経済政策論
日本と世界が直面する諸課題

第T部 経済政策論への招待
第1章 経済政策論を学ぶ意味 1 経済政策論の教科書としての本書の特徴 2 政策課題中心で経済政策論を学ぶことの意義 3 今日の経済学研究の流れとの関連 4 本書の構成 Column 1 市場に対する新しい見方
第2章 現代日本経済が直面する諸問題 1 エネルギー問題、環境問題とわれわれの文明 1.1 経済活動とその長期的趨勢 1.2 エネルギーの重要性 Column 2 マルサス経済のメカニズム 1.3 エネルギー消費のゆくえ 1.4 エネルギー問題と環境問題 2 2つの老いと財政の役割 2.1 人口減少社会と高齢化 2.2 都市の老朽化 2.3 2つの老いが財政に与える影響 3 グローバル化の進展と日本経済 3.1 世界における日本経済の規模 3.2 ISバランスから見た世界経済 3.3 日本経済のISバランスの見通し 4 まとめ
第U部 2030年への課題と政策
第3章 財政政策・金融政策をめぐるいくつかのトピック 1 マクロ経済学の変化 1.1 自然失業率仮説 1.2 その後の展開 2 財政政策をめぐる諸問題 2.1 ケインズ的な財政政策に対する見方 2.2 公債負担論 2.3 リカードとバローの中立命題 2.4 財政の持続可能性 3 金融政策をめぐる諸問題 3.1 マネタリズム的金融政策の展開 3.2 中央銀行の政策運営 3.3 金融政策における期待の役割 3.4 時間的不整合性の問題 3.5 インフレ目標制度と金融政策ルール 3.6 日本で行われた非伝統的金融政策
第4章 労働市場改革 1 労働に関する基本的な用語 2 標準的経済学の労働市場と日本の労働市場 2.1 標準的経済学から見た労働市場 2.2 日本の労働市場の特殊性 3 バブル経済崩壊前と日本的雇用慣行 4 バブル経済崩壊後と日本的雇用慣行 5 労働市場改革の方向性 5.1 年功賃金(生活給)から能力給への転換 5.2 性別役割分業からワーク・ライフ・バランスへの転換 5.3 新卒のみの一括採用から常時開いている労働市場への転換 5.4 厳格な解雇規制の緩和とセーフティネットの充実への転換 5.5 格差社会から格差の小さな社会への転換 Column 3 ピケティの格差論
第5章 社会保障をめぐる諸問題 1 社会保障の現在 1.1 社会保障関係費の推移 1.2 年金保険制度の仕組み 2 社会保障になぜ公共部門が関与するのか 2.1 情報の非対称性 2.2 再分配 2.3 パターナリズム 3 わが国の将来像から求められる年金制度 3.1 少子高齢化のインパクト 3.2 2つのタイプの年金制度と求められる姿 4 わが国の将来像から求められる医療・介護制度 4.1 少子高齢化のインパクト 4.2 これからの医療・介護制度
第6章 エネルギー問題と政策 1 技術的背景 ―― エネルギーの形態 2 技術的背景 ―― 電力の仕組み 3 石油と国際情勢 4 各国経済政策の変化 5 エネルギー政策の考え方 6 電気事業の特質 7 規制緩和と自由化の考え方 8 わが国の電気事業規制と改革 9 電源構成の考え方 10 環境問題の浮上 11 まとめ
第7章 環境問題と政策 1 環境問題の概観 2 地域環境問題と地球環境問題 3 気候変動問題の経緯 4 経済学の枠組みと環境問題 5 費用便益分析の考え方 6 気候変動政策のモデル分析 7 経済政策の必要性 8 政策手段 9 まとめ
第8章 産業に関する経済政策 1 はじめに 2 戦後日本の産業政策 3 産業の保護育成政策 3.1 政府は特定産業を育成することができるのか 3.2 幼稚産業保護はどのように正当化されるのか 4 産業構造の選択は一国に何をもたらしうるのか 5 産業調整政策について 6 現在の日本の産業構造 7 現在の日本の産業が直面する課題 7.1 キャッチアップからフロントランナーへ 7.2 比較優位構造の転換 7.3 市場と政府の補完性 8 まとめ Column 4 各産業の成長寄与率の計算の仕方について Column 5 国同士の競争という概念
第9章 農業政策 1 世界の食料・農産物市場の特徴と食料危機の可能性 2 農業保護の根拠 2.1 食料安全保障 2.2 食料自給率向上 2.3 多面的機能 3 人口減少時代における食料安全保障の難しさ 4 日本農業のポテンシャル 5 農業衰退の原因となった農業政策 5.1 価格政策 5.2 農地政策 5.3 農協 6 農産物貿易自由化と柳田國男 7 農政改革の方向 7.1 農地制度の改革 7.2 農協制度の改革 7.3 価格支持から直接支払いへ 7.4 海外市場の開拓と食料安全保障
第V部 経済政策への視角
第10章 戦後日本の経済システムの理論的把握 1 比較制度分析のアプローチ 1.1 経済システムという経済の捉え方 1.2 制度の重要性 2 ゲーム理論と比較制度分析の諸概念 2.1 ナッシュ均衡 2.2 戦略的補完性、複数均衡、歴史的経路依存性 3 戦後日本の経済システムとその理論的把握 3.1 情報共有型コーディネーション・システムとしての日本企業 3.2 企業システム――J−均衡とA−均衡 3.3 日本企業の雇用システム 3.4 長期のサプライヤー関係 3.5 日本企業のコーポレート・ガバナンスとメインバンク・システム 3.6 銀行中心の金融システム 3.7 戦後日本の経済システムにおける政府・企業関係 4 おわりに Column 6 アカロフの中古車市場のモデル Column 7 繰り返し囚人のジレンマ
第11章 日本の経済システムはどこに向かうのか ―― システム変化の視点 1 経済システムの変化に関する観点 1.1 制度変化をもたらす要因 1.2 制度的補完性と経済システム改革 1.3 経済改革の歴史的事例 2 日本の経済システムの歴史的生成 2.1 1920年代までの日本の経済システム 2.2 戦時経済体制から戦後の経済システムへ 2.3 1980年代から今日まで 3 現代日本の経済システムが直面する環境変化 3.1 経済のグローバル化と世界的な分業構造の転換 3.2 キャッチアップ段階からフロントランナー段階への移行 3.3 ICTの発展とモジュール化 3.4 少子高齢・人口減少社会のインパクト 4 日本の経済システムの現状 4.1 金融市場サイドと労働市場サイド 4.2 日本企業のコーポレート・ガバナンスの多様化 5 現在の変化をどう見るのか 5.1 変化の途上にある日本の経済システム 5.2 株主とコア労働者によるレントの分け合い 6 おわりに
第12章 望ましい政策の実現がなぜ難しいのか 1 市場の失敗から政府の失敗へ 1.1 公共選択論とはいかなる学問か 1.2 公共選択論における政治家・官僚像 1.3 ゲームの解としての政府の失敗 2 政府の失敗から民主主義の失敗へ 2.1 合理的有権者の神話の崩壊 2.2 行動経済学の知見から得られる等身大の有権者像 3 新しい経済政策論の構築に向けて Column 8 双曲型割引モデルについて
補論 マクロ経済学の要点整理 1 国民経済計算の諸概念 1.1 国民所得の諸概念とその関係 1.2 ISバランスの恒等式 1.3 名目と実質 1.4 成長率間の関係 2 45度線モデル 2.1 財市場の均衡と45度線モデル 2.2 財政政策の効果 3 IS-LMモデル 3.1 財市場均衡への利子率の導入とIS曲線 3.2 貨幣市場の均衡とLM曲線 3.3 貨幣の定義 3.4 貨幣供給のコントロール 3.5 貨幣需要 3.6 IS-LM分析とマクロ経済政策の効果 4 AD-ASモデル 4.1 IS-LMモデルにおける物価水準の操作とAD曲線 4.2 労働市場の考察とAS曲線 4.3 AD-AS分析 5 ケインジアンの体系と古典派の体系 6 経済成長モデル 6.1 成長会計 6.2 ソロー・モデル
索 引 著者紹介
|