会計と社会
公共会計学論考

序 文 図表一覧
第1部 社会と会計
第1章 資本主義精神の終焉 ――公共会計学の勧めの背景―― 1.自然の猛威と科学・技術の限界の認識 2.科学・技術に対する社会科学の干渉 3.生物種としての人間と環境思想 ――「二元論」・「一元論」と「環境主義」・「エコロジズム」 4.自然物と人工物 5.人間の特性――科学・技術の探求と共同社会の形成 6.社会システム――資本主義が問題 7.資本主義に内在する発展・成長という思想 8.近代資本主義を成立させた精神とは何か 9.公共会計学の勧めの背景
第2章 会計・監査社会の変容のインプリケーション 1.会計・監査社会の現状 2.会計情報の変容の背景 (2-1) 科学の進歩に応じた新たな要求――将来の可視化 (2-2) 企業価値の構成要素の変化 3.企業評価とイデオロギーの変化 (3-1) 企業価値の理論値と市場価値 (3-2) 会計とイデオロギー (3-3) 社会的責任と会計(報告)の対応 4.監査社会の進展の含意 (4-1) 監査の進展の1つの解釈 (4-2) 監査の質と監査市場 (4-3) 監査の質の判定が不明確なままでの監査の拡大に伴う現象 5.会計プロフェッションの位置付けの変化 (5-1) 会計プロフェッションの消滅 (5-2) プロフェッションの意義と特徴 (5-3) 会計プロフェッションの労働者化 6.可視化の圧力と監視の社会的受容
第3章 利益情報の変容をもたらした要因は何か 1.利益情報の変容と経済社会のグローバリゼーション 2.会計情報の供給プロセスと影響要素の仮説 (2-1) 社会的選択 (2-2) 私的選択 (2-3) 私的選択の前提としての会計基準の設定 3.国際会計基準の特徴 (3-1) 国際会計基準が想定する会計の役割や会計に対する期待の特徴 (3-2) 公正価値評価志向をめぐる議論 (3-3) 公正価値の重視と原則主義の影響 4.経済社会のグローバリゼーションがもたらした変化 (4-1) グローバリゼーションとは (4-2) 資本主義社会の変化 5.経済社会のグローバリゼーションと会計社会の変容についての仮説 (5-1) 経済社会における主導権争いの一環としての会計基準の統一化の加速 (5-2) 世界統一会計基準のメリット (5-3) 短期的投機による利潤追求に役立つ会計情報の生産 (5-4) 労働市場の変容による「分配可能利益算定志向と付加価値概念」の減退 (5-5) 組織改革投資(IT投資)の重視によるプロジェクトごとの採算性の測定と組織の売却 に役立つ情報の生産 (5-6) 資本市場および実物市場の変容と公正価値測定の重視 6.仮説の検証努力――上場企業に対する意識調査の紹介 (6-1) 体系仮説の設定と意識調査に対応する仮説への変換 (6-2) アンケート調査の目的、対象と方法の概要 (6-3) 一次集計結果から得られた知見
第4章 非金融負債の公正価値測定の含意 1.IASB の志向 2.改定案の提案――蓋然性要件の削除と期待値法のみの採用 3.蓋然性に問題ありとする従来の論拠 4.会計志向(アプローチ)の違い 5.市場参加者の取引価格決定要素 6.非金融負債の公正価値測定が意味するもの 7.経済社会のグローバリゼーションがもたらした変化 8.公正価値志向の会計の需要要因
補論1 会計基準統一化の転機の記憶 1.日本の会計社会が直面した「黒船」 2.世界統一会計基準導入の長所と短所 (2-1) 長 所 (2-2) 短 所 3.会計基準の世界的統一化の概略 (3-1) 国際会計基準委員会から国際会計基準審議会へ (3-2) 国際会計基準審議会の構成 4.日本のコンバージェンスに関する取組み 5.IFRSs 強制適用の可能性の現出 6.金融クライシスとFASB,IASB および企業会計審議会・ASBJの対応 7.IFRSs の強制適用の回避 8.エンロンの会計不祥事以降の監査をめぐる規制の強化
補論2 会計と社会との相互干渉 1.郵政公社の財務会計基準と高速道路の資産評価・会計基準 2.社会的選択と私的選択との相互干渉 3.会計と経営との相互干渉 4.会計と社会との相互干渉 5.会計と市場との相互干渉 6.会計と公共財の効率性との相互干渉 7.研究余滴
第5章 社会企業モデルと会計主体論 1.企業の社会的責任と説明責任 2.企業の社会的責任論の概要 (2-1) 社会的責任の伝統的な基本思想 (2-2) 企業の社会的責任論争 (2-3) 経済的責任、法的責任、そして、社会的責任のバランス (2-4) 企業市民 3.会計主体論と社会企業モデル (3-1) 3つの会計主体論 (3-2) 社会企業モデルが想定する会計主体 (3-3) 「(株)ミツトヨ」のケース――会社設立の目的が社会的貢献 4.企業の主たる構成員がいなくなったらどうなるのか (4-1) ハッカーのアメリカン・エレクトリック (4-2) 取締役に代わり人工知能が経営 (4-3) 企業の存続の意義と取締役の役割 (4-4) ステークホルダーの利害を意識しない説明責任の履行 5.グローバルな社会的課題とグローバル社会企業 (5-1) グローバリゼーションとその背景 (5-2) グローバリゼーション下で企業に生じた新たな課題 (5-3) グローバルな社会的課題 6.企業市民モデルと拡張された説明責任
第2部 市場と会計
第6章 市場の質と会計社会の対応 1.会計情報の変容と市場の論理 2.市場の質とは何か 3.資本市場における競争の質 4.資本市場における製品(企業経営)の質 5.資本市場における情報の質 6.市場参加者の合理的判断 7.契約の不完備性と公平性
補論3 会計情報の市場の規制論 1.財務報告規制の経済学 2.規制のない市場を支持する議論 (2-1) エージェンシー理論 (2-2) 資本市場の競争圧力とシグナリングの誘因 (2-3) 私的契約の機会を支持する議論 3.会計情報の市場への規制の擁護論 (3-1) 市場の失敗 (3-2) 社会目標としての市場の公平性 (3-3) 基準設定への成文化アプローチの根拠 4.規制支持論と自由市場論の比較 (4-1) 自社情報に関する独占的供給者としての企業 (4-2) 資本市場の競争圧力 5.会計規制の不完全性 6.規制のプロセス 7.利害関係者の行動の特徴 8.会計基準の経済的帰結
第7章 機関投資家と市場を非効率にする要因 ――解説文献の要約―― 1.情報の主たる利用者としての機関投資家 2.投資関連業界(ファンド・マネジャー,アナリストなど)の構造問題 (2-1) 長い委託・受託関係の連鎖 (2-2) 経済的動機 3.市場の効率性とファンダメンタル分析 (3-1) ファンダメンタル分析の前提 (3-2) 効率的市場理論の前提 4.ファンダメンタル分析に関する諸議論 (4-1) ファンダメンタル分析がうまくいかない理由 (4-2) 証券アナリストが予想を誤る要因 (4-3) 効率的市場理論に基づく投資――リスク尺度の多様化 5.行動ファイナンス理論と投資の心理学の仮説 (5-1) 効率的市場仮説と行動ファイナンス理論の前提 (5-2) ヒューリスティックスに起因するバイアス (5-3) フレーム依存性 (5-4) 非効率的市場仮説の例示 (5-5) 機関投資家による市場予測 (5-6) 業績発表への偏った反応 (5-7) 企業買収と勝者の呪い (5-8) 新規株式公開のアンダープライシングとその後のアンダーパフォーマンス (5-9) アナリストの利益予測と株式推奨における楽観主義 (5-10) アナリストの利益予測を悲観的にさせるための経営者の試み
第8章 「利益の質」の概念をめぐる諸議論と監査の意義 1.利益の質をめぐる検討課題 2.会計情報の供給プロセスとその影響要素 3.「利益の質」の概念(constructs)の再整理 (3-1) 社会的選択と利益の質 (3-2) 私的選択と利益の質 (3-3) 事業活動の評価と利益の質 4.非効率な市場と利益の質との関係 (4-1) 非効率な市場 (4-2) ヒックス流の利益と非効率な市場――社会的選択 (4-3) 経営者の行動と市場の非効率――私的選択 (4-4) 利益の変動と会計操作のメリット 5.利益の質の概念と監査との関連 (5-1) 会計情報の供給プロセスと監査の意義 (5-2) 利益の質の構成要素と監査の意義 6.利益の質と市場の質との相互関係
補論4 わが国の資本市場の実態および会計の役割に関する検証例 1.資本市場に関する諸仮説の背景 (1-1) 資本市場の実態とファンダメンタル分析 (1-2) ファンダメンタル分析と財務情報 (1-3) 機関投資家の影響力の増大とエージェンシー関係 2.アナリストなどに対するアンケート調査の結果 その1 (2-1) 設定した仮説の概要 (2-2) 資本市場の実態と機関投資家の役割 (2-3) 企業評価を行う場合に重視する財務情報・非財務情報 (2-4) 経済社会のグローバリゼーションと会計の役割や会計に対する期待の変化 (2-5) 資本市場・企業の経済環境・事業環境・事業戦略の変化と会計の役割や会計に対 する期待の変化 (2-6) 利益情報の変容と経済的実質の測定・利益調整の可能性・監査の保証水準 (2-7) 利益情報の質と会計基準の利益測定指向 (2-8) 利益情報の変容と投資対象会社の経済環境・事業環境・事業戦略 (2-9) IFRSsのわが国への導入の是非および運用の有り方 3.アナリストなどに対するアンケート調査の結果 その2
第9章 予測要素がもたらす確率的利益測定の概念 1.確率的測定と利益の質 2.認識基準と確率的推定 3.測定基準と確率的推定 4.会計測定値の意思決定論的な解釈 5.監査の情報提供機能の再評価 6.予測要素の影響の増大
第3部 個人・組織と会計
第10章 取引における公正性の源泉 1.取得原価の二面性と合理的な取引決定の条件 2.消費者保護と中古米国車の購入事例 (2-1) 消費者保護の意義 (2-2) 中古米国車の購入事例に見る公正な取引の条件 (2-3) 信頼感の創出 (2-4) 即決した原因の考察 (2-5) 信頼される側の行為 (2-6) 信頼の創出の功利主義による解釈 (2-7) 個人の高潔な倫理性と公正な取引 3.富の追求は終わり,労働は喜びをもたらす (3-1) 豊かになると貪欲さは消えるのか (3-2) 労働は祝福をもたらす 4.国家の繁栄の源は悪徳なのか公正なのか ――バーナード・マンデヴィルとアダム・スミス (4-1) 悪徳は国家の繁栄の源――マンデヴィル (4-2) 共感と公正な競争――アダム・スミス 5.相互性と情報
第11章 個人の行為の判断基準と組織の内部道徳 1.会計不祥事と企業および個人の道徳(倫理) 2.善行(善人)とは何か――ロールズの解釈 (2-1) 善行と悪行 (2-2) 善行の動機――自尊の存在 (2-3) 卓越と後悔、恥辱 (2-4) 罪責と恥辱 3.美徳倫理 4.道徳的発達の段階 (4-1) 権威の道徳性――道徳的発達の第1段階 (4-2) 連合体の道徳性――道徳的発達の第2段階 (4-3) 原理の道徳性――道徳的発達の第3段階 (4-4) 義務以上の道徳性 (4-5) 経営管理者の道徳性発達 (4-6) 企業文化および倫理的風土 5.公共倫理の主張――公共哲学の代表的な所論 (5-1) 功利主義と形式的功利主義 (5-2) 自由至上主義 (5-3) 格差原理の応用 (5-4) 行為の意志――定言命法 6.官僚制組織と内部道徳 (6-1) 基本的人権と自己の行為の制御権の譲渡 (6-2) 2つの支配関係 (6-3) 官僚制組織と職位(地位)による支配 (6-4) 支配システム(組織)の内部道徳 (6-5) (株)東芝の会計不祥事と内部道徳 7.道徳的判断規準を持つことの大切さ (7-1) 杉原千畝氏の行ったユダヤ人へのビザ発給 (7-2) 反ユダヤ人主義とユダヤ人の移住の手段としてのカナウス領事館での懇請 (7-3) 杉原千畝氏の人道的判断から学ぶもの
第12章 企業統治と経営者報酬・従業員給料の公正な分配 1.会計の利害調整機能と労働対価の分配 2.企業はどのように統治されているのか (2-1) 取締役会の位置付けをめぐる3つのモデル (2-2) 自然人とは区別される企業(近代的団体行為者)の社会的出現 (2-3) 取締役会と社外取締役の役割 3.役員報酬の公正性をめぐる議論 (3-1) 役員報酬と一般従業員の賃金格差 (3-2) 高額報酬・大きな所得格差を肯定する見解 (1) バランスを欠いた相互性の容認 (2) 功績原理と自然権 (3) 形式的功利主義とインセンティブ契約 (3-3)高額報酬・大きな所得格差を否定する見解 (1) ニーズの原理 (2) 格差原理 (3-4) 納税という社会貢献 ――条件次第で賛否が分かれる見解 (3-5) 新しいバランスを欠いた相互主義 4.結 論 (4-1) 報酬が高い理由と社会的正義 (4-2) コーポレートガバナンス・コードと取締役会の位置付けに関する3つのモデル (4-3) 会計の利害調整機能 (1) 会計情報と労使賃金交渉 (2) 役員報酬の開示の役割 ――バランスのとれた相互性の発現
第13章 企業の決算行動を決定する要因 1.ポジティブ・アカウンティング指向の会計研究の特徴 2.仮説の前提条件と日米の相違 (2-1) 経営者と従業員との共同利益追求による賃金水準を仲介とする報告利益と経営者 報酬との関連性 (2-2) コーポレートガバナンスと主たるステークホルダー 3.説明変数の追加 (3-1) 社会学の理論と会計行動 (3-2) アカウンティング・ポリシー 4.社会的選択としての各国の会計基準の相違を決定する要因 5.私的選択としての企業の決算行動の説明要因の体系 6.決算行動を説明する社会的・文化的・哲学的要因
第14章 人的資産の認識と測定 1.リストラ問題と非正規雇用政策の効果の類似性 2.従来の研究――人的資源の測定方法と勘定記入 (2-1) 人的資源の測定方法の類型 (2-2) 人的資源の勘定記入 (2-3) 貸借対照表、損益計算書上での人的資源に関する取引勘定 3.いくつかの問題点 (3-1) 支出原価法――能力開発費の資産性 (3-2) 効益価値法――人間資産に関する増価・減価 4.既提案の物的資産の認識・測定に類似する会計処理方法 (4-1) 物的資産と人的資産 (4-2) 将来の純利益流列の測定 (4-3) 人的資産の会計認識の問題点 (4-4) 勘定記入 5.提 案 (5-1) レブ=シュワルツのモデルの適用例 (5-2) 人的資産関連勘定の認識・測定 (5-3) 会計処理の解釈 6.議 論 (6-1) 会計認識上の問題 (6-2) 会計測定上の問題 7.会計の機能・役割との関連
第15章 創造会社法私案と人的資産・労務出資の会計 1.20 世紀末のわが国の経済状況 2.ベンチャー企業待望論と創造会社法私案 3.会計測定対象としての創造会社の特徴 4.会計測定方法の提案 (4-1) 金銭出資による設立 (4-2) 出資金と利益剰余金との区分 (4-3) 優れた技術・能力を持った創業者の存在 ――労務出資のオンバランス (4-4) 労務出資の相手勘定 (4-5) 有限の存続期間と株式会社への組織変更 ――人的資産の償却の効果 (4-6) 労務出資者の退社 (4-7) 構成員の追加加入 5.人的資産と労務出資のオフバランス 6.人的資産・労務出資の計上と人的資産償却の意義 参考 パートナーシップ会計,組合会計および合名会社会計の検討
第16章 企業結合会計方法の論点と解決策 ――フレッシュスタート法の勧め―― 1.企業結合会計基準の一大転機 2.株式交換・移転制度の意義 3.企業結合会計基準に見る企業結合の意味と類型 (3-1)企業結合の意味 (3-2)企業結合会計の類型 4.プーリング法の変遷と論理の検討 (4-1) プーリング法が意図するそもそもの取引 (4-2) プーリング法の適用要件の変遷 (4-3) 持分プーリングの実質的禁止の提案(ワイアット) (4-4) プーリング法の要件の細分化 (4-5) 経済的実質によるプーリング法の要件の再整理 (4-6) 支配会社の識別不可能性の強調 5.プーリング法の禁止とフレッシュスタート法の強調 (5-1) プーリング法の禁止の論理 (5-2) フレッシュスタート法の根拠と未解決の問題 6.企業会計審議会「企業結合に係る会計基準」(2003 年)の検討 (6-1) プーリング識別要件 (6-2) 企業結合に係る会計基準の論理の検討 7.企業統合・再編とフレッシュスタート法の是非 (7-1) 持株会社の新設 (7-2) 分社化とプッシュダウン会計 (7-3) 合併と公正価値プーリング法 8.フレッシュスタート法の論点の検討 (8-1) 企業結合と「実質的な変容」の意義 (8-2) フレッシュスタート法は同規模の会社同士の企業結合に限られるのか (8-3) 継続企業においても実質的な会計の基礎の変更があるのではないか (8-4) 相互パーチェス法か公正価値プーリング法か 9.独自性ある企業結合会計基準の可能性 (9-1) パーチェス法、プーリング法、フレッシュスタート法の併用基準 (9-2) 「対等の精神」という日本的風土に基づく会計基準は存在するのか (9-3) 会計と経営との相互干渉 (9-4) 公共政策(弱者保護)としてのフレッシュスタート法
第17章 京セラとヤシカの合併――フィールド・スタディ―― 1.救済ではあったが,シナジー効果を期待した積極的異業種合併 2.合併会社(京セラ)の状況 (2-1) 会社の沿革 (2-2) 京セラフィロソフィー (2-3) アメーバ経営 (2-4) 高株価と資金調達 (2-5) 多角化の推移 3.被合併会社(ヤシカ)の状況 4.合併時点の意思決定 (4-1) 合併の経緯 (4-2) 合併の背景と期待 (4-3) 合併時の財務内容 (4-4) 合併比率の決定と合併会計処理 5.合併後の評価――ヤシカ・岡谷工場 (5-1) ヤシカ・岡谷工場の再構築策 (5-2) 光学機器部門の業績 (5-3) 従業員の処遇 6.合併後の評価――京セラおよび全社的視点 (6-1) シナジー効果はあったか (6-2) 人材の確保 (6-3) 国内生産拠点の追加 (6-4) 財務上のメリット (6-5) 海外生産拠点の確保 (6-6) 都心にまとまった土地が確保できたこと 7.成功事例であると結論
第18章 企業結合に関するのれんの会計の論点 1.償却処理から非償却処理への転換 2.のれんとその他の無形資産との峻別 3.従来から検討されている論点 (3-1) 情報の有用性の識別基準に照らしたのれんの各会計処理の長所、短所 (3-2) のれんの測定属性 (3-3) 少数株主持分の保護と全部のれん説、買入れのれん説 4.新たな論点の提起 (4-1) 「市場の質」と全部のれん説から波及する問題 (4-2) 企業評価を経営者が行う問題 (4-3) 経営者の事業戦略とのれんの会計処理 (4-4) 利益情報の性質と情報利用者の効用関数の変化
第19章 退職給付会計基準の論点 1.新たな退職給付会計基準の設定 2.資産・負債,費用・収益の総額・両建て計上方式と純額・差額計上方式 (2-1) 内部引当・外部積立併用の例示 (2-2) 設例から得られた知見 (2-3) 資産・負債(費用・収益)の差額計上と両建て計上の論拠 (2-4) 「支配(統制)」と基金資産の理解 (2-5) 貸借対照表表示額が意味するもの (2-6) 差額計上方式と両建て計上方式の比較の結論 3.現在価値計算における割引率とリスクの考慮 (3-1) 負債の現在価値とリスクの一般論 (3-2) 退職給付会計基準と無リスク利子率 (3-3) デフォルト・リスクと割引率 (3-4) 資産の運用利回りと割引率 4.発生給付評価方式の意義と影響 (4-1) 発生給付評価方式と期末要支給額方式との関係 (4-2) 退職給付の発生時の従業員による受領 (4-3) 予測単位積増―定額制方式と予測単位積増―給与・支給倍率加味方式の比較 5.数理計算上の差異の処理方法 (5-1) 即時認識方式の論拠 (5-2) 遅延認識方式の論拠 (5-3) 回廊アプローチ (5-4) 重要性基準と回廊方式との関係
第4部 環境と会計
第20章 パリ協定前文の願意と会計責任の拡張 1.環境問題をめぐる3 つの対立軸 2.温暖化対策の合意成立 3.前文の願意――ロールズの「公正としての正義―格差原理」の想起 4.科学・技術開発による解決 ――持続可能な発展の含意は何か 5.自主的目標設定・業績測定,社会企業,トリプル・ボトムライン (5-1) 各国の自主的目標設定・業績測定 (5-2) シングル・ボトムラインとトリプル・ボトムライン (5-3) 経済的パフォーマンス、自然環境への影響、社会的インパクトの3つの指標の理想 的関係 (5-4) 経済的パフォーマンス最大化が目的関数、自然環境への影響と社会的インパクトの 2つの指標が制約式 (5-5) 自然環境への影響と社会的インパクトの2つの指標のポジティブ量最大化が目的関 数、経済的パフォーマンスが制約条件の会社経営は成立するのか 6.「統合報告」の思想は経済的パフォーマンス以外の目標を掲げる企業を促進するか (6-1) 6つの資本と価値創造プロセス (6-2) なぜ統合報告の情報は主として財務資本のステークホルダーに有用なのか 7.経済的パフォーマンス最大化目標を転換させる手段としての会計責任の拡張 8.「豊かさ」の別指向――環境問題は公共社会の有り方の問題でもある
第21章 持続可能な発展と会計の転換 1.持続可能な発展の問題 2.外部性と共有資源問題 3.公共政策の概観 4.環境マネジメント 5.環境保全コストと環境保全努力に対応する効果の測定 (5-1) 環境会計の測定対象と3つの測定要素 (5-2) 環境保全コストの測定 (5-3) 環境保全効果 (5-4) 環境保全対策に伴う経済的効果 (5-5) 環境保全コストと環境保全努力に対応する効果の測定上の留意点 6.認識の転換と社会会計モデル 7.コストとベネフィット,費用と収益の意味するもの (7-1) 企業と顧客・消費者 (7-2) 企業と従業員 (7-3) 企業と地球環境 (7-4) 企業と地域環境・住民社会 (7-5) 企業と政府 8.ミクロ社会会計の再認識と利害関係者への付加価値の分配
第22章 温室効果ガス排出量取引をめぐる会計上の論点 1.京都メカニズム第1 約束期間の始まりと日本の状況 2.資産の特質を中心とする排出量取引会計の検討 ――収益・費用アプローチの残像 (2-1) 「排出削減における会計および認定問題研究委員会」報告 (2-2) 経済産業省「産業構造審議会」案から企業会計基準委員会実務対応報告第15号へ 3.排出クレジットの法的性質の検討 (3-1) GISPRI「京都メカニズム促進のための法的論点等に係る調査研究委員会」報告 (3-2) 経済産業省「産業構造審議会」案 (3-3) 「京都議定書に基づく国別登録簿の在り方に関する検討会」報告 4.排出クレジット引渡義務を中心とする会計処理 ――資産・負債アプローチの適用 (4-1) フランス会計処理案の概要および特徴 (4-2) イギリス会計処理案の概要および特徴 (4-3) 国際財務報告解釈委員会解釈指針(IFRIC)第3号「排出権」の概要 5.設例によるGISPRI 案の拡張とIFRIC 案の会計処理の例示 (5-1) GISPRI案の拡張 (5-2) IFRIC案の代替的会計処理方法 6.環境省「クレジット会計処理検討委員会」案 7.未解決の問題の解釈と展望――4 タイプの会計処理方法の意義 (7-1) コスト・オブ・グッズの認識・測定とGISPRI拡張案・オフバランス案 (7-2) 会社(事業所)と国との契約と排出削減義務当初認識法 (7-3) バッズの認識・測定とCO2の排出費用認識法
補論5 国際財務報告解釈委員会解釈指針第3 号「排出権」の検討 1.解釈指針第3 号「排出権」の公開草案と成案 2.設例の前提の変更と会計処理 (2-1) 設例の前提 (2-2) 無形資産に関する原則的処理方法 (2-3) 無形資産に関する代替的処理方法(再評価モデル) (2-4) 収益と費用の対応の検討 3.成案の結論の検討 (3-1) 論点と結論 (3-2) 資産と負債の両建て処理の根拠 (3-3) 排出枠の金融資産としての把握の否定 (3-4) 排出枠は償却すべきか (3-5) 負債はいつ認識され、どのように測定すべきか (3-6) 政府補助金について (3-7) ペナルティ (3-8) 減 損
補論6 試行排出量取引スキームにおける会計上の取扱いの検討 1.わが国の排出量取引の実験――試行排出量取引スキームの開始 2.実務対応報告第15 号改定の検討経緯 3.検討にあたっての基本方針と主たる課題 (3-1) IASBの検討状況とEUの現状 (3-2) ASBJの基本方針と主たる課題 4.事前交付により取得した排出枠の会計処理に関するASBJ の提案 5.K 案の考え方 6.設例によるA 案とK 案の違い 7.参加企業の最終目標年度一括処理 (7-1) 事後清算により無償で排出枠を取得する場合の会計処理に「実績が未確定」の視 点を拡張 (7-2) 設例に関するA案の仕訳の変更 (7-3) 排出枠不足が確実に見込まれる場合の費用処理の削除 (7-4) 設例に関する仕訳:原則 8.課 題
補論7 京都議定書第1 約束期間後の空白問題の危惧 ――東日本大震災前(2010―2011年3月)の日本―― 1.環境問題に対処する姿勢 2.排出クレジットの発生と排出既得権の人為的設定 3.京都メカニズム継続に対する憂慮すべき状況と公共哲学の復権 4.空白問題と共通善の維持 5.「共通善」の心得と経済産業省「二国間オフセット・クレジット制度」および東京都「総量削 減義務と排出量取引制度」の登場
補論8 京都メカニズム脱退後のJCM の意義 ――東日本大震災後(2014年3月)の日本―― 1.グランド・デザインの重要性 2.JCM プロジェクトの案件――発展途上国のエネルギー対策の支援 3.外部性と温室効果ガス排出防止対策 4.将来の日本国の有り方・目標という観点
第23章 資産除去債務をめぐる会計上の論点 1.資産除去債務の会計基準設定の経緯 2.資産除去債務の認識の範囲 (2-1) 資産除去債務の定義の留意点 (2-2) 特別修繕引当金との関係 (2-3) 法律上の義務に準ずる債務の解釈 3.資産除去債務の測定 (3-1) 資産除去債務専門委員会と引当金専門委員会の共通検討課題 (3-2) 分散リスクの測定について (3-3) 信用リスク・プレミアムを加算するのか否か 4.時間経過に伴う利子費用の意義 5.資産・負債両建て計上と引当金処理の意義
第5部 公共・政府と会計
第24章 企業の海外戦略と国民の経済的繁栄 1.サントリー社のビーム社買収 2.経済社会の繁栄度の指標――国民経済計算とわが国の現状 (2-1) GDPの意味――財貨・サービスの産出と需要、要素所得 (2-2) 国民所得とGDP(国民生産)との概念の違い (2-3) 社会負担と所得の再分配 (2-4) 海外取引と経常対外収支 3.「わが国の企業(日系企業)」とは何か 4.自由の尊重と市場経済重視 5.カール・ポラニーの「自己調整的市場」に関する洞察 (5-1) 19世紀の自己調整的市場の進展と20世紀初頭の反動の原因 (5-2) 現在も妥当とする自己調整的市場のユートピア性 (5-3) 自己調整的市場の特徴 (5-4) 労働、土地(自然資産)、貨幣の擬制商品性 6.経営者の使命は何か
第25章 納税行為の意義 1.わが国財務状況の確認と増税の必要性 2.租税による歳入と公的支出に見る国の役割 (2-1) 租税の2つの機能 (2-2) 公的支出の内容 3.社会的正義の諸説再述 4.公私分割と社会的正義の諸説 (4-1) 功利主義による見解について (4-2) 自由至上主義による見解について (4-3) 平等主義的自由主義による見解について (4-4) 「自律」と自由至上主義からの反論 5.納税行為をどのように理解して財政健全化に対処するべきか
第26章 公共社会とディスクロージャー 1.ディスクロージャーに関する研究の役割 2.ディスクロージャー課題の例示 3.分析の手順――利害に関する構成要素の特定 4.情報(ディスクロージャー)の利害への影響の検討 (4-1) 絶望的な巨大隕石の衝突 (4-2) ゴジラの出現 (4-3) 国債価格および円通貨の暴落 (4-4) 地震の発生と地盤情報 (4-5) 医療サービスへの不満(訴訟)と医師の階層別モデル賃金 5.キーとなる概念,観点,論理 6.企業行動に関連した研究課題設定の例示
初出文献一覧 索 引
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