転形期の歴史叙述
縁起 巡礼、その空間と物語

はじめに
第一章 系図の言説 一 系図の世紀 二 延慶本付載「平氏系図」 三 「平氏系図」の嫡流観 四 「平氏系図」の語る十三世紀 五 血脈学 六 系図と血脈―血脈学のための分類基準 七 系図と血脈の言説構造―〈拡散〉〈集約〉〈対置〉 八 系図と歴史/物語 小括 「中興」の位相 [補説 中世寺院の歴史学]
第二章 金仙寺観音講説話の系譜 一 『平家物語』の観音講説話 二 後補性の検討 三 「金仙寺」であること 四 観音講説話の利用 五 観音講説話の淵源に関する推論 小括 「ムカシ」の汎用性
第三章 『平家物語』の内と外―「異説」をめぐる考察 一 『平家物語』の「異説」 二 悪七兵衛景清の後日談 三 平家残党説話 四 景清伝承と寺社 五 八島語り 六 「嗣信最期」後日談 七 屋島寺の勧進唱導 八 屋島寺と志度寺 九 「異説」のトポス 小括 〈平家物語〉論
第四章 文覚発心説話考――〈源平〉、そして「昔」と「今」 一 文覚発心説話の構成 二 〈源平〉史観――「上西門院」 三 『遠藤系図』の物語 四 転形期とみなされる清和朝――『伊勢物語』の時代 五 『伊勢物語』と『平家物語』 六 『伊勢物語』と『宝物集』 七 「昔」と「今」 小括 延慶本「文覚発心説話」の意味
第五章 仏舎利相承説と転形期の歴史叙述 一 鳥羽宝蔵の宝珠 二 四条家と宝珠 三 〈家〉をめぐる仏舎利相承説――九条家と大乗院 四 仏舎利相承説と鎌倉期の天皇家 小括 舎利相承説と軍記物語、二題
第六章 『南都巡礼記』の基礎的研究 一 『南都巡礼記』 二 伝本系統に関する先論 三 「春日社系統」の伝本群 四 前田家本の位置づけと「流布本系統」 五 流布本系統と縁起集など 六 神宮文庫蔵『〔南都巡礼記〕』 七 大東急本・神宮文庫本の近縁性 八 神宮文庫本の位相 九 阪本龍門文庫蔵『南都山階寺諸寺諸院私記』 小括 神宮文庫本の編集意識
第七章 治承回禄と縁起説――興福寺縁起の再生 一 治承回禄 二 『平家物語』の興福寺炎上 三 仏体の継続と断絶 四 炎上言説の縁起化 五 西金堂縁起説 六 「寺家注文」と「山階流記」 七 大谷大学図書館蔵『興福寺縁起』所引「西金堂縁記」 小括 治承回禄と縁起の再生 [補説 堂衆・堂童子と縁起]
第八章 珠取説話の伝承圏――志度寺縁起の構造と南都・律 一 志度寺縁起をめぐる視角 二 広義の興福寺縁起と兼実 三 宝珠・舎利・律 四 珠取説話と律 小括 志度寺縁起系≠ニ語り手の身体
第九章 建久二年の南都巡礼と説話 一 建久度南都巡礼 二 建久二年の巡礼行程 三 智光曼荼羅とその説話 四 昔ノ跡 五 縁起を語る「声」――清海曼荼羅・當麻曼荼羅 六 イニシヘとの結縁 小括 結縁と空間的類従
第十章 歴史叙述と巡礼・巡礼記――「中興」論 一 巡礼記の三つの回路 二 巡礼記研究と隣接諸学 三 南都巡礼記史 四 『七大寺巡礼私記』と歌書――六条藤家歌学 五 巡礼記享受の諸相 六 「中興」論 小括 転形期と歴史叙述
後記
[資料篇] 1 神宮文庫蔵『〔南都巡礼記〕』(『類聚神祇本源』紙背)解題・翻刻 2 阪本龍門文庫蔵『南都山階寺諸寺諸院私記』略書誌・翻刻 3 天理図書館蔵『大和寺集記』解題・翻刻 4 日本大学総合学術情報センター蔵『後鳥羽院御順礼記』解題・翻刻 5 大谷大学図書館蔵『興福寺縁起』略書誌・翻刻 6 小野随心院蔵血脈類、解題・翻刻
索引
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