海域アジア

総 論 関根政美・山本信人
第1部 海域アジアの国際関係
第1章 アジアにおける地域主義の展開 大庭三枝 はじめに 一 アジアにおける地域主義の沿革 1 自立への希求と冷戦の影 2 主体としての東南アジア地域形成を目指して 3 アジア太平洋地域の浮上とその背景 二 冷戦の終結と重層的地域主義の展開 1 冷戦のインパクトとアジア太平洋地域主義 2 ASEAN協力の深化と拡大 3 東アジア地域主義の萌芽とその背景 三 さらなる重層化の進行 1 アジア通貨危機の衝撃と新たな潮流 2 ASEAN +3の限界とさまざまな地域主義の浮上 3 FTA締結の動きと地域主義の動揺 4 テロの影響による安全保障環境の変化と地域主義 おわりに:地域主義のゆくえと日本の進路
第2章 経済自由化の政治経済学 末廣 昭 はじめに 一 規制の経済、レント、競争的クライアント関係 二 「経済の自由化」と「ワシントン・コンセンサス」の世代交替 三 経済自由化と経済危機のシークエンス:東アジアとラテンアメリカ 四 経済のグローバル化と自由化への反発:「市民社会モデル」の限界
第3章 海域アジアの安全保障 ――海賊問題をめぐる地域協力を中心に 高埜 健 はじめに――「海域アジア」のイメージ 一 海域アジアの安全保障環境 二 海賊問題の概要 1 海賊問題の数量・規模とその性質 2 海賊問題増大の背景 三 海賊対策をめぐる地域協力 1 海賊の定義と取り締まり上の問題 2 海賊対策をめぐる地域協力 3 ASEANにおける海賊問題の安全保障問題化 おわりに――「繁栄と平和の海」を求めて
第4章 越境移動の構図 ――西セレベス海におけるサマ人と国家 長津一史 はじめに 一 サマ人と西セレベス海 二 国家の枠組み 1 スルー諸島 2 北ボルネオ 3 東カリマンタン 4 西セレベス海における植民地統治 三 戦前期サマ人の越境移動 1 植民地の拡大とサマ人の移動 2 戦前期の移住――植民地経済と学校教育をめぐって 3 植民地状況下の越境交易――密貿易のはじまり 四 独立国家への移行期の越境移動――コプラ密貿易の時代 1 戦後期の移住 2 越境交易――コプラ密貿易を中心に 3 コプラ密貿易の国家的文脈 五 越境移動の歴史的構図――結びにかえて
第2部 海域アジアの政治社会
第5章 東南アジアと「民主化の波」 武田康裕 はじめに――民主化の形式と実質 一 民主的移行を実現した国家群 1 体制移行の様相 2 社会の民主化圧力と軍部の体制離脱 3 国連暫定統治下の民主的移行 二 民主主義体制を維持した国家群 1 擬似民主主義体制への変容――マレーシアとシンガポール 2 経済成長と政府党体制 3 業績悪化と政党システム 三 非民主主義体制を維持した国家群 1 体制内変動の様相 2 脆弱な民主化勢力 3 軍部と体制の一体化 おわりに
第6章 フィリピン政治と民主主義 川中 豪 はじめに 一 民主化の歴史的意味 1 アメリカ植民地支配とフィリピンの民主主義 2 民主化後の制度設計 二 民主化後の制度と政治過程 1 政治の民主化と経済の自由化 2 民主化後の政治過程 三 民主主義の定着 1 民主主義の定着と異議申し立て政治 2 エドサU おわりに
第7章 ベトナムの社会主義体制 白石昌也 はじめに 一 ドイモイ路線の採択 二 保守派と改革派の結束 三 民族革命の勝利と共産党支配の正統性 四 ドイモイの成果と共産党支配の正統性 五 体制批判勢力の弱体性 六 アジア太平洋の地域的寛容性 おわりに
第8章 マハティール体制の確立過程 ――マレーシアにおける政治体制とリーダーシップ 金子芳樹 はじめに 一 伝統的支配への挑戦 1 伝統的支配層と「平民宰相」 2 スルタン・国王の権限に関する憲法改正問題 二 党内権力闘争 1 UMNOの内部分裂 2 UMNO非合法判決と反主流派の排除 三 社会統制の強化 1 1987年10月27日の衝撃 2 大量逮捕事件の性格と背景 3 権威主義への旋回 四 司法の支配 1 司法の独立性 2 最高裁判事罷免問題 3 リベラル派の切り崩し おわりに
第9章 排除された市民の再構成 ――インドネシア国家と華人系住民 山本信人 はじめに 一 同化・隔離・プリ=ノンプリ 二 1990年代の政策・社会変化と暴動略史 三 反「中国人」暴動の実体 四 華人の主体的政治化 五 ジャカルタ暴動の衝撃・知識人の焦り 六 政策転換と華人の再定位――まとめにかえて
第3部 海域アジアのなかのオーストラリア
第10章 太平洋島嶼フォーラムと東アジア 小柏葉子 はじめに 一 変化の背景 1 太平洋島嶼諸国と貿易優遇措置 2 貿易自由化の到来 3 東アジアへ 二 日本との関係強化 1 ドナーからパートナーへ 2 停滞する関係 3 すれちがう思惑 三 北東アジアとの関係構築 1 中国 2 台湾 3 韓国 四 東南アジアへの接近 1 ASEAN 2 マレーシア 3 フィリピン 4 インドネシア おわりに
第11章 日豪関係のひず歪み ――オーストラリアの太平洋戦争 鎌田真弓 はじめに 一 アンザック・デイとガリポリの神話化 1 「アンザック魂」の創出 2 アンザック・デイの再興 二 太平洋戦争の集団的記憶:ココダとPOW 1 ココダの神話化 2 戦争捕虜(POW)とアンザック魂 三 日豪関係の中の太平洋戦争 おわりに
第12章 海域アジアとオーストラリア ――アジアの副保安官を目指すハワード首相? 関根政美 はじめに 一 海域アジアのなかのオーストラリア――第二次世界大戦以前 1 孤立した大陸オーストラリア 2 白豪主義と鎖国国家オーストラリアの成立 二 海域アジアのなかのオーストラリア――第二次世界大戦以後 1 アジア・太平洋国家化を目指すオーストラリア――戦後60年の軌跡 2 加速するアジア・太平洋国家への動き――ホーク、キーティング首相の時代 三 海域アジアにおける多文化主義社会を目指すオーストラリア 1 シドニーオリンピック開会式アトラクションが象徴するもの 2 多文化主義オーストラリアの軌跡――白豪主義終焉以後 3 共和国運動とマボ判決の登場 四 アジア・太平洋の副保安官を目指すハワード政権? 1 アジア・太平洋国家化にブレーキをかけるハワード政権 2 ハンソン論争とハワード首相 3 共和国になりそこねたオーストラリア 4 21世紀のハワード政権 おわりに――漂流する孤独なオーストラリア
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