プルーストの黙示録
『失われた時を求めて』と第一次世界大戦
はじめに 戦争文学としての『失われた時を求めて』 / 文化史の観点からプルーストを読む
序 章 戦時中のプルースト氏 なぜ私信を読むのか 一九一四年 平和を望む / ドイツ音楽を愛し続ける / 「最初の戦争文学」 一九一五年 「戦前派」のレッテルを貼られて / 「偽りの愛国心」と「本当の『愛国的な』感動」 / 教会の破壊 / 「時期尚早」な戦争文学を「校正」する 一九一六年 ヴェルダンのほうへ / ガリマールのほうへ / 『砲火』から遠く離れて 一九一七年 悲しみと日々、楽しみと日々 / 「すばらしい黙示録」 / 戦時下の前衛芸術 一九一八年 リッツからマリニーへ / 戦時下のサウンドスケープ / 蜜蜂としての芸術家の肖像 / 書簡から小説へ
第一章 パリ空襲と「ワルキューレ」 プルーストと「戦争文化」 / パリ空襲をめぐるフィクション / シャルリュス男爵、倒錯と 反転 / サン = ルー、空襲の美学化と政治化 / 飛行士と同性愛
第二章 オリエント化するパリ パリと「パリ小説」の変貌 / オリエンタリズムの絵画と同性愛の主題 / 消えたロティ、 「不可思議なオリエントの幻像」 / パリの空、「トルコ石の色合いをした海」 / カルパッ チオ、「異国情緒あふれる架空の都市」 / セーヌとボスフォラス、「三日月という 東方 の徴」 / セネガル狙撃兵とアングル / 「千夜一夜」の蜃気楼とメソポタミア戦役
第三章 「私」の愛国心と芸術観 あいまいな作中の「私」 / 「愛国芸術」への理論的な反駁 / 作者が語り手の声を借り るとき / 「私」のドイツ嫌い / 「私」という国家の「細胞」 / 「心理的洞察力の欠如」、 「当事者」と「傍観者」のジレンマ
第四章 「復員文学」における暴力 暴力への無関心? / 「復員文学」とは何か / 暴力をめぐる喜劇的ヴィジョン / 暴力をめぐるモラリスト的・劇的ヴィジョン / 暴力をめぐる耽美的ヴィジョン / 「前線からの書簡」という新ジャンルの登場 / 「印象主義」と愛国心 / ふたつの利己主義
第五章 軍事戦略と動員の力学 機動性と不動性 / プロパガンダ論とサン = タンドレ = デ = シャン神話 / 同性愛、愛国心、「生存環境」 第六章 二十世紀の『戦争と平和』 ナポレオン戦争から第一次世界大戦へ / 論敵としてのトルストイ / 模範、分身としてのトルストイ / ナポレオン、ヒンデンブルク、ヴィルヘルム二世 / プルーストのトルストイ的側面 / 樹木の観照
おわりに
註 あとがき 初出一覧 参考文献一覧 人名索引・作品名索引
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