と賃金上昇
  6 賃金が上昇する経済環境を整えるために――人的資本投資の強化

第8章 サーチ=マッチング・モデルと行動経済学から考える賃金停滞   佐々木勝
 ポイント 【需給】 【行動】
  1 日本だけの問題なのか
  2 標準モデルから予想できること
  3 モデルは循環的特性を再現できるか
  4 なぜ賃金調整は硬直的なのか
  5 賃金硬直性の帰結と背景

第9章 家計調査等から探る賃金低迷の理由――企業負担の増大   大島敬士・佐藤朋彦
 ポイント 【年齢】 【正規】 【制度】
  1 世帯の側からの視点
  2 世帯主の勤め先収入
  3 世帯主の年齢分布
  4 高齢化・非正規化の影響
  5 増加する賃金以外の雇主負担
  (1) 上昇する社会保険料率
  (2) 非消費支出比率の上昇
  (3) 世帯主の勤め先収入
  (4) 1人あたり雇主の社会負担
  6 社会保険料率等の引き上げの影響

第10章 国際競争がサービス業の賃金を抑えたのか   塩路悦朗
 ポイント 【規制】 【需給】
  1 高齢化社会と「あり得たはずのもう一つの現実」
  2 パズルは本当にパズルなのか――国際競争に注目する理由
  3 イベント分析の対象としてのリーマン・ショック
  4 検証1:求職者は対人サービス部門に押し寄せたか
  5 検証2:求職者の波に対人サービス賃金は反応したか
  6 検証結果のまとめ
  7 労働市場で何が起きているのか? 図解
  8 今後の課題:なぜ対人サービス賃金は硬直的なのか

第11章 賃金が上がらないのは複合的な要因による   太田聰一
 ポイント 【正規】 【需給】 【年齢】
  1 原因は一つではない
  2 非正規雇用者の増大
  3 賃金版フィリップス曲線から
  4 誰の賃金が上がっていないのか
  5 議論――「世代リスク」にどう対処するか

第12章 マクロ経済からみる労働需給と賃金の関係   中井雅之
 ポイント 【需給】 【正規】
  1 日本的雇用慣行の特徴から労働需給と賃金の関係を考える
  2 労働需給と賃金は必ずしも連動しない
  3 需給変動と内部・外部労働市場
  4 雇用の非正規化と一般の時間あたり賃金の動向
  5 労働市場の課題と労働政策

第13章 賃金表の変化から考える賃金が上がりにくい理由   西村 純
 ポイント 【制度】
  1 賃金の決まり方
  (1) 賃金表
  (2) 三つの要素
  2 昇給の仕組み(三つの方法)
  3 昇給額決定の実際
  (1) 「積み上げ型」の賃金表
  (2) 「ゾーン別昇給表」の登場
  (3) ベースアップ
  (4)賃金表変化の背景
  4 賃金を上げるために

第14章 非正規増加と賃金下方硬直の影響についての理論的考察   加藤 涼
 ポイント 【正規】 【年齢】 【行動】
  1 なぜ賃金は上がりにくくなったのか――問題の所在
  2 賃金が硬直的な下での正規・非正規の二部門モデル
  3 賃金の下方硬直性と上方硬直性
  4 人的資本への過少投資と賃金の上方硬直性

第15章 社会学から考える非正規雇用の低賃金とその変容   有田 伸
 ポイント 【正規】
  1 社会学と国際比較の視点から
  2 日本の非正規雇用とは何か
  (1) 正規/非正規雇用間の賃金格差
  (2) 賃金格差の強い「標準性」
  (3) 非正規雇用の補捉方法の特徴
  3 なぜ日本の非正規雇用の賃金は低いのか
  (1) 格差の正当化ロジックへの着目
  (2) 企業による生活保障システムと格差の正当化
  (3) もう一つの正当化ロジックと都合のよい使い分け
  4 非正規雇用の静かな変容
  5 なぜ賃金が上がらないのか――非正規雇用に着目して考える

第16章 賃金は本当に上がっていないのか――疑似パネルによる検証   上野有子・神林龍
 ポイント 【需給】 【年齢】
  1 上がらない賃金?
  2 賃金センサス疑似パネルからみた名目賃金変化率
  3 賃金総額の変化の分解
  4 結論――上がらない賃金と人手不足傾向の解釈

結び 総括――人手不足期に賃金が上がらなかった理由   玄田有史

あとがき

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