大正期日本法学とスイス法
序 論 一 近代日本におけるスイスについての概観 二 法学領域における動向 三 本書の考察対象とその方法
第一編 近代日本とスイスの法学交流
第一章 ルイ・アドルフ・ブリデル(Louis Adolphe Bridel) 一 はじめに 二 ブリデルの生涯とその業績 1 来日までの経歴 2 ブリデル・東京帝国大学間の雇用契約をめぐる交渉 3 来日の理由 三 ブリデルの日本における活動 ―― ブリデル・フーバー書簡からの考察 四 スイス民法典の紹介 1 講 義 (一) 東京帝国大学「仏蘭西法」及び「独逸法」講義 (二) 明治法律学校「泰西比較法制論」及び「法理学」講義 (三) ブリデルの講義内容の変化 2 スイス民法典に関する書籍・冊子の配布 五 小 括 ―― ブリデルの活動の限界
第二章 穂積重遠 一 はじめに 二 穂積重遠の生涯と学風の点描 1 略 歴 2 法律を学ぶまでの経緯、家族法を専門領域として選択した理由 3 留学期に確立した学風 ―― 「社会学的研究」と「判例研究」 4 「法律」と「社会」とを歩み寄らせるための活動 三 穂積重遠とスイス 1 穂積重遠とスイス人法学者との出会い (一) 穂積重遠とブリデル (二) 穂積重遠とオイゲン・フーバー、そして日本人法学者との交流 2 穂積重遠のスイス民法への関心 (一) 「婚姻の解消」規定におけるスイス民法の参照 (二) 「親権」規定におけるスイス民法の参照 (三) 「家族制度」規定におけるスイス民法の参照 (四) 家族法以外にみられるスイス民法への関心 四 小 括 ―― 戦後民法改正へのまなざし
第二編 蘇る太政官布告 明治8年太政官第103号布告裁判事務心得第3条とスイス民法典第1条第2項
第三章 日本の条理論とスイス民法 一 現代の条理理解 二 「忘却」「再自覚」を辿った太政官布告とスイス民法 三 第二編の課題と方法
第四章 制定時の太政官布告 一 明治8年太政官第103号布告裁判事務心得第3条 二 裁判事務心得の制定過程 三 裁判事務心得の由来について 四 制定時の裁判事務心得にみられる「条理」の位置づけ
第五章 裁判事務心得第3条の消滅? 一 法令集にみる裁判事務心得の効力の可否 二 裁判事務心得の「消滅」の意義 1 大日本帝国憲法 2 裁判所構成法(明治23年法律第6号) 3 民事訴訟法(明治23年法律第29号) 4 旧民法証拠編第9条 5 法例(明治23年10月6日法律第97号 / 明治31年6月21日法律第10号)
第六章 消滅後の太政官布告 ―― 「忘却」から「再自覚」へ 一 明治23年「旧民法典公布」から明治31年「明治民法典施行」まで(前半期) 二 明治31年「明治民法典施行」から明治末年まで(後半期)
第七章 「再自覚」された太政官布告 一 民法学領域における「条理」論 1 松本烝治「民法ノ法源」(明治43年) 2 石坂音四郎「法律ノ解釈及ヒ適用ニ就キテ」(明治45年) 3 富井政章「自由法説ノ價値」(大正4年) 4 杉山直治郎「『デュギュイ』ノ權利否認論ノ批判」(大正5年) 5 穂積重遠『民法総論』(大正11年) 6 我妻栄『民法總則』(昭和5年) 7 末弘厳太郎「法源としての条理」(昭和24年) 二 比較法学領域における「条理」論 1 穂積陳重『法律進化論 原形論』(大正13年) 2 杉山直治郎「明治八年布告第一〇三號裁判事務心得と私法法源」(昭和6・7年) (一) 研究の概要 (二) 裁判事務心得第3条の比較法研究 (三) 杉山の問題点
第八章 穂積重遠の「条理」解釈 ―― 大正4年1月26日大審院民事連合部判決「婚姻予約有効判決」からの一考察 一 法律婚主義対事実婚主義 1 太政官期法令、旧民法及び明治民法典に見られる「婚姻の成立」規定 2 明治民法典制定後の社会事情 3 婚姻予約有効判決(大正4年1月26日大審院民事連合部判決) 二 婚姻予約有効判決をめぐる穂積重遠の見解と「条理」論 1 穂積重遠における内縁問題の基本認識とその解決の方向性 2 穂積重遠による「婚姻予約有効判決」の評価 3 穂積重遠の「条理」解釈 (一) 条理の根拠条文としての裁判事務心得第3条とスイス民法第1条第2項 (二) 条理と判例法の関連性 (三) 「条理」規定の機能 ―― 重遠の判例研究からの分析 (四) 条理裁判と民法改正 (五) 条理裁判の立法的承認 三 「条理」を重視する穂積重遠の真の目的
第九章 日本近代法学における「条理」理解の転換
結 論
補 論 穂積重遠の法理論 ―― 法律進化論を中心として 一 法律進化論と「共同生活規範としての法律」 二 法律進化論と「法律と道徳」 1 法律進化論からみる重遠の「法律と道徳」 2 具体的な法律問題にみる「法律と道徳」との関係について (一) 法律と道徳の分界 ―― 「家族法」「家族制度」における「法律と道徳」との関係 (二) 法律の道徳化 ―― 信義誠実の原則と権利濫用の禁止 (三) 「法律と道徳の交渉」としての調停制度
資料 穂積重遠の判例研究一覧 参考文献 初出一覧 あとがき 事項・人名索引
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