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目次
金融政策の「誤解」
四六判/上製/304頁
初版年月日:2016/07/25
ISBN:
978-4-7664-2356-3
 
(4-7664-2356-9)
Cコード:C3033
税込価格:2,750円
金融政策の「誤解」
―― “壮大な実験”の成果と限界

目次

序 章 QQEの実験から見えてきたもの
  QQEは「短期決戦」だった / 長期戦の戦局は悪化していった / マイナス金利導入:起死
  回生策も不発 / QQEが明らかにしたこと、隠していること / 柔軟で透明な政策運営を

第1章 非伝統的金融政策:私論
 1 「普遍化」する非伝統的金融政策
  「全く次元のちがう金融緩和」の衝撃 / 非伝統的金融政策の分類 / 非伝統的金融緩和
  の歴史:日銀、FRB、ECBのイノベーション / リーマン・ショックとFRB / 欧州中央銀行(E
  CB)の苦悩 / マイナス金利というイノベーション / 「非伝統的金融政策=量的緩和」では
  ない
 2 QQEの実験的性格
  QQEの効果を理論的に考える / マネタリーベースの増量 / 信用緩和 / 長期金利の押
  し下げ / 現実の金融市場はちがう? / 意味深長なバーナンキ発言
 3 非伝統的金融政策の倫理的側面
  嘘をつくことは許されるか / 国民負担の問題
 【コラム】 日銀の作戦:なぜQQEは「バズーカ」になったのか

第2章 QQEの成果と誤算
 1 QQEがもたらした成果
  (1)大幅な円安と株高
   野党党首だったから許された円安誘導発言 / 反転上昇の兆しがあった株価
  (2)デフレ脱却の実現
   「デフレ脱却」未達感の理由 / デフレ脱却の条件はクリアできたか
 2 QQE(アベノミクス)の誤算
  (1)「2年で2%」の未達成
   「インフレ目標2%」は妥当な水準 / 三つの留意点
  (2)経済成長率の低迷
   「長期低迷の主因はデフレ」とは限らない / 最大のサプライズは輸出の伸び悩み / 公
   共投資と駆け込み需要による攪乱
  (3)人手不足時代の到来
   うれしい誤算 / 賃金上昇の実態 / 労働集約型産業で人手不足が深刻化
 3 QQEが明らかにした課題:潜在成長率の低下
  上がらない生産性 / エレクトロニクス産業の不振が生産性押し下げ要因か / 需給
  ギャップの推計をめぐって / 資本ストックの不稼働問題 / デフレ脱却は潜在成長
  率低下のおかげ?
 4 ハロウィン緩和の「誤射」
  不可解な緩和決定 / 「誤射」の結末:トリクル・ダウン戦略の破綻 / ハロウィン・バズー
  カはミッドウェー海戦だったのか
 【コラム】 人口動態、過剰貯蓄とデフレ:「長期停滞論」再考

第3章 「リフレ派」の錯誤
 1 「リフレ派」的思考法:主観主義・楽観主義・決断主義
  「リフレ派」を定義する / 「リフレ派」の主張は整合的か / リフレ派の困った議論@:後出
  しジャンケン / リフレ派の困った議論A:精神論
 2 期待一本槍の政策論:主観主義の錯誤
  リフレ派の大本はマネタリズム / 自然利子率の概念 / テイラー・ルール / マネタリー
  ベースを金融調節の軸に据えるのは的外れ / 資産価格への影響を考える
 3 さまざまな「期待」:市場と企業・消費者の温度差
  円安・株高のはじまりは外国人投資家 / 金融市場と実物経済の非対称性
 4 成長余力の過大評価:楽観主義の錯誤
  「日本経済は強い」という主張の根拠はどこにある? / リフレ派の空想的楽観論
 5 「出口」なき大胆な金融緩和:決断主義の錯誤
  「出口」をいつまでも意識しないでよいのか / 日本に潜む「出口」までの困難 / ジリ貧か
  ドカ貧か
 【コラム】 マクロ政策で潜在成長率の引き上げは可能か

第4章 デフレ・マインドとの闘い
 1 「デフレ・マインド」とは何か
  企業や家計の消極的な行動様式 / 賃上げに及び腰の労働組合 / 「学習された悲観主
  義」という日本病 / 三度の金融危機が慎重化を促進
 2 「日本的雇用」とデフレ・マインド
  いまだ「世紀末の悪夢」から抜け出せず / メンバーシップ型雇用の呪縛 / イノベーション
  の波に乗り遅れる日本企業
 3 物価の「アンカー」
  「錨」(アンカー)としての社会の基底に根づくもの / 安倍政権の逆所得政策
 4 マネタリーベースの誤解
  マネタリーベースの意味が大きく変わった / 通貨発行益を考える / ヘリコプター・マ
  ネー?
 5 QQEの行き詰まり
  市場も怪しい雲行きに気づき始めた / 国債大量買入れの限界
 6 短期決戦から持久戦へ:マイナス金利の導入
  金利政策への回帰 / 政策の枠組み変更の意義
 7 マイナス金利政策の功罪
  マイナス金利政策の効果と副作用 / マイナス幅拡大の制約 / マイナス金利付きQQEの
  問題点
 【コラム】 キャリー・トレードとしての量的緩和

第5章 「出口」をどう探るか
 1 「出口」の必須条件:財政の維持可能性への市場の信認
  出口で何が起こるのか / 長期金利上昇と金融システムの安定性 / 欧州債務危機の教
  訓 / 「出口」の成否を決めるもの
 2 「成長頼み」の財政再建計画
  あまりに遠い財政健全化 / 債務残高・名目GDP比率について / 税収弾性値をめぐる議
  論
 3 経済成長優先の幻想
  潜在成長率の低下がネックとなる / 消費増税の影響評価
 4 財政健全化の柱は社会保障改革
  消費税率アップだけでは財政健全化は達成できない / 社会保障改革の本丸は医療・介
  護分野 / 成長戦略の役割
 5 QQEは市場を殺す政策
  国債を国内貯蓄だけで吸収できなくなる日が近づいている / 市場からの警告が聞こえな
  い / マイナス金利政策への純化を
 6 市場とのコミュニケーションの再建を
  日銀の発信情報はもう信じられない / ピーターパンの誤解:「王様は裸だ!」
 【コラム】 金融抑圧は可能なのか

あとがき
参考文献
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