『百科全書』
世界を書き換えた百科事典
序 『百科全書』とは何か
T 『百科全書』を編む
1 それまでの専門辞典と『百科全書』の決定的な違い
2 『百科全書』の書き手と読み手 いわゆる「百科全書派」の実は多様な実態 執筆者と読者の主力を担った混合エリート層
3 『百科全書』刊行計画の三大功労者──ディドロ、ダランベール、ジョクール 統括プロデューサー、ディドロ 『百科全書』のアカデミックな顔、ダランベール 『百科全書』第三の男、「項目製造機」 ジョクール 4 『百科全書』の執筆陣──啓蒙主義のオールスターとあらゆる専門家が結集 「序論」に記載された執筆協力者のリスト 「緒言」(第二巻─第八巻)で紹介されている主な執筆協力者のリスト 5 『百科全書』はどのように編纂・刊行されたのか チェンバーズ百科事典の仏訳から『百科全書』へ 度重なるスキャンダルと刊行中断を乗り越えて ついに完了した『百科全書』刊行計画 U 『百科全書』はどう読まれたのか 1 宣伝に貢献した反百科全書派の誹謗中傷 2 『百科全書』の普及を後押しした定期刊行物 3 スイス、イタリアを中心にヨーロッパ中に広がる『百科全書』 4 『百科全書』の後世への影響 欧米および日本の場合 『百科全書』と啓蒙主義の功罪 V 『百科全書』の新機軸──人間知識のネットワーク化とビジュアル化 1 販売促進パンフレット「趣意書」とディドロの宣伝戦略 チェンバーズ百科事典というモデル 学芸の枝分かれをビジュアル化した「人間知識の体系図解」 編纂者ディドロの役割 学問と自由学芸を再定義する 技芸を再評価する 『百科全書』と小説『ラモーの甥』に通底するもの 記憶、理性、想像力の三大能力 記憶に由来する歴史 理性に由来する哲学 想像力に由来し模倣を原理とする詩 人間中心主義的な学芸分類 2 ダランベールの「序論」を読んでみる ディドロの「趣意書」との違い 百科全書派の哲学的プロパガンダ 感覚論を原理とする人間中心主義的な学芸観 「有益な知識」と「楽しい知識」の起源 自然学の諸分野の起源 自然学以外の学芸の起源 技芸に対する差別の起源 「世界地図」としての「人間知識の体系図解」 知のナビゲーション・システムの限界 文芸と美術の分野を代表する一七世紀フランスの偉人たち 哲学の進歩を語る──ベーコン、デカルト、ニュートン 一八世紀フランスの天才と学芸の擁護 W 『百科全書』を読む、世界を読む 1 項目「百科全書(ENCYCLOPÉDIE)」と世界解釈としての辞書編纂 国益と人類の進歩 『百科全書』と田園風景のメタファー 2 機械技術の図解──項目「靴下編み機(BAS)」(執筆者ディドロ) 「物」を名付けることの難しさ 図解による技術の可視化と「物」の見方の変革 3 国民の常識を書き換えるディドロ ──文法項目における語彙の再定義 先行辞典類の再利用 特権階級に対する諷刺──項目「謙虚な(HUMBLE)」 ディドロの唯物論的な自然観──項目「不完全な(IMPARFAIT)」 西欧社会の結婚制度に対する批判──項目「解消不可能な(INDISSOLUBLE)」 国語の語彙記述がもたらす発想の転換 4 百科全書派の人間観と啓蒙主義的な文明・社会批判 『百科全書』の大見出しの項目の重要性 世界と学芸の中心としての人間──項目「人間(分類項目名なし)」(執筆者ディドロ) 文明人の歪んだ身体──項目「人間(博物学)」(執筆者ディドロ) 国家の富の源としての人間と土地──項目「人間(政治学)」(執筆者ディドロ) 5 アンシャン・レジーム批判と人権思想 過重な租税負担と中間搾取に対する批判──項目「租税」(執筆者ジョクール) 百科全書派による奴隷制批判──項目「奴隷制度」(執筆者ジョクール) 奴隷制廃止に項目「奴隷制度」は貢献したのか 「プロライター」ジョクール X 『百科全書』の哲学的な歴史批判
1 ディドロによる哲学史項目の迷信・誤謬批判 知識の四カテゴリーと誤謬の歴史 ディドロの哲学項目群「(古今の)哲学の歴史」 古代エジプト人の欺瞞──項目「エジプト人」(執筆者ディドロ) エジプト人と競い合ったエチオピア人──項目「エチオピア人」(執筆者ディドロ) カルデア人の年代学の疑わしさ──項目「カルデア人」(執筆者ディドロ) 2 「歴史」と「作り話」の違い──項目「歴史(HISTOIRE)」(執筆者ヴォルテール)
3 占いという迷信──項目「占術(DIVINATION)」(執筆者ディドロ) あらゆる誤謬を論破するコンディヤック 占星術の起源 ディドロによる書き換えの啓蒙的な狙い キケロに託されたフィロゾフの理想像 Y 『百科全書』と同時代の科学論争
1 『百科全書』の論争的な性格
2 ニュートン主義を擁護する──項目「引力(ATTRACTION)」(執筆者ダランベール) 「コピー&ペースト」による編集術 なぜニュートンの引力説はデカルトの渦動説に勝るのか 哲学的仮説の域を越えた万有引力の法則 科学のパラダイム転換に自ら加担するダランベール
おわりに 『百科全書』と世界の解読 『百科全書』は世界を変えたのか?──書物と世論をつなぐ談話の力 『百科全書』とウィキペディア、そして百科事典の未来 『百科全書』研究の今 電子化プロジェクトと研究の未来 日本語で読める『百科全書』入門ブックガイド
注 参考文献 あとがき
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