ベンサムの言語論
功利主義とプラグマティズム

序論 第1節 本書の目的と意義 第2節 本書の研究に関わる先行研究の状況 第3節 本書の構成
第一部 ベンサム思想体系の哲学的基礎 第1章 言語論と論理学 第1節 〈方法〉の改革者 第2節 科学方法論としての論理学 第3節 哲学的前提をめぐる問題 第4節 言語論のプラグマティズム的含意 1 パラフランシス 2 実態の分類 3 現実的実体とフィクション的実体の関係性 4 認識の発展を支えるフィクション 5 言語の論理的歴史 第5節 科学観と科学方法論
第2章 快楽主義心理学と功利主義倫理学 第1節 快楽主義心理学 1 快苦に対する人間の従属 2 それは「利己主義的」理論か? 3 動機の種類と快苦の源泉 4 「最良の判定者」テーゼと人間の不合理性をめぐる洞察 第2節 功利主義倫理学 1 「功利性の原理」のパラフランシス的説明 2 「ヒュームの功利主義」に対する批判 3 原理の名称と定式の変遷 4 「功利性の原理」の正当性 (1) 「禁欲主義の原理」に対する批判 (2) 「共感と反感の原理」に対する批判 (3) 「功利性の原理」は万人にとって同意可能な原理か? (4) 「快楽−苦痛」の量は万人にとって検証可能な基準か? 第3節 快楽主義心理学と功利主義倫理学の関係性
第3章 言語論の思想史的考察 第1節 「言語論的転回」の先駆者か? 「プラグマティズム的転回」の先駆者か? 第2節 啓蒙期言語思想の一系譜 1 ベーコン 2 ロック 3 コンディヤック 4 トゥック 第3節 ベンサムの独創性
第二部 ベンサムの「法の科学」と「自由な国家」の構想 第4章 「批判的法学」とコモン・ロー批判 第1節 一八世紀後半のイギリス法の状況と法学者ベンサムの課題 第2節 「批判的法学」と功利性の原理 1 法の功利性、周知性、明示された合理性 2 「誠実」の義務とベンサム版「自由の原理」 3 立法の四つの副次的目的 4 立法論のリベラルな性格 第3節 コモン・ロー批判 1 コモン・ロー理論に対する批判 2 コモン・ローという法の形態に対する批判
第5章 「普遍的法学」と論理学 第1節 法的諸概念の定義と「秩序化」 1 プラグマティズム的な定義としての「法=主権者命令」説 2 「義務」、「権利」、「正義」、「自由」の定義 3 「法の科学」における形而上学=論理学としての「普遍的法学」 第2節 犯罪の自然的分類 1 法の「刑法的部分」と「民法的部分」 2 違反行為の「自然的分類」
第6章 人権宣言批判と「自由な国家」の構想 第1節 人権宣言批判の諸論点 第2節 人権宣言批判の核心 第3節 功利性の原理と「自由な国家」の構想
第三部 ベンサムの民主主義理論と「言葉の戦争」 第7章 幻惑と謬論 第1節 「シニスター・インタレスト」と「幻惑」の発見 第2節 『謬論の書』における「言葉の戦争」 1 政治的謬論との戦い (1) 「権威の謬論」との戦い (2) 「危険の謬論」との戦い (3) 「遅延の謬論」との戦い (4) 「混乱の謬論」との戦い 2 謬論が普及する政治的・社会的背景 3 謬論の生成・普及のメカニズム 4 「言葉の戦争」の困難さ
第8章 幻惑とデオントロジー――私的倫理論の発展 第1節 私的倫理という問題 第2節 初期の私的倫理論 第3節 「イデオロギー」としての実定道徳 第4節 『デオントロギー』と『行為の動因の一覧表』における私的倫理の構想 1 「デオントロジスト」と後期私的倫理論のアウトライン 2 〈道徳言語の批判と改革を通じた実定道徳の脱幻惑化〉という企て (1) 幻惑による実定道徳の堕落 (2) 言語を濫用する独断主義者たち (3) 幻惑の所産としての「言語の不完全さ」 (4) 道徳的・心理学的諸概念の再定義 (5) 〈動機の善し悪し〉という誤った観念 (6) 動機に関する批判的・感情喚起的な呼称に対する批判 (7) 行為の動因の一覧表 3 〈魅力的な功利主義像の提示を通じた実定道徳の適正化〉という企て (1) 「容易になった道徳」としての功利主義 (2) 功利主義における〈徳の理論〉 (3) 〈善行≒慎慮〉論の必要性 (4) 「他者に関わる慎慮」・「共感的サンクション」・「一般好意基金」 第5節 統治功利主義から包括的功利主義へ
第9章 『憲法典』の民主主義理論と多数者専制問題 第1節 『憲法典』における代議制民主政体の構想 第2節 代議制民主政体の正当化論と「シニスター・インタレスト」をめぐる問題 1 功利主義的正当化の諸形態 2 普遍的利益・特殊的利益・「シニスター・インタレスト」 3 「シニスター・インタレスト」をめぐる問題 第3節 「立法権の全能」をめぐる問題 第4節 世論法廷と私的倫理論
補論 デューイとベンサム 第1節 はじめに 第2節 『哲学の再構成』におけるデューイの思想 1 プラグマティズムと「哲学の再構成」 (1) 哲学の起源と歴史 (2) プラグマティズムの認識観 (3) 哲学の再構成 2 功利主義やベンサム思想への評価 (1) 功利主義一般に対する評価 (2) ベンサムの思想に対する評価 第3節 デューイのプラグマティズムとベンサム思想の比較 1 両者の類似点 2 両者の相違点
結論
あとがき
索引 ジェレミー・ベンサム略年譜 参考文献
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