契約履行の動態理論T
―弁済提供論

はじめに
第一章 動態的契約理論 一 はじめに 二 支配的弁済観 1 提供の機能 2 受領遅滞論 3 機械的履行論 4 基本モデルとしての特定物売買 三 批判的弁済観 1 提供の意義の変容 2 受領遅滞論の変貌 3 有機的履行論への端緒 4 基本モデルとしての特定物売買からの離脱 四 動態的契約理論――交渉プロセスとしての履行過程
第一部 受領遅滞論 第二章 弁済提供制度の沿革 一 フランス法における弁済の提供および供託 1 弁済の提供および供託の手続 (1) 金銭債務 (2) 特定物債務 (3) 種類債務 (4) 為す債務 2 弁済の提供および供託の効果 (1) 現実の提供の効果 (2) 催告の効果 (3) 供託の効果 (4) 現実の提供および供託の費用 3 小 括 (1) 債権者の付遅滞 (2) 提供制度に対する批判 二 旧民法における弁済の提供および供託 1 ボワソナード草案 (1) 弁済の提供および供託の手続 (2) 提供および供託の効果 2 旧民法の編纂 3 小 括 (1) 弁済の提供および供託 (2) 催告手続の制度 (3) 補論――債権者平等の原則 (a) 執行手続における平等主義の採用 /(b) 優先主義と平等主義の対立 (c) 優先主義の新たな根拠づけ /(d) 民法上の債権者平等の原則 (e) 債権実現のルールとその潜脱
第三章 ドイツ受領遅滞論の形成 一 ドイツ受領遅滞制度の特異性? 二 サヴィニーの権利の体系 三 モムゼンによる受領遅滞理論の転換 四 ドイツ近代立法の一瞥 五 コーラーの権利テーゼ 六 ドイツ民法典の制定 七 再び、権利の体系へ
第四章 受領遅滞制度 一 現行民法第四一三条の制定過程 二 問題の再設定 三 民法第四九二条の意義 1 フランス法 2 旧民法 3 現行民法第四九三条との関係 4 小 括 四 旧商法第五三六条および第五三七条の削除の意義 1 現行民法売買法と旧商法との関係 2 旧商法第五三六条および第五三七条 3 旧商法第五三六条・第五三七条の削除の意義 五 受領障害と提供制度
第五章 買主の引取遅滞制度 一 問題設定 二 供託その他の債務者解放制度の概略 1 フランス法および旧民法 (1) フランス法 (2) 旧民法 2 ドイツ民法 (1) ドイツ普通法 (2) ドイツ民法典の制定 3 日本民法 三 引取遅滞制度の原型 1 フランス法の引取遅滞制度 2 旧民法の引取遅滞制度 3 ドイツ法の引取遅滞制度 (1) 普通法 (2) ドイツ民法典の制定 四 第四一三条の原規定とその修正 五 引取遅滞制度の展開 1 フランス法における「引取」概念 2 ドイツ法における「引取」概念 3 「引取」概念の比較 六 民法第四一三条の意義 1 引取遅滞制度としての民法第四一三条 2 第四一三条による危険の移転効果 七 小 括
第二部 遅滞要件論 第六章 受領遅滞および履行遅滞の要件 一 はじめに 二 受領遅滞と提供の関係 1 提供制度の変遷とその意義 2 ドイツ民法典第二九七条の意義 3 小 括 三 履行遅滞と催告の関係 1 フランス法における付遅滞要件 2 ドイツ法における履行遅滞要件 3 小 括 四 小 括
第七章 債権者の明確な受領拒絶 一 はじめに 二 契約否定類型 1 債権者の明確な受領拒絶と弁済提供の要否 (1) 判 例 (2) 学 説 (a) 提供必要説/(b) 提供不要説 (3) 私 見 2 受領拒絶の撤回 (1) 判例および学説 (2) 小 括 3 債権者の明確な履行拒絶と同時履行の抗弁 (1) 判 例 (2) 学 説 (3) 小 括 4 小 括 三 増額請求類型 1 賃料増額請求権と解除の制限 (1) 賃料増額請求権制度改正の経緯 (2) 「相当賃料」の基準 (3) 小 括 2 債権者の受領拒絶と過大催告 (1) 判例および学説 (2) 小 括 3 債権者の明確な受領拒絶と供託 (1) 提供と供託の関係 (2) 賃料増額請求事例と供託法理 4 小 括 四 小 括
第三部 契約解除論 第八章 付遅滞解除の要件 一 伝統的債務不履行論の限界 1 解除手続論の理論的矛盾 2 伝統的債務不履行論への批判 3 本章の課題 二 付遅滞解除要件論――帰責性の要否 1 履行遅滞と付遅滞 2 交渉プログラムとしての付遅滞 三 付遅滞解除要件論――二重の催告の要否 1 期限の定めのない債務と解除要件 2 違法な債務不履行と付遅滞 四 付遅滞解除要件論――二重の提供の要否 1 提供の継続による二重の提供 2 二重の催告不要論の敷衍 3 債務不履行と違法性の関係 五 付遅滞解除要件論――提供と催告の関係 1 催告と同時の提供の必要性 2 有効な催告と提供の関係 六 現代的債務不履行論の課題
第九章 債務者の明確な履行拒絶 一 はじめに 二 ドイツ履行拒絶論のアンビバレンス 1 契約信義論 2 履行拒絶と契約貫徹 3 履行拒絶と不履行契約の抗弁 三 履行拒絶と催告の要否 1 実務の趨勢 2 理論の趨勢 (1) 履行遅滞論 (2) 積極的契約侵害論 (3) 履行不能類比論 (4) 矛盾行為禁止論 3 小 括 四 履行拒絶と提供の要否 1 実務の趨勢 2 理論の趨勢 3 小 括 五 履行拒絶と同時履行の抗弁 1 履行遅滞論の限界 2 履行遅滞と履行拒絶の競合論 3 付遅滞解除論による解決 六 小 括
第四部 結 論 第一〇章 総 括 一 問題の総括 二 提供の防御効果 1 債務不履行の免責 (1) 債権者の受領する意思・準備の欠缺 (2) 債権者の明確な受領拒絶 2 弁済供託 3 受戻権の行使 三 提供の攻撃的効果 1 受領遅滞 2 契約解除 (1) 提供による同時履行抗弁の排斥 (2) 債務者の明確な履行拒絶 3 履行請求 四 債務不履行の定義
初出一覧 判例索引 条文索引 参考文献一覧
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