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ポール・ラングフォード
(オックスフォード大学リンカーン・カレッジ校長) |
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日本と似て、グレート・ブリテンとアイルランドは、相対的に孤立した社会と文化を育んできた長い歴史をもつ島嶼である。島の先住民たちは、1000年以上にわたって、ローマ人、アングロ・サクソン人、ヴァイキングの人たち、そしてノルマン人の継続的かつ波状的な侵入にさらされてきた。にもかかわらず、そのような長きにわたる混乱は、次第に、政治、社会、そして文化において独特の型をこの島嶼に刻印していったのである。
『オックスフォード ブリテン諸島の歴史』は、紀元前55年から2001年までの2000年の歴史を簡略ながら包括的に扱っている。11人の編者と68人の著者が、見識豊かで、明晰で説得力のある技術を駆使して専門的知識を展開している。最終的な目的は、その歴史のなかで、いささか自意識過剰なまでに文明化されたヨーロッパ大陸と、より緊密なネットワークに絡め取られていく拡大する世界のあいだに取り込まれてしまった民集団の、複雑で個性的な集合体の変化と展開をとらえることであった。すべての国民は何がしかの風変わりな面をもっているものである。しかし、ブリテン諸島のひとびとの他者に関する関係における変奇さは2000年あまり注目されてこなかったのである。 |
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鶴島博和(熊本大学教授) |
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イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドは、長い時間をかけて、「ブリテン諸島」という運命共同体を形成してきた。そこには、支配と従属、独立と連帯の歴史のなかで、友情と敵意、憧れと侮蔑の感情が渦巻いてきた。しかし、いずれにせよ、従来「ブリテン諸島」の歴史は、19世紀の世界を支配したイギリス帝国の心臓部イングランド中心で描かれてきたのである。帝国の解体とヨーロッパ連合運動の進展のなかで、ブリテン諸島史を相対化し俯瞰する機運が高まってきている。『オックスフォード ブリテン諸島の歴史』全11巻は、こうした文脈のなかで書かれた、最初の専門的通史である。ひるがえって、我が国の歴史学界の状況を見ると、本格的なブリテン諸島の歴史に関する教科書は存在すらしていない。かかる状況を鑑みて、教育と研究のためのテキストを提供し、我が国におけるブリテン諸島史の研究水準の質の向上に貢献したい、これが翻訳刊行の意義と目的である。 |
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