ポスト・ウォー・シティズンシップの構想力

第1章 総論――ポスト・ウォー・シティズンシップ? 萩原能久 I 旧「市民社会論」 II 新「市民社会論」 1 アイデンティティ 2 ポスト・リベラル・デモクラシー 3 コスモポリタニズム 4 参加と連帯 5 反暴力 ・ ポスト・ウォー――戦争は終わった III 人間学としての政治学
第1部 市民とは何か 第2章 近代世界における公私関係の変容と政治の可能性 萩原能久 I 丸山眞男と近代的主体 II 思想史的スケッチ III 共同体と公共圏 IV 近代的主体の幻想と政治理論の未来
第3章 市民社会というヤヌス 有賀 誠 ・ 冷戦の終焉と市民社会の復権――フクヤマそして/あるいはパットナム ・ インテルメッツォ――閉ざす「安心」と開く「信頼」 ・ 再帰性としての近代――樋口陽一そして/あるいはギデンズ ・ 良い市民社会と悪い市民社会――ハーバーマスそして/あるいはブルデュー
第4章 立憲民主体制における市民的不服従の権利 鈴木正彦 序論 I 市民的不服従と政治的責務――問いの環境 II 市民的不服従の性格と定式 III 市民的不服従の権利 1 市民的不服従の法的権利は存在するのか 2 道徳上の理由から法に抵触する権利 3 ラズの見解――市民的不服従の権利は存在しない 4 ドゥオーキンの見解――権利論による市民的不服従の正当化 5 固有の権利としての市民的不服従 IV テストケース提示権としての市民的不服従の権利 結論 立憲民主体制における市民的不服従の位置付け
第2部 ポスト・ウォーの条件 第5章 東京裁判と戦後日本刑法学 フィリップ・オステン はじめに I 東京裁判の経緯および構成 II 犯罪構成要件 1 通例の戦争犯罪 2 人道に対する罪 3 平和に対する罪 III 日本刑法学の反応 1 軍国主義時代における刑法学の一断面 2 東京裁判に対する刑法学の対応 IV 小括 おわりに
第6章 カントの永遠平和論と現代 ――「新しい戦争」時代の世界市民 北村 治 はじめに――再び「いま、ここで」 I カントの時代と現代の国際社会 1 勢力均衡と国際法の矛盾 2 現代国際社会のカント的伝統 II 永遠平和論における世界市民 1 理念としての永遠平和 2 世界市民とは誰か III 世界市民と現代 1 世界市民として生きる 2 コスモポリタンなシティズンシップ おわりに――コスモポリタン・シティズンシップの批判的構想力
第3部 多文化・多世代共存社会の構想力 第7章 解放のプロジェクトとしての多文化主義 ――批判的教育学の理論と実践をめぐって 向山恭一 はじめに I 多文化主義と「共通文化」をめぐる論争 II 批判的教育学の多文化主義への介入 III 批判的多文化主義の挑戦と展望 おわりに
第8章 リベラル・ナショナリズム論の意義と展望 ――多様なリベラル・デモクラシーの花開く世界を目指して 施 光恒 はじめに I 理論の前提 1 登場の背景 2 「ネイション」の規定 3 自我観、およびナショナル・アイデンティティ II リベラル・デモクラシーの前提条件としてのネイション 1 民主主義 2 社会正義(平等) 3 個人の自由・権利 III 少数者の保護――ナショナリズムに対する一般的懸念にいかに答えるか IV 世界秩序構想 V 意義および改善点 VI 展望――結びにかえて
第9章 パトリオティズムとコスモポリタニズムの人権擁護 松元雅和 はじめに I パトリオティズムとコスモポリタニズム 1 コスモポリタニズムの「平等な」配慮 2 パトリオティズムの「特別な」配慮 3 パトリオティズムの限界 II 還元主義によるパトリオティズムの導出とその批判 1 功利主義による正当化 2 権利論による正当化 3 マッキンタイアの還元主義批判 III 多元主義とコスモポリタンの人権擁護 1 マッキンタイアへの反批判 2 多元主義、関係性のなかの平等、比較に適さない正義 おわりに
第4部 市民、その「戦争」のあと 第10章 日本プロテスタンティズムの戦後経験――福音派を中心として 田上雅徳 はじめに I 日本プロテスタンティズムにとっての戦中と戦後 II ビリー=グラハム来日 III 「彼ら」の政治と「われわれ」の社会 おわりに
第11章 Sound of Silence――戦後世界における「寛容」の問題性と可能性 堤林 剣・堤林 恵 I 隠喩 II 音と沈黙――沈黙 III 音と沈黙――音 IV 単声(モノフォニー)か多声(ポリフォニー)か――不協和の調和、あるいは寛容 V 沈黙と饒舌――アメリカ VI 音の中の沈黙(サウンド・オブ・サイレンス)と沈黙の中の音――日本
あとがき 萩原能久
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