日本にはずっと愛着を持ち続けているので、回想録『NO TIME TO LOSE』の日本語版刊行には特別な思いがあります。初めて訪れたのは1979年、京都で国際感染症学会が開かれたときでした。私はすでにエボラウイルス発見者の一人となっていましたが、1980年代の初めにもっと大きなパンデミック(世界的大流行)が起き、そのHIV/エイズの流行と生涯をかけて闘うことになるなどとは想像もしていませんでした。
1949年ベルギー生まれ。1976年、ヘント大学でM. D. 医学博士、1980年にアントワープ大学でPh. D(微生物学)取得。アントワープ熱帯医学研究所の微生物免疫学教授等を経て、1995年から2008年まで国連合同エイズ計画(UNAIDS)初代事務局長。2010年から現職。常に活動の拠点をアフリカに置き、エボラ出血熱、HIV/エイズをはじめとする感染症に関する研究を行う。またUNAIDS事務局長としてHIVの世界的流行に対する国際的関心を惹起し、地球規模での対策を実現させるうえで中心的役割を担った。2013年、アフリカでの医学研究・医療活動の分野において顕著な功績を挙げた者に贈られる「野口英世アフリカ賞」(第2回)を受賞。