ヒューム 希望の懐疑主義
ある社会科学の誕生

序章 ヒューム社会科学の形成と展望――いまなぜヒュームか 1 ヒューム社会科学の形成 2 ヒューム社会科学の展望 3 いまなぜヒュームか――二元論を超えて
第T部 出発 第1章 ヒュームにおける社会科学の生誕 1 問題の所在――哲学と社会科学 2 理性主義哲学の批判と社会科学の方法 3 社会科学における因果法則と人間の自由 4 法則科学としての「政治学」の可能性 5 社会科学における偶然と必然 6 文明の学としての社会科学
第2章 ヒューム正義論の特質と意義――所有権論と経済論 1 問題の限定 2 人間本性論の展開――個体性と社会性 3 正義と所有権の起源 4 「黙約」とは何か――文明社会と歴史的公共性の発見 5 文明社会と私有財産の正当化――正義論から文明社会論へ
第3章 ヒュームの人間労働概念とインダストリ論 1 問題設定 2 『人間本性論』における行為と労働 3 『道徳・政治論集』の労働観――活動としての職業 4 『政治論集』における人間労働分析と文明社会論 5 ヒューム労働観の歴史的文脈
第U部 発展 第4章 スコットランド啓蒙における「学問の国」と「社交の国」 1 スコットランド啓蒙のなかのヒューム 2 「文筆家」への道――近代知識人の誕生 3 文明社会と「中流身分」 4 「学問の国」と「社交の国」の自由貿易 5 「社交の国」の主権者としての女性 6 真の「中流」の学をもとめて
第5章 いわゆる「初期覚え書き」とヒューム経済思想の形成 1 問題の所在と研究史 2 ステュアート説の意義と問題点 3 「一七四〇年代後半説」の提示 4 「覚え書き」草稿の構成と特徴 5 モンテスキュー、ウォレスとヒューム経済思想の誕生
第6章 ヒューム経済思想の歴史的文脈 1 研究史のなかのヒューム経済思想 2 富裕と奢侈 3 貨幣と文明社会 4 経済的自由主義の歴史的文脈 5 貨幣のパラドックス――ヒューム経済思想の到達点 第V部 展望 第7章 共和主義パラダイムにおける古代と近代 1 「自由」の思想としての共和主義 2 古典的共和主義の源像 3 マキアヴェリにおける近代的共和主義の出発 4 ホッブズにおける近代共和主義の継承 5 ロックにおける近代共和主義の発展 6 モンテスキューとルソー 7 ヒュームの古典的共和主義批判 8 ヒュームの理想共和国構想――近代共和主義の確立 9 民主主義の洗練としての共和主義
第8章 一八世紀文明社会と「中流身分」のアンビバレンス 1 ブリテンの啓蒙と文明社会の歴史構造――問題の所在 2 ヒュームにおける「中流身分」 3 「中流身分」の可能性と限界 4 「中流身分」から「中産階級」へ――スミスとジェームズ・ミル
第9章 日本におけるイギリス思想史研究の一特質――いわゆる「市民社会」論の伝統をめぐって 1 社会思想史と政治思想史 2 戦前期の社会思想史学――自由主義・社会民主主義とマルクス主義批判 3 戦中期の社会思想史学――講座派マルクス主義から市民社会論へ 4 「市民社会」論的社会思想史研究の方法的特徴 5 日本の西欧思想史研究におけるヒューム
あとがき 初出一覧 参考文献 人名索引
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