ユリアヌスの信仰世界

はじめに ―― 天変地異とユリアヌス
第1章 万華鏡のなかの哲人皇帝 1 ユリアヌスの生涯と著作 2 物語を生む物語 ―― 史料と解釈史 3 研究の視角と本書の問題意識 4 テクニカルタームの問題 ―― 「ヘレニズム」「異教」「非理性」の相のもとにユリアヌスを観察することは適切か
第2章 幻影の文人共同体を求めて ―― 単独統治期以前のユリアヌスの精神的形成 1 光と闇と「穢れた血」 ―― ユリアヌスの家門意識と半生への回顧 2 「ヘラース」体験の萌芽と「よきキリスト教徒」としてのユリアヌス 3 先行する思想 I ―― 330年代から350年代までの教会情勢 4 先行する思想 II ―― 「世界市民」としての君主像とイアンブリコスの祭儀観
第3章 理想の潰走 ―― ユリアヌスの宗教政策とその具現化の過程 1 哲人たちの宮廷 2 勅法のコスモロジー 3 具現化の過程 I ―― 碑文にみる宗教復興の実態 4 具現化の過程 II ―― 都市への関心 5 具現化の過程 III ―― キリスト教徒との対立のエピソード 6 具現化の過程 IV ―― 帝国東方の小都市と教会史家の叙述 7 ユリアヌスの宗教政策の暴力性
第4章 ユリアヌスの信仰世界 I ―― 現状の認識 悪しきミュートスを語る者たち 1 「堕落したヘレネス」の祝祭観 2 通俗哲学者としての「犬儒者」への疑念 3 キリスト教への幻滅 4 原点への回帰 5 展望 ―― ミュートスの解釈のゆくえ
第5章 ユリアヌスの信仰世界 II ―― 理想国家の宗教 1 宇宙のなかの神々と人間 2 「ローマはギリシアの友邦である」 ―― 宗教地誌と哲人統治国家の宗教 3 理想国家の教導者としての神官 4 理想国家の宗教と修養、そのはかなさ
第6章 理想化されたギリシアへの当惑 ―― ナジアンゾスのグレゴリオスのユリアヌス批判 1 作品の背景と研究史 2 『ユリアヌス駁論』第一弁論・第二弁論の梗概 3 ユリアヌスの信仰世界と理想国家の宗教 ―― 再訪 4 ユリアヌスによって理想化された「ヘラース」像への疑義 5 ユリアヌスの「愛智」への当惑 6 展望
おわりに ―― 万華鏡のなかの哲人皇帝、ふたたび 1 「ヘラース」への憧れと挫折・再訪 2 キリスト教と「堕落した愛智」「堕落したヘレネス」への疑義から発するもの 3 研究の展望 ―― 古代末期における宗教概念をめぐる諸問題 4 エピローグ ―― 「軽率な君主にも神は恩恵を与えた」
あとがき 参考文献 註 索引
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