わざ言語
感覚の共有を通しての「学び」へ
はじめに――「わざ言語」と「学び」 生田久美子
第一部 「わざ言語」の理論 第一章 「わざ」の伝承は何を目指すのか――TaskかAchievement か 生田久美子 はじめに 1 「わざ」とは何か 2 「傾向性(disposition)」としての「わざ」 3 「わざ」のTask とAchievement とは何か 4 様々な世界での「わざ」の伝承が目指すもの 5 もう一つの「学び」――感覚の共有を通しての「学び」へ おわりに――教育における「わざ言語」の役割
第二章 熟達化の視点から捉える「わざ言語」の作用 ――フロー体験に至る感覚の共有を通した学び 北村勝朗 はじめに 1 スキルの獲得と「わざ」の習得 2 熟達化から捉える「わざ言語」 3 フロー体験から捉える「わざ言語」 結語
第三章 スポーツ領域における暗黙知習得過程に対する「わざ言語」の有効性 ――動作のコツ習得過程において「わざ言語」はどのように作用しているのか 永山貴洋 1 スポーツ領域における暗黙知と指導言語 2 スポーツ領域における暗黙知の学習過程 ――エキスパート選手は動作のコツをいかにして習得し、指導しているのか 3 スポーツ領域における暗黙知学習に対する「わざ言語」の作用 4 まとめと今後の課題
第四章 「文字知」と「わざ言語」――「言葉にできない知」を伝える世界の言葉 川口陽徳 はじめに 1 「文字知」の陥穽――「わざ」と「言葉」の困難な関係 2 言葉の可能性――陥穽を避ける様々な工夫 まとめにかえて――「文字知」の陥穽を避ける「わざ言語」の役割
第五章 「わざ言語」が促す看護実践の感覚的世界 前川幸子 はじめに 1 看護における「わざ」 2 看護の「わざ」に見る相互主観的世界と〈私離れ〉 3 「わざ言語」に導かれる看護実践 4 看護学生に留まる「うずく傷」 5 看護の「わざ」を教える・学ぶ 6 非言語的な「わざ」言語 おわりに
第六章 看護領域における「わざ言語」が機能する「感覚の共有」の実際 原田千鶴 はじめに 1 「わざ言語」に導かれる「感覚の共有」 2 価値を共有する学び 3 仲間と学び合う 4 異質の共同体との出会いにおける看護の再発見 おわりに
第七章 人が「わざキン」に感染するとき 佐伯 胖 1 「風邪ひかせのヤブ医者」物語 2 「わざ」は「わざキン」病の症状か 3 わざの「感染場」――「わざ」が生起し伝承される場 4 「わざ言語」とは何か――「わざキン」世界の「わかり合い」
第二部 「わざ言語」の実践 第一章 「歌舞伎」の「わざ」の継承と学び ――「役になりきる」ことに向って 五代目 中村時蔵(聞き手 生田久美子) 1 自らの「学び」を振り返って 2 「役になりきる」ということ 3 「書かない」ことを通しての「教える」と「学び」 4 台本と「書抜き」 5 国立劇場の養成課での「教え」と「学び」
第二章 しむける言葉・入り込む言葉・誘い出す言葉 ――創作和太鼓の指導実践から 佐藤三昭(聞き手 川口陽徳) 1 創作和太鼓と作曲――小説や詩を書くように曲を作る 2 「太鼓の技術の指導」と「曲のイメージの共有」――イメージができると音が変わる 3 思考にしむける「謎」――師匠のイメージに弟子が自ら至るように 4 和太鼓奏者としての日常生活――日々の過ごし方が演奏に影響する 5 「基礎的な仕方」から「演奏表現の技術」へ ――「へそを真下に落とすように」、「ぬかるんだ道を歩くように」 6 二つの言葉――弟子の感覚に入り込む言葉、未知の感覚に誘い出す言葉 7 言葉の選択、使わない言葉――「腕を伸ばしなさい」ではなく「天井から吊るされている」 8 マニュアル化の限界――「演奏表現」はテキストで伝えることはできない
第三章 感覚との対話を通した「わざ」の習得 ――感覚人間としての陸上体験 朝原宣治(聞き手 北村勝朗) 1 陸上競技との出会い 2 感覚との出会い 3 北京オリンピックでの感覚体験 4 感覚に基づく指導法
第四章 スピードスケート指導者が選手とつくりあげる「わざ」世界 ――積み上げ、潜入し、共有する 結城匡啓(聞き手 永山貴洋) 1 速く滑るための感覚を自分で追い求めた選手時代 2 指導の前提には選手との積み上げがある 3 選手の中に潜り込む 4 頭の中のスケーターはどんどん速くなっていく 5 形ではなく、運動の質を感じる 6 いろいろな運動経験が感覚を鋭敏にする 7 四つの自己観察を通して感覚を共有する
第五章 「生命誕生の場」における感覚の共有 村上明美(聞き手 原田千鶴) 1 「産もうとする力」、「生まれようとする力」を促す 2 「仲間」としての迎え入れ 3 説明できない「わざ」の世界への参入 4 熟練助産師の「わざ」に「惚れる」 5 「産む―生まれる」という日常の営みを助ける 6 「産む―生まれる」場の一体感 7 生命の導きにおける「美しさ」へのこだわり
あとがき 索引
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